このページの要点
- 証拠は、警察が告訴の要件(書かれた事実が罪の要件に当たるか)を確かめ、捜査を始める材料です。受理されると書類・証拠物は検察官に送付されます(刑訴法242条)。
- 証拠目録の公的な様式や番号の付け方の指定は調べた範囲で見つかっていません。いつ・どこで・誰が・何をされたかの要素ごとに、時系列で資料を当てはめて整理します。
- 提出先は検察官か司法警察員です。警察は管轄区域内かどうかを問わず受理し、処理が適当でないときは関係警察へ移送して移送先を告訴人に通知します(犯罪捜査規範63条・69条)。
- 郵送は群馬県警察の要綱(平成12年版)では出頭・聴取後に受理する扱いです。電磁的方法の告訴は令和7年法律第39号で定められましたが、施行期日の政令は確認できていません。
結論:証拠は要件を確かめる材料。提出先は管轄を問わず、郵送・オンラインは扱いに注意
結論
- 告訴に添える資料は、警察が告訴の要件(書かれた事実が罪の要件に当たるかなど)を確かめ、捜査を始めるための材料です。証拠の様式や番号の付け方を定めた法令はなく、調べた範囲では警察の公開資料にも見当たりません。告訴事実のどの部分を示す資料かが分かるように、時系列で対応づけて整理することが中心になります。
- 提出先は検察官または司法警察員です(刑事訴訟法241条1項)。警察は管轄区域内の事件かどうかを問わず受理しなければならず、管轄区域外の犯罪で処理できないときや処理が適当でないと認められるときは関係する警察へ移送し、移送先を告訴人に通知します(犯罪捜査規範63条1項・69条)。
- 郵送で出すことを直接定めた法令はありません。郵送の扱いを定めた例として、群馬県警察の要綱(平成12年版)は、郵送された告訴状は告訴人の出頭を求め、必要事項を聴取した後に受理するとしています。
- オンライン(電磁的方法)による告訴は令和7年法律第39号で条文に加えられましたが、施行日は「令和9年3月31日までの間において政令で定める日」とされ、その政令は確認できていません。現在の方式は書面か口頭です。
告訴とは、犯罪の被害を受けた人などが、捜査機関に犯罪の事実を申し出て、犯人の処罰を求める意思を示すことです。その意思を書面にしたものが告訴状で、告訴をする人を告訴人、処罰を求められる相手を被告訴人(捜査の段階では被疑者)と呼びます。警察で告訴を受け付ける権限があるのは、司法警察員(一定の階級以上で、捜査上の権限を与えられた警察官)です。告訴を正式に受け付けることを受理、受け付けないことを不受理といいます。
このページは、告訴状を書いたあと、あるいは書きながら迷いやすい二つの点を扱います。一つは、手元のやり取りの記録や通帳、写真などの資料をどう集め、どう整理して出すか。もう一つは、どこに、どうやって出すか(窓口・郵送・オンライン)です。告訴状そのものの構成や告訴事実の書き方は告訴状の書き方と相手不明の場合の告訴で説明しています。
証拠はなぜ要るか:受理の判断と捜査の出発点
警察庁の通達(令和6年3月26日 警察庁丙刑企発第39号ほか)は、告訴があったときは直ちに内容を聴取し、「告訴権の有無、告訴期間、犯罪構成要件の充足の有無、処罰意思等の要件を確認するなどした上」で、可能な限り迅速に受理・不受理の判断を行うよう求めています。このうち資料が最も関わるのは「犯罪構成要件の充足の有無」、つまり告訴状に書かれた出来事が、どの罪のどの要件に当たるかの確認です。告訴状の文章だけでは確かめにくい点を、資料が補うことになります。
ただし、この通達が受理の前に確かめる要件として挙げているのは上の項目で、証拠の量そのものは挙がっていません。窓口で「証拠が足りない」と言われたときの受け止め方は告訴状が受理されない理由と対処で整理しています。
警視庁の通達(平成15年4月1日 通達甲(副監.刑.2.資)第15号)は、資料の提出について、告訴できる人であることを示す資料、被告訴人の身分や職務の資料、被告訴人が罪を犯したことを証明する資料などの提出を求めるとし、罪を犯したことを証明する資料は早い段階での提出を求めるとしています。平成15年版が現在も同じ内容で運用されているかは確認できていませんが、警察が告訴の際にどのような資料を想定しているかを知る手がかりになります。
2 司法警察職員は、犯罪があると思料するときは、犯人及び証拠を捜査するものとする。
要旨犯人と証拠を調べるのは、警察などの司法警察職員の役割として定められています。告訴人が出す資料は、その捜査を始めるための出発点(捜査の端緒)になります。
告訴が受理されると、司法警察員は速やかに関係する書類と証拠物を検察官に送付しなければなりません(刑訴法242条)。告訴人が出した資料は、この送付の対象になる書類・証拠物の一部として検察官のもとへ届きます。被害届だけの事件は、警察が捜査したうえで送致する(同法246条)という違いがあり、この点は告訴・告発・被害届の違いと告訴できる人で比べています。
群馬県警察の要綱(平成12年7月3日群本例規第19号)は、捜査を尽くしても告訴事実を裏づける証拠が欠けて事実がはっきりしない事件について、放置せず、証拠が不十分である状況を関係書類で明らかにし、検察官と連絡を取ったうえで送付するとしています(第8の4)。証拠が十分かどうかは捜査の結果や検察官の判断に関わり、資料を早めにそろえておく意味はここにあります。
司法警察員は、告訴又は告発を受けたときは、速やかにこれに関する書類及び証拠物を検察官に送付しなければならない。
要旨告訴を受理した警察は、関係する書類と証拠物を速やかに検察官へ送る義務を負います。告訴人が出した資料もこの中に入ります。
集めておくものの種類:警察の資料が挙げる4つの類型
どんな資料を用意すればよいかについて、全国共通の一覧を定めた法令や公開の通達は、調べた範囲では確認できていません。手がかりになるのは、前の章の警視庁の通達が挙げる資料の類型です。次の表は、その類型を、告訴状のどの部分とつながるかという観点で並べたものです。
警視庁の通達(平成15年版)第3の4が挙げる資料の類型
| 類型 | 通達に挙がっている例 | 告訴状のどこにつながるか |
|---|---|---|
| 告訴できる人であることを示す資料 | 個人は身分証明書等、法人は登記簿謄本等(官公署は組織等の法令) | 告訴人の欄。告訴できる人かどうかの確認 |
| 被告訴人の身分・職務の資料 | 住民票、履歴書(法人等では地位・業務・権限等) | 被告訴人の特定 |
| 被告訴人が罪を犯したことを証明する資料 | 告訴事実を裏づけるもの(早期の提出を求めるとされています) | 告訴事実(いつ・どこで・何をされたか) |
| その他捜査上参考となる資料 | 被告訴人の写真、現住所、立ち回り先、共犯者に関する資料 | 捜査の手がかり |
警視庁の通達は平成15年4月1日付の版で、現行の運用と同じかは確認できていません。他の都道府県の警察が同じ資料を求めるとは限りません。
被害者本人以外が告訴するときは、別の書面が求められます。犯罪捜査規範66条は、被害者の委任による代理人からは委任状を、被害者以外の告訴権者からはその資格を証する書面を差し出させると定めています。誰が告訴できるかと代理の告訴は告訴・告発・被害届の違いと告訴できる人で扱っています。
被害の種類ごとの資料について、公的な案内で確かめられたものは限られます。インターネット上の書き込みについて、警察庁の案内「インターネット上の誹謗中傷等への対応」は、掲載されたページを印字し、サイトの名称、URL、書き込み者、書き込み日時、内容等を記録して、警察署に持参するよう案内しています。ネットオークションなどの詐欺が疑われる場合について、警視庁のページ「インターネット利用詐欺」は、取引時の画面、相手とやり取りしたメールの内容、相手の口座番号、振込記録等、取引相手に関する資料を手元に用意し、居住地を管轄する警察署に相談するよう案内しています。
ネットの書き込みの残し方や、書き込んだ人を特定する発信者情報開示の手続(特定電気通信による情報の流通によって発生する権利侵害等への対処に関する法律(以下「情報流通プラットフォーム対処法」)5条)、裁判所が開示の相手方に発信者情報の消去を禁じる消去禁止命令(同法16条)は、ネット中傷:発信者情報の開示と告訴の順序で詳しく扱っています。被告訴人の氏名や住所が分からない場合の告訴の方法は告訴状の書き方と相手不明の場合の告訴にあります。
確認できていないこと
証拠の原本と写しのどちらを出すか、USBメモリなどの電子データや録音の出し方、録音を文字に起こした書面(反訳)の様式、LINEのトーク履歴の保存方法を示した警察の公開案内は、調べた範囲では確認できていません。警視庁の通達には、相談の段階で資料を預かる場合は受理ではないことを説明し、告訴状等の原本は預からないという定めがありますが、これは告訴状などの原本についての定めで、証拠の原本の扱いを述べたものではありません。原本を出すかどうかは、提出先の警察に確かめるのが確実です。
証拠の整理のしかた:時系列と告訴事実の対応づけ
インターネットの質問投稿サイトの質問を要約した二次資料によると、「甲号証」の付け方など、資料の番号や書式の細部を尋ねる質問があるとされています。しかし、告訴に添える資料の一覧表(証拠目録)の公的な様式や、資料への番号の付け方を警察側が指定した公開資料は、調べた範囲では見つかっていません。刑訴法241条1項も、告訴は書面か口頭で行うと定めるだけです。
そこでこのページでは、決まった様式を示すのではなく、整理の考え方を説明します。軸は二つです。一つは時系列、もう一つは告訴事実の要素との対応です。
告訴事実の要素について、秋田県警察の告訴・告発センターの案内(平成27年版)は、犯罪事実の申告とは、いかなる犯罪か特定できる程度に「いつ、どこで、誰が、誰に、どのように、何をされたか」などを説明することだとしています。資料を整理するときは、それぞれの資料がこのうちどの要素を示すのかを、一つずつ当てはめていきます。
告訴事実の要素と、資料を当てはめるときの問い
| 要素 | 整理のときの問い | 公的な案内に挙がっている資料の例 |
|---|---|---|
| いつ | 出来事の日時を資料で示せるか | 書き込み日時の記録(警察庁)、振込記録(警視庁のネット詐欺の案内) |
| どこで | 場所や、書き込まれたサイトを示せるか | サイトの名称・URLの記録(警察庁) |
| 誰が | 相手を特定する手がかりがあるか | 書き込み者の記録(警察庁)、被告訴人の身分・職務の資料(警視庁の通達) |
| 誰に | 被害を受けたのが誰か | 告訴できる人であることを示す資料(警視庁の通達) |
| どのように・何をされたか | 行為と被害の結果を示せるか | 書き込みの内容を印字したもの(警察庁)、取引時の画面・相手とのメール(警視庁のネット詐欺の案内)、写真(警視庁の通達) |
要素の並びは秋田県警察の案内(平成27年版)によります。資料の例は、各出典が挙げているものに限りました。罪ごとに告訴事実に書く要素は、罪名別のページで扱っています。
時系列で並べる意味は、通達の書きぶりからも読み取れます。警視庁の通達は、相談の段階で相談人に幅広い説明を求め、示された犯罪事実だけでなく背景にある事案全体を明らかにするとしています。最初の出来事から現在までを日付順に並べ、各出来事の横にそれを示す資料を書き添えておくと、聴取の場で説明の順序と資料が一致します。
あわせて、告訴状の記載と資料の内容が食い違っていないかを確かめておきます。犯罪捜査規範65条は、書面による告訴でも、趣旨が不明なときや本人の意思に合わないと認められるときは、補充の書面を出させるか、供述を聴いて補充調書を作ると定めています。日付や金額が告訴状と資料でずれていると、その確認から始まることになります。
記憶に頼る部分と資料で確かめられる部分を分けておくことも、整理の一部です。資料で裏づけられない出来事を、資料があるかのように書くことは避けます。事実を強めて書くことの問題(犯罪捜査規範67条の確認)は告訴状が受理されない理由と対処で触れています。
書面による告訴または告発を受けた場合においても、その趣旨が不明であるときまたは本人の意思に適合しないと認められるときは、本人から補充の書面を差し出させ、またはその供述を求めて参考人供述調書(補充調書)を作成しなければならない。
要旨告訴状で出しても、内容が分かりにくい、または本人の意思と合っていないと見られるときは、補充の書面か、警察が話を聴いて作る補充調書で補われます。
提出先の決まり方:検察官か司法警察員。管轄を問わない受理と移送
告訴又は告発は、書面又は口頭で検察官又は司法警察員にこれをしなければならない。
2 検察官又は司法警察員は、口頭による告訴又は告発を受けたときは調書を作らなければならない。
要旨告訴の相手は検察官か司法警察員(警察)で、方法は書面か口頭です。口頭で告訴したときは、受けた側が調書を作ります。
条文が定める提出先は、検察官と司法警察員の二つです。警察では、窓口で対応した警察官が司法巡査であっても、直ちに司法警察員に引き継ぐことになっています(犯罪捜査規範63条2項)。どの警察署に出すかについて、同規範63条1項は、司法警察員は管轄区域内の事件かどうかを問わず受理しなければならないと定めています。受理の義務そのものは告訴状が受理されない理由と対処で詳しく扱っています。
どこの署でもよいとしたうえで、警察庁の平成26年版犯罪被害者白書は、被害・告訴の届出はどこの警察署に対しても行うことができるが、被害に遭った場所を管轄する警察署に行うと事後の手続が円滑に進むと説明しています。同じ白書は、告訴・告発は検察官が直接受理することもあり、届出に関する相談には最寄りの検察庁の被害者ホットラインが応じているとしています。法務省は全国の地方検察庁等の被害者ホットラインの連絡先を一覧で公開しています(番号は検察庁ごとに違うため、このページの出典にある一覧で確かめてください)。
受理した警察が事件の場所から遠いなどの事情があるときのために、犯罪捜査規範69条は移送の手続を定めています。管轄区域外の犯罪で処理できないとき、または処理するのが適当でないと認められるときは、関係する警察に速やかに移送し、移送したときは告訴人に移送先を通知しなければなりません。移送は受理した後の手続で、管轄外であることを理由に受理を断ることとは別のものです。
警察本部長または警察署長は、告訴または告発のあつた事件が、管轄区域外の犯罪であるため当該警察においてこれを処理することができないとき、またはこれを処理することが適当でないと認められるときは、関係警察に対してすみやかに移送の手続をとらなければならない。
2 前項の規定による移送をしたときは、すみやかに、告訴人または告発人にその移送先を通知しなければならない。
要旨管轄外の事件で処理できない、または処理が適当でないときは、警察本部長・警察署長が関係する警察に事件を移し、告訴人に移送先を知らせます。
警察に告訴するときの窓口から検察官までの流れ(条文と通達から)
告訴人 → 警察署・警察本部の窓口
警察本部と警察署には、告訴の相談・申出に一括して対応する「告訴・告発センター」を置くこととされています
警察庁通達(令和6年3月26日)第2
窓口の警察官
直ちに内容を聴取し、告訴権・告訴期間・犯罪構成要件の充足・処罰意思等を確認して、受理・不受理を判断します
警察庁通達 第1
司法警察員
管轄区域内の事件かどうかを問わず受理します。司法巡査が受けたときは直ちに司法警察員へ移します
犯罪捜査規範63条
警察本部長・警察署長
管轄外で処理できない・処理が適当でないときは関係警察に移送し、告訴人に移送先を通知します
犯罪捜査規範69条
検察官
受理された告訴の書類・証拠物が速やかに送付されます
刑訴法242条
告訴・告発センターの名称や運用は都道府県ごとに違い、県警ごとの告訴取扱要綱のちがいで比べています。受理後の捜査と処分の流れは受理後の流れと取下げ・示談・虚偽告訴の注意で扱っています。警察で受理されなかったときに検察官へ告訴する選択肢は不受理のあと使える手段の使い分けにあります。
郵送で出せるか:条文と群馬県警察の要綱
刑訴法241条1項は、告訴を「書面又は口頭で」行うと定めていますが、書面を窓口に持参するのか郵送するのかといった届け方は条文に書かれていません。郵送の扱いは、各都道府県警察の運用によることになります。
郵送の扱いを明文で定めた例として、群馬県警察の「告訴及び告発取扱要綱」(平成12年7月3日群本例規第19号)があります。その第7の2は次のとおりです。
「郵送された告訴状又は告発状は、告訴人、告発人等の出頭を求め、必要事項を聴取した後、受理するものとする。」
この定めから読めるのは、郵送された告訴状でも受理の対象から外されてはいないこと、ただし受理の前に告訴人が出頭して聴取を受けることが前提になっていること、の二点です。同じ要綱の第7の1は、告訴権、犯罪構成要件、処罰意思その他の法令に定める要件を備えている場合は事件として受理するとしています。郵送したことだけで受理・不受理が決まるわけではなく、出頭したときの聴取で要件が確かめられる、という順序です。
郵送する場合も、出頭して聴取を受ける場面を想定しておくことになります。送った告訴状と資料の写しを手元に残しておくと、聴取のときに同じ書面を見ながら説明できます。
群馬県警察の要綱を読むときの注意
この要綱は平成12年の版(平成14年7月・平成17年11月の改正の沿革あり)で、現在も同じ内容で運用されているかは確認できていません。また、群馬県警察の定めであり、他の都道府県の警察が同じ扱いをしているとは限りません。都道府県ごとの要綱の違いは県警ごとの告訴取扱要綱のちがいで比べています。
確認できていないこと
郵送した告訴状について、告訴期間(親告罪で犯人を知った日から6か月)との関係で、発送した日・警察に届いた日・出頭して聴取を受けた日のどれを告訴の日として扱うのかを示した法令・判例・公開の通達は、調べた範囲では確認できていません。期間が迫っている場合は、郵送に頼る前に提出先の警察に扱いを確かめる必要があります。
本人が窓口に行くとき:持っていくものと当日の流れ
窓口での手続について、秋田県警察の告訴・告発センターの案内(平成27年版)は、基本的に警察本部または警察署に来庁して手続を行い、望ましい形は「告訴状」と題する書面と関係書類を直接提出(持参)することだとしています。電話では問合せと来庁の日程の調整を受け付け、匿名での告訴はできないとしています。インターネット上の誹謗中傷について、警察庁の案内は、警察署に相談する際は事前に電話で担当者と日時の調整をすると対応がスムーズに進むとしています。
当日は、警察庁の通達のとおり、まず内容の聴取と要件の確認が行われます。警視庁の通達(平成15年版)は、相談の段階で背景にある事案全体を明らかにすること、公訴時効(犯罪が終わってから一定の期間が過ぎると起訴できなくなる制度)が迫っている告訴では、被害の発生時に告訴しなかった理由の説明を求めることを定めています。処罰を求める意思、出来事の経過、相手の情報、資料、期限について聞かれると考えて準備しておくことになります。
書面がなければ告訴できないわけではありません。2025年5月20日の参議院内閣委員会で、警察庁の生活安全局長は、告訴などは必ずしも書面の提出を求めるものではなく、口頭でなされても要件を判断したうえで受理すると答弁しています。口頭の告訴では警察が告訴調書を作ります(刑訴法241条2項、犯罪捜査規範64条)。告訴調書と告訴状の違いは告訴状の書き方と相手不明の場合の告訴で説明しています。
- 告訴状(手元に控えも残しておきます)
- 告訴できる人であることを示す資料(個人は身分証明書等、法人は登記簿謄本等。警視庁の通達)
- 代理人が出すときは委任状、被害者以外の告訴権者が出すときは資格を証する書面(犯罪捜査規範66条)
- 告訴事実を裏づける資料を、時系列で整理したもの(被告訴人の身分の資料など、手元にあるもの)
- インターネット上の書き込みなら、ページを印字したものと、サイトの名称・URL・書き込み者・書き込み日時・内容の記録(警察庁の案内)
相談の段階で資料を渡しても、それで告訴が受理されたことにはなりません。警視庁の通達は、相談の際に提出資料を預かる場合は、告訴の受理ではない旨を明確に説明して了解を得るよう定めています。「預かり」「相談扱い」と受理の違い、受理されたかどうかの確かめ方は告訴状が受理されない理由と対処で扱っています。
オンライン・メールで出せるか:現在の方式と令和7年の改正
現在の刑訴法241条1項は、告訴の方式を「書面又は口頭」と定めています。2026年10月24日時点のe-Govの現行条文もこの文言のままです。メールやインターネットでの告訴について、秋田県警察の案内(平成27年版)は「電話、メール等での告訴・告発はできません。」と明記しています。これは一つの県警察の案内で、全国共通の定めとして書かれたものではありませんが、条文の「書面又は口頭」をどう運用しているかを示す例です。
これに対し、2025年2月28日に国会に提出され、同年5月16日に成立、5月23日に公布された「情報通信技術の進展等に対応するための刑事訴訟法等の一部を改正する法律」(令和7年法律第39号)は、刑訴法241条を改め、告訴・告発を電磁的方法でもできるようにしました。法律案要綱でも「電磁的方法による告訴・告発」が改正項目の一つに挙がっています。改正後の条文は次のとおりです。
告訴又は告発は、書面若しくは口頭で、又は主務省令で定めるところにより電磁的方法(電子情報処理組織(検察官又は司法警察員の使用に係る電子計算機と告訴又は告発をする者の使用に係る電子計算機とを電気通信回線で接続した電子情報処理組織をいう。)を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法であつて主務省令で定めるものをいう。)により、検察官又は司法警察員にしなければならない。
2 告訴又は告発は、犯罪事実、その犯人の処罰を求める旨並びに告訴又は告発をする者の氏名及び住居又はこれに代わる連絡先(法人にあつては、その名称又は商号、代表者の氏名及び主たる事務所又は本店の所在地)を明らかにしてしなければならない。
3 検察官又は司法警察員は、口頭による告訴又は告発を受けたときは調書を作らなければならない。
要旨改正後は、書面・口頭に加えて、主務省令が定める電磁的方法(捜査機関のコンピュータと告訴する人のコンピュータを通信回線でつなぐ方法など)でも告訴できるようになります。また、告訴で明らかにすべき事項(犯罪事実、処罰を求める旨、告訴する人の氏名と住居または連絡先)が条文に書かれます。未施行の条文です。
告訴の方式:現行の条文と令和7年法律第39号による改正後(未施行)
| 項目 | 現行(2026年10月24日時点) | 改正後(未施行) |
|---|---|---|
| 方式 | 書面又は口頭(241条1項) | 書面若しくは口頭、又は主務省令で定める電磁的方法(241条1項) |
| 明らかにすべき事項 | 条文に定めなし | 犯罪事実、犯人の処罰を求める旨、告訴する人の氏名及び住居又はこれに代わる連絡先(241条2項) |
| 口頭の告訴の調書 | 241条2項 | 241条3項 |
| 警察から検察官へ送付するもの | 書類及び証拠物(242条) | 書類及び証拠物並びに電磁的記録(242条) |
| 施行日 | — | 附則1条本文の「令和9年3月31日までの間において政令で定める日」。政令は確認できていない |
改正後の条文はe-Govの未施行版(2027年3月31日付の暫定の版として登録)によります。改正後の241条2項の記載事項に、犯人の氏名は含まれていません。告訴状に何を書くかは告訴状の書き方と相手不明の場合の告訴で扱っています。
証拠との関係で注目したいのは242条の改正です。改正後は、警察が検察官に送付するものに「電磁的記録」が加わります。電子データが送付の対象として条文に明記されることになりますが、告訴人がどのような形式・手順で電子データを出すのか、本人確認をどうするのかといった具体的な方法は主務省令に委ねられており、その内容は確認できていません。また、法律案要綱と条文を確認した範囲では、この改正に被害届のオンライン提出に関する文言は見当たりませんでした(被害届は刑訴法でなく犯罪捜査規範の定めによる手続です)。
この法律は、令和九年三月三十一日までの間において政令で定める日から施行する。ただし、次の各号に掲げる規定は、当該各号に定める日から施行する。
要旨改正法の施行日について、附則1条は原則を「令和9年3月31日までの間において政令で定める日」とし、一部の規定はただし書の各号に定める日によるとしています。241条・242条を改めるのは改正法の第2条で、ただし書の各号には第2条が挙がっていないため、原則の日によります。
確認できていないこと
電磁的方法による告訴(改正後の刑訴法241条)がいつから使えるかは確認できていません。241条の改正の施行日は、附則1条本文の「令和9年3月31日までの間において政令で定める日」とされています。ただし、2026年10月24日時点で、その施行期日を定める政令は確認できていません(e-Govの改正履歴でも、241条の改正は2027年3月31日付の暫定の版にだけ載っています)。電磁的方法の具体的な仕組みを定める主務省令も確認できていません。このため、このサイトでは「何年何月からオンラインで告訴できる」とは書いていません。
まとめ
- 証拠は、警察が告訴の要件、特に書かれた出来事が罪の要件に当たるかを確かめ、捜査を始めるための材料です。受理されると書類・証拠物は検察官へ送付されます(刑訴法242条)。
- 警視庁の通達(平成15年版)は、告訴できる人の資料、被告訴人の身分・職務の資料、罪を犯したことを証明する資料、その他の参考資料の4類型を挙げています。
- 証拠目録の公的な様式や番号の付け方の指定は、調べた範囲では見つかっていません。「いつ、どこで、誰が、誰に、どのように、何をされたか」の要素ごとに、時系列で資料を当てはめて整理します。
- 提出先は検察官か司法警察員で、警察は管轄を問わず受理し、処理が適当でなければ移送して告訴人に通知します(犯罪捜査規範63条・69条)。被害場所を管轄する署だと手続が円滑とする白書の説明もあります。
- 郵送は、群馬県警察の要綱(平成12年版)では出頭を求めて聴取した後に受理する扱いです。電磁的方法による告訴は令和7年法律第39号で定められましたが未施行で、施行期日の政令は確認できていません。
このページの出典
- 法令刑事訴訟法 第189条・第241条・第242条・第246条(e-Gov法令検索)確認日 2026-10-24
- 法令刑事訴訟法(令和7年法律第39号による改正後・未施行版)第241条・第242条(e-Gov)確認日 2026-10-24
- 法令刑事訴訟法 附則(令和七年五月二三日法律第三九号)第1条(e-Gov法令検索)確認日 2026-10-24
- 法令犯罪捜査規範 第63条・第64条・第65条・第66条・第69条(e-Gov法令検索)確認日 2026-10-24
- 法令特定電気通信による情報の流通によって発生する権利侵害等への対処に関する法律 第5条・第16条(e-Gov法令検索)確認日 2026-10-24
- 官公庁警察庁通達「告訴・告発への適切な対応及び指導・管理の徹底について」(令和6年3月26日 警察庁丙刑企発第39号ほか)第1・第2確認日 2026-10-24
- 官公庁警視庁 通達甲(副監.刑.2.資)第15号「告訴及び告発の取扱いについて」(平成15年4月1日)第3の1・2・4確認日 2026-10-24
- 官公庁群馬県警察「告訴及び告発取扱要綱の制定について(例規通達)」(平成12年7月3日群本例規第19号)第7の1・2、第8の4確認日 2026-10-24
- 官公庁秋田県警察「『告訴・告発センター』を設置しました」(平成27年版の案内文書)確認日 2026-10-24
- 官公庁警察庁 平成26年版犯罪被害者白書 第1部 第5節「都道府県警察に対する被害・告訴の届出」確認日 2026-10-24
- 官公庁警視庁「インターネット利用詐欺」(更新日2026年9月24日の表示)確認日 2026-10-24
- 官公庁警察庁「インターネット上の誹謗中傷等への対応」(掲載された内容の記録、相手方の処罰を望む場合)確認日 2026-10-24
- 官公庁国会会議録 第217回国会 参議院内閣委員会(令和7年5月20日)警察庁生活安全局長の答弁(発言54)確認日 2026-10-24
- 官公庁法務省 被害者ホットライン連絡先(全国の検察庁)確認日 2026-10-24
- 官公庁法務省「情報通信技術の進展等に対応するための刑事訴訟法等の一部を改正する法律案」(第217回国会)国会提出日・公布日・施行日確認日 2026-10-24
- 官公庁令和7年法律第39号 本文(PDF)第2条(刑訴法241条・242条の改正部分)・附則第1条確認日 2026-10-24
- 官公庁同法律案要綱(PDF)第一の一の5「電磁的方法による告訴・告発」確認日 2026-10-24
よくあるご質問
LINEのやり取りや通帳の記録は、どんな形で出せばよいですか。
決まった形式を定めた法令や警察の公開資料は、調べた範囲では確認できていません。警視庁の通達(平成15年版)は被告訴人が罪を犯したことを証明する資料の提出を求めるとしているので、その資料が告訴事実のどの部分(いつ・誰が・何をしたか)を示すのかが分かるように、日付順に並べて出すのが整理の基本です。インターネット上の書き込みは、警察庁がページの印字とサイト名・URL・書き込み日時等の記録を案内しており、詳しくは「ネット中傷:発信者情報の開示と告訴の順序」のページにあります。
証拠に「甲第1号証」のような番号を付けなければいけませんか。
付け方を指定した法令や警察の公開資料は、調べた範囲では見つかっていません。刑訴法241条1項は告訴を書面か口頭で行うと定めるだけで、証拠の番号や一覧表(証拠目録)の様式は定めていません。番号を付けるかどうかより、告訴状の記載と資料の対応が読み手に分かることが大切で、提出先の警察から指定があればそれに従います。
告訴状を出した警察署から、別の警察署に事件が移されることはありますか。
あります。犯罪捜査規範69条は、管轄区域外の犯罪で処理できないとき、または処理が適当でないと認められるときは、警察本部長または警察署長が関係する警察に移送し、移送先を告訴人に通知すると定めています。移送は受理した後の手続で、管轄外であることを理由に受理を断ることとは別です(同規範63条1項は管轄を問わず受理すると定めています)。
告訴状は郵送で出せますか。
郵送を禁じる法令はありませんが、郵送しただけで受理されるとは限りません。群馬県警察の要綱(平成12年版、第7の2)は、郵送された告訴状は告訴人の出頭を求め、必要事項を聴取した後に受理するとしています。他の都道府県の扱いは「県警ごとの告訴取扱要綱のちがい」のページで比べており、告訴期間が迫っているときは提出先に扱いを確かめてください。
メールやインターネットで告訴できますか。
現在の刑訴法241条1項は書面か口頭による告訴を定めており、秋田県警察の案内(平成27年版)も電話・メール等での告訴はできないとしています。令和7年法律第39号で電磁的方法による告訴が条文に加えられましたが、施行日は「令和9年3月31日までの間において政令で定める日」とされ、2026年10月24日時点でその政令と具体的な方法を定める主務省令は確認できていません。
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本ページは一般的な情報提供です。告訴・告発が受理されるか、どの罪が成立するか、起訴されるかは、事実関係と証拠をもとに警察・検察が判断することで、このページの説明で結論が決まるものではありません。条文は e-Gov法令検索(法令API)で2026年10月24日時点のものを、統計は政府統計の総合窓口(e-Stat)ほか各府省の公表資料を確認しています。参考: e-Gov法令検索 / e-Stat / 警察庁 / 検察庁 / 裁判所 / 法務省