このページの要点
- 不起訴の処分は検察官から告訴人・告発人に通知されますが(刑訴法260条)、理由は請求したときに告げられます(261条)。まず理由を求めることが出発点です。
- 検察審査会には、告訴・告発をした人のほか、告訴をしていない被害者本人も申し立てられます。書面で理由を明示し、申立てや手続案内に費用はかかりません。
- 議決は起訴相当(8人以上)・不起訴不当・不起訴相当の三種類です。起訴相当のあとも不起訴なら第二段階の審査に進み、起訴議決で指定弁護士が起訴します。
- 付審判請求は公務員の職権濫用などに対象が限られ、処分通知から7日以内です。令和6年の審査会の受理人員は、数え方により2,462(申立て)・2,480(職権を含む総数)・2,473(白書本文の罪名別合計)と異なります。
結論:まず不起訴の理由を求め、審査会と付審判のどちらが使えるかを確かめます
結論
- 告訴をした事件で検察官が起訴しないと決めたときは、検察官から告訴人にその旨の通知が来ます(刑訴法260条)。理由は、告訴人が請求したときに告げられます(同法261条)。
- 不起訴に納得できないときの主な制度は、検察審査会への審査の申立てです。告訴をした人のほか、告訴をしていない被害者本人も申し立てられ、申立てや手続案内に費用はかかりません。
- 検察審査会の「起訴相当」の議決のあとも検察官が起訴しないときは、第二段階の審査に進み、11人中8人以上の多数で起訴議決がされると、裁判所が指定した弁護士が起訴します。
- 付審判請求は、公務員の職権濫用などに対象が限られ、通知を受けた日から7日以内に請求する必要があります。名誉毀損・詐欺・傷害などの一般の事件では使えません。
告訴とは、犯罪の被害を受けた人などが警察(司法警察員)や検察官に犯罪の事実を申し出て、犯人の処罰を求める意思を示すことです。告訴をした人を告訴人、処罰を求められた相手を被告訴人(捜査の段階では被疑者)と呼びます。検察官は、捜査の結果をふまえて、被疑者を裁判にかけるか(起訴=公訴の提起)、かけないか(不起訴=公訴を提起しない処分)を決めます。
このページでは、刑事訴訟法(以下「刑訴法」)と検察審査会法(以下「検審法」)の条文、裁判所の説明、統計から、不起訴のあとの手続を整理します。処分が出るまでの流れは受理後の流れと取下げ・示談・虚偽告訴の注意のページで扱っています。
検察審査会は検察官の不起訴処分の当否を審査する制度で、警察が告訴状を受け取らない(不受理)場面を対象とするものではありません。不受理のあとの手段は不受理のあと使える手段の使い分けのページで扱っています。
不起訴が知らされる仕組み:検察官の処分通知(刑訴法260条)
処分通知とは、検察官が起訴・不起訴などの処分をしたときに、そのことを告訴人に知らせることです。刑訴法260条は、告訴・告発(被害者以外の人が犯罪を申告して処罰を求めること)・請求のあった事件について、検察官が起訴または不起訴の処分をしたときは「速やかに」告訴人・告発人・請求人に通知しなければならないと定めています。起訴をやめる公訴の取消しや、事件を他の検察庁の検察官に送ったときも同じ扱いです。
この通知を受ける立場にあるのは、条文上、告訴人・告発人・請求人です。被害届(被害の事実を申告する届出で、処罰を求める意思表示を含まないもの)を出しただけで告訴をしていない被害者は、この条による通知の対象に含まれていません。
告訴をしていない被害者などのためには、検察庁の「被害者等通知制度」という別の仕組みがあります。法務省の説明では、被害者や親族などが希望すれば事件の処分結果などをできる限り通知するとされ、希望は担当の検察官・検察事務官または被害者支援員に伝えることとされています。事件の性質などから、希望があっても全部または一部を通知しない場合があるとも説明されています。
検察官は、告訴、告発又は請求のあつた事件について、公訴を提起し、又はこれを提起しない処分をしたときは、速やかにその旨を告訴人、告発人又は請求人に通知しなければならない。公訴を取り消し、又は事件を他の検察庁の検察官に送致したときも、同様である。
要旨告訴・告発をした人には、起訴・不起訴の結論が検察官から通知されます。通知されるのは「処分をした旨」で、理由までは含まれません。理由は次の261条の請求によって告げられます。
通知の時期は条文上「速やかに」とされ、日数の定めはありません。処分までの期間の統計は、検察統計でみる告訴事件の起訴率と期間のページで扱っています。
不起訴の理由を求める:理由の告知(刑訴法261条)と記録の閲覧
刑訴法261条は、検察官が不起訴の処分をした場合に、告訴人・告発人・請求人の「請求があるとき」は、速やかにその理由を告げなければならないと定めています。言いかえると、理由の告知は請求しなければ行われません。検察審査会に申し立てるかどうかを決めるにも、申立書に「不起訴処分を不当とする理由」を書くにも(検審法施行令18条1項7号)、まず検察官がどの理由で不起訴にしたかを知ることが前提になります。
検察官は、告訴、告発又は請求のあつた事件について公訴を提起しない処分をした場合において、告訴人、告発人又は請求人の請求があるときは、速やかに告訴人、告発人又は請求人にその理由を告げなければならない。
要旨不起訴の理由は、告訴人などが求めたときに告げられます。求めなければ告げられないため、不服を申し立てる前の最初の手順になります。
検察統計(表38)は、不起訴を起訴猶予、嫌疑不十分、嫌疑なし、罪とならず、親告罪の告訴の欠如等、時効完成などの区分で数えています。起訴猶予は、犯人の性格・年齢・境遇、犯罪の軽重・情状、犯罪後の情況により訴追を必要としないときに起訴しない処分(刑訴法248条)で、嫌疑があっても起訴しない場合です。
親告罪(告訴がなければ起訴できない罪)の告訴の欠如や時効完成による不起訴は、証拠の評価とは別の理由による処分です。告訴事件の不起訴の内訳の推移は、検察統計でみる告訴事件の起訴率と期間のページで統計とともに扱っています。
不起訴になった事件の記録を見られるかについては、刑訴法53条が閲覧を認めるのは「被告事件の終結後」の訴訟記録で、起訴されず被告事件にならなかった不起訴の記録は、条文上この対象に含まれないと読めます。法務省の説明では、不起訴事件の記録は原則として閲覧できないとしたうえで、被害者参加制度の対象事件の被害者などは事件の内容を知る目的でも、それ以外の事件の被害者なども民事訴訟などで損害賠償請求権を行使するために必要と認められる場合は、捜査・公判への支障や関係者のプライバシーを害さない範囲で、実況見分調書などを閲覧できるとされています。
検察審査会とは:くじで選ばれた11人が不起訴のよしあしを審査する機関
検察審査会は、公訴権(起訴する権限)の行使に民意を反映させ、その適正を図るために置かれた機関です(検審法1条)。政令で定める地方裁判所とその支部の所在地に置かれ、各地方裁判所の管轄区域に少なくとも一つ置くこととされています。
検察審査会は独立して職権を行う機関です(同法3条)。検察審査会は、管轄区域内の衆議院議員の選挙権を有する人の中からくじで選ばれた11人の検察審査員で組織され(同法4条)、任期は群ごとに6か月です(同法14条)。会議は公開されず(同法26条)、議事は原則として過半数で決まります(同法27条)。
審査は、告訴人や被害者などの申立てがあれば行わなければならず(同法2条2項)、過半数の議決により職権で行うこともできます(同条3項)。
検察審査会は、左の事項を掌る。
一 検察官の公訴を提起しない処分の当否の審査に関する事項
二 検察事務の改善に関する建議又は勧告に関する事項
2 検察審査会は、告訴若しくは告発をした者、請求を待つて受理すべき事件についての請求をした者又は犯罪により害を被つた者(犯罪により害を被つた者が死亡した場合においては、その配偶者、直系の親族又は兄弟姉妹)の申立てがあるときは、前項第一号の審査を行わなければならない。
3 検察審査会は、その過半数による議決があるときは、自ら知り得た資料に基き職権で第一項第一号の審査を行うことができる。
要旨告訴・告発をした人や被害者などが申し立てれば、検察審査会は不起訴処分の当否を審査しなければなりません。
申立てできる人と申立ての方式
申立てができるのは、検審法2条2項に掲げられた人です。具体的には、①告訴・告発をした人、②請求を待って受理すべき事件で請求をした人、③犯罪により害を被った人(その人が死亡した場合は配偶者・直系の親族・兄弟姉妹)です。裁判所の説明も、審査申立ては誰でもできるわけではなく、その犯罪の被害者や告訴・告発をした人などに限られるとしています。
ここで注意したいのは、③の被害者は告訴をしていなくても申立てができる点です。処分通知(刑訴法260条)・理由の告知(同法261条)・付審判請求(同法262条)は、いずれも条文上、告訴・告発などをした人を対象にしています。
申立て先は、不起訴の処分をした検察官が属する検察庁の所在地を管轄する検察審査会です(検審法30条本文)。申立ては書面で、理由を明示してしなければなりません(同法31条)。法務省の説明でも、検察審査会は地方裁判所内に置かれているため、申立手続などは検察審査会に相談するよう案内されています。裁判所の説明では、申立てや手続案内に費用はかかりません。
第二条第二項に掲げる者は、検察官の公訴を提起しない処分に不服があるときは、その検察官の属する検察庁の所在地を管轄する検察審査会にその処分の当否の審査の申立てをすることができる。ただし、裁判所法第十六条第四号に規定する事件並びに私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の規定に違反する罪に係る事件については、この限りでない。
要旨ただし書により、裁判所法16条4号の事件(刑法77条から79条の罪に係る訴訟の第一審)と、独占禁止法違反の罪の事件は申立ての対象から外れています。
申立書に書く事項は、検察審査会法施行令18条1項が定めています。主なものは、申立人と被疑者の氏名・住居など、被疑事実の要旨、不起訴処分の年月日と検察官の氏名・官職、不起訴処分を不当とする理由で、申立人が署名押印します。被疑者の年齢・職業・住居や処分の年月日などが分からないときは書かなくてよく(同条1項ただし書)、関係者の氏名・住居を書いたり資料を添付したりもできます(同条2項)。
同じ事件について検察審査会の議決があったあとは、さらに審査の申立てをすることはできません(検審法32条)。
確認できていないこと
申立てができる期間について、検察審査会法と同法施行令の条文を確認した範囲では、申立ての期限を定める規定は見当たりませんでした。裁判所の「審査の流れ」のページにも期限の記載は確認できませんでした。実務上の運用は確認できていません。一方、公訴時効は不起訴のあとも進むため、罪名ごとの時効の年数は公訴時効の早見表のページで確かめてください。
審査の流れと議決の三つの種類
裁判所の説明によると、審査は検察審査員全員が出席する非公開の会議で行われます。検察審査会は、検察官に審査に必要な資料の提出や会議への出席・意見の陳述を求めることができ(検審法35条)、審査申立人や証人を呼び出して尋問することもできます(同法37条)。弁護士を審査補助員として委嘱することもできます(同法39条の2)。
審査の結論(議決)は、検審法39条の5が定める三つの種類のどれかになります。起訴するのが相当と認めるときは「起訴を相当とする議決」(起訴相当)、それ以外で不起訴は不当と認めるときは「公訴を提起しない処分を不当とする議決」(不起訴不当)、不起訴は相当と認めるときは「公訴を提起しない処分を相当とする議決」(不起訴相当)です。議決は過半数(11人中6人以上)で決めますが、起訴相当の議決には11人中8人以上の多数が必要です(同条2項)。
検察審査会は、検察官の公訴を提起しない処分の当否に関し、次の各号に掲げる場合には、当該各号に定める議決をするものとする。
一 起訴を相当と認めるとき 起訴を相当とする議決
二 前号に掲げる場合を除き、公訴を提起しない処分を不当と認めるとき 公訴を提起しない処分を不当とする議決
三 公訴を提起しない処分を相当と認めるとき 公訴を提起しない処分を相当とする議決
2 前項第一号の議決をするには、第二十七条の規定にかかわらず、検察審査員八人以上の多数によらなければならない。
要旨議決は起訴相当・不起訴不当・不起訴相当の三種類です。起訴相当だけは、過半数ではなく8人以上の賛成が必要とされています。
起訴相当または不起訴不当の議決があると、議決書の謄本が検察官に送られ、検察官は速やかに、その議決を参考にして起訴すべきかどうか(不起訴不当の場合は不起訴処分の当否)を検討し、起訴するか不起訴にするかを決め、検察審査会に通知しなければなりません(検審法41条)。条文は「議決を参考にして」と定めており、この段階の議決で起訴が決まるわけではなく、起訴するかどうかは検察官が改めて判断します。不起訴相当の議決のときは、この再検討の手続は定められていません。
不起訴から議決・再検討までの流れ
検察官
不起訴の処分をし、告訴人などに通知する。請求があれば理由を告げる
刑訴法260条・261条
申立人(告訴人・被害者など)
管轄の検察審査会に、理由を明示した書面で審査を申し立てる
検審法2条2項・30条・31条
検察審査会(11人)
非公開の会議で審査し、資料の提出や尋問を求めることがある
検審法26条・35条・37条
検察審査会(議決)
起訴相当(8人以上)・不起訴不当(過半数)・不起訴相当(過半数)のいずれかを議決する
検審法39条の5
検察官
起訴相当・不起訴不当のとき、議決を参考に再検討し、起訴か不起訴かを決めて通知する
検審法41条
起訴相当の議決のあとも検察官が起訴しない場合の第二段階の審査は、次の章で説明します。第二段階の審査を定める検審法41条の2は起訴相当の議決をした場合に限っており、不起訴不当の議決のあとは第二段階の審査に進みません。
起訴相当のあと:第二段階の審査と起訴議決
起訴相当の議決をした検察審査会は、検察官から改めて不起訴にした旨の通知を受けたときは、その処分の当否を再び審査しなければなりません。検察官が議決書の謄本の送付から3か月以内(3か月を超えない範囲の延長を通知したときは、その期間を加えた期間)に通知をしないときも、同じ不起訴処分があったものとみなして審査します(検審法41条の2)。これを第二段階の審査と呼びます。
第二段階の審査に進めるのは、起訴相当の議決のあと検察官が不起訴にした場合に限られます(検審法41条の2・41条の5)。不起訴不当の議決のあとで検察官がもう一度不起訴にしても、この第二段階の審査には進みません。また、その再度の不起訴が前の不起訴と同じ理由によるときは、その処分について審査の申立てをすることもできません(同法41条の8)。第二段階の審査では、審査補助員(弁護士)を委嘱して審査を行わなければなりません(同法41条の4)。
検察審査会は、第四十一条の二の規定による審査を行つた場合において、起訴を相当と認めるときは、第三十九条の五第一項第一号の規定にかかわらず、起訴をすべき旨の議決(以下「起訴議決」という。)をするものとする。起訴議決をするには、第二十七条の規定にかかわらず、検察審査員八人以上の多数によらなければならない。
要旨第二段階の審査で起訴が相当と認めるときは「起訴議決」をします。起訴議決にも8人以上の多数が必要です。
起訴議決がされると、検察審査会は議決書に、認定した犯罪事実を、できる限り日時・場所・方法で特定して書かなければなりません(検審法41条の7)。議決書の謄本が送られると、裁判所は起訴とその維持に当たる弁護士(指定弁護士)を指定し(同法41条の9)、指定弁護士は検察官の職務を行って、速やかに起訴しなければなりません(同法41条の10)。ここで初めて、検察官の判断によらずに起訴がされることになります。
ただし、被疑者が死亡したとき、すでに同じ事件が起訴されて裁判所に係属しているとき、確定判決を経たときなどは、指定弁護士は起訴しません(検審法41条の10ただし書)。起訴議決のあとに生じた事由により、起訴すれば免訴や公訴棄却の判決をすべき場合に当たることが明らかなときも同じです(同条1項3号)。
申立ての人員と議決の結果(最高裁判所・犯罪白書の統計)
検察審査会の統計は、最高裁判所の「検察審査会統計」と、法務省の犯罪白書にあります。どちらも単位は被疑者の数による延べ人員で、申立ての件数や申立人の数ではありません。また、第二段階の審査(再審査)に係るものは別に数えられています。
統計検察審査会の受理・議決の人員(2021〜2025年)
| 年 | 新受(申立て) | 新受(職権) | 既済 合計 | 起訴相当 | 不起訴不当 | 不起訴相当 | その他 | 起訴相当+不起訴不当の割合 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 2021 | 3,835 | 27 | 3,511 | 140 | 242 | 2,821 | 308 | 10.9% |
| 2022 | 4,041 | 45 | 4,405 | 30 | 137 | 2,555 | 1,683 | 3.8% |
| 2023 | 2,705 | 30 | 2,482 | 5 | 69 | 2,153 | 255 | 3.0% |
| 2024 | 2,462 | 18 | 2,870 | 8 | 83 | 2,378 | 401 | 3.2% |
| 2025 | 2,170 | 26 | 2,220 | 2 | 123 | 1,844 | 251 | 5.6% |
出典:最高裁判所「検察審査会統計」(R7kenshintoukei.xlsx)シート1、2021〜2025年
単位は被疑者数による延べ人員。「その他」は審査打切り・申立却下・移送。割合は当サイトの計算で、(起訴相当+不起訴不当)÷既済合計。例:2025年は(2+123)÷2,220=5.6%、2021年は(140+242)÷3,511=10.9%。2022年の「その他」が多い原因は未確認です。
同じ統計の第二段階の審査は、2021〜2025年に開始された人員が2022年28、2024年5、2025年1(2021年・2023年は0)で、起訴議決は2023年の1人だけです。制度の施行以来の総計では、新受195,501(申立て181,495・職権14,006)、第二段階の審査の開始66、起訴議決16とされています。
令和6年(2024年)の受理人員は、資料と数え方によって次の三つの数字があります。表の受理総数2,480は申立て2,462と職権18の合計で、最高裁判所の数字と一致します。一方、犯罪白書の本文が罪名別に挙げる刑法犯1,962人と特別法犯511人を足すと2,473になり、表の受理総数とは7人違います。この差の原因は確認できていないため、ここでは出典ごとに数字を並べるにとどめます。
統計令和6年(2024年)の検察審査会の受理人員:資料ごとの数字
| 資料 | 数字 | 何の数か |
|---|---|---|
| 最高裁判所「検察審査会統計」 | 2,462 | 新受のうち申立てによるもの(職権18を含めた合計は2,480) |
| 令和7年版犯罪白書 6-2-1-1表 | 2,480 | 受理総数(申立て2,462+職権18) |
| 令和7年版犯罪白書 本文(第6編第2章第1節3) | 2,473 | 受理人員のうち刑法犯1,962人+特別法犯511人の合計(当サイトの計算) |
出典:最高裁判所「検察審査会統計」(R7kenshintoukei.xlsx)2024年行/令和7年版犯罪白書 6-2-1-1表 2024年行・第6編第2章第1節3本文
いずれも被疑者数による延べ人員。白書本文では、刑法犯は文書偽造339人、傷害319人の順に多いとされています。
犯罪白書(令和7年版)は、長期の結果も示しています。1949年(昭和24年)から2024年(令和6年)までに処理した延べ192,415人のうち、起訴相当または不起訴不当の議決は延べ19,421人(10.1%)でした(最高裁判所事務総局の資料による)。また、2009年(平成21年)から2024年までに起訴議決があり指定弁護士が起訴して裁判が確定した12人は、有罪2人、無罪(免訴・公訴棄却を含む)10人とされています(法務省刑事局の資料による)。
付審判請求:対象は公務員の職権濫用などに限られ、期限は7日
付審判請求(準起訴手続とも呼ばれます)は、検察官が不起訴にした事件を、裁判所の判断で裁判にかけることを求める制度です(刑訴法262条)。対象は限られており、刑法193条から196条の罪(公務員職権濫用、特別公務員職権濫用、特別公務員暴行陵虐、特別公務員職権濫用等致死傷)、破壊活動防止法45条の罪、無差別大量殺人行為を行った団体の規制に関する法律42条・43条の罪だけです。名誉毀損・詐欺・暴行・傷害などの一般の事件は対象に含まれません。
請求できるのは、これらの罪について告訴・告発をした人です。請求は、刑訴法260条の処分通知を受けた日から7日以内に、請求書を、不起訴にした検察官に差し出してしなければなりません(同法262条2項)。提出先は裁判所ではなく、不起訴にした検察官である点に注意が必要です。
刑法第百九十三条から第百九十六条まで又は破壊活動防止法(昭和二十七年法律第二百四十号)第四十五条若しくは無差別大量殺人行為を行った団体の規制に関する法律(平成十一年法律第百四十七号)第四十二条若しくは第四十三条の罪について告訴又は告発をした者は、検察官の公訴を提起しない処分に不服があるときは、その検察官所属の検察庁の所在地を管轄する地方裁判所に事件を裁判所の審判に付することを請求することができる。
2 前項の請求は、第二百六十条の通知を受けた日から七日以内に、請求書を公訴を提起しない処分をした検察官に差し出してこれをしなければならない。
要旨対象の罪について告訴・告発をした人は、不起訴に不服があれば、地方裁判所の審判に付することを請求できます。期限は処分通知を受けた日から7日以内で、請求書は不起訴にした検察官に出します。
請求を受けた検察官は、請求に理由があると認めるときは起訴しなければなりません(刑訴法264条)。裁判所は、請求が法令上の方式に違反するとき、請求権が消滅したあとにされたとき、理由がないときは請求を棄却し、理由があるときは事件を管轄地方裁判所の審判に付する決定をします(同法266条)。審判に付する決定があると起訴があったものとみなされ(同法267条)、裁判所が弁護士の中から公訴の維持に当たる人を指定し、その弁護士が検察官の職務を行います(同法268条)。
取り下げた人は同じ事件で再び請求できず(刑訴法263条2項)、棄却や取下げのときは費用の賠償を命じられることがあります(同法269条)。
犯罪白書(令和7年版)によると、2024年(令和6年)の付審判請求の新規受理人員は430人、処理人員は778人で、付審判決定は1名でした(司法統計年報及び最高裁判所事務総局の資料による)。1949年(昭和24年)から2024年までに付審判決定により起訴とみなされた事件で裁判が確定したのは22件で、そのうち13件が無罪(免訴を含む)とされています。
確認できていないこと
令和7年法律第39号による改正後の刑訴法262条2項と検審法31条は、付審判請求と審査の申立てを、書面のほか法務省令で定める電磁的方法でもできる内容になっています。施行日は「令和9年3月31日までの政令で定める日」とされ、本ページの確認日(2026年10月24日)の時点で施行日を定める政令は確認できていません。
どの制度が使えるかの判断:二つの制度の比べ方
法務省(検察庁)の説明も、不起訴処分への不服の制度として検察審査会と付審判請求の二つを挙げています。両者は、誰が使えるか、どの罪が対象か、期限、提出先が大きく違います。
検察審査会への申立てと付審判請求の違い
| 項目 | 検察審査会への審査の申立て | 付審判請求 |
|---|---|---|
| 根拠 | 検審法2条2項・30条・31条 | 刑訴法262条〜269条 |
| 使える人 | 告訴・告発をした人、請求をした人、被害者(死亡のときは配偶者・直系の親族・兄弟姉妹) | 対象の罪について告訴・告発をした人 |
| 対象の罪 | 原則としてすべて(裁判所法16条4号の事件と独占禁止法違反の罪の事件を除く) | 刑法193〜196条、破壊活動防止法45条、団体規制法42条・43条の罪 |
| 期限 | 法令上の期限の規定は見当たらない(確認した範囲) | 処分通知を受けた日から7日以内 |
| 提出先 | 不起訴にした検察官の検察庁の所在地を管轄する検察審査会 | 不起訴にした検察官(請求書を差し出す) |
| 費用 | 申立て・手続案内は無料(裁判所の説明) | 棄却・取下げのとき費用の賠償を命じられることがある(刑訴法269条) |
| 結論 | 起訴相当・不起訴不当・不起訴相当。第二段階で起訴議決があれば指定弁護士が起訴 | 棄却または付審判の決定。決定があれば起訴とみなされる |
「団体規制法」は、無差別大量殺人行為を行った団体の規制に関する法律の略です。
不起訴の通知を受けたときの確認の順番
不起訴の理由を知っていますか。
はい次の問いへ。
いいえ告訴人・告発人なら、刑訴法261条により検察官に理由の告知を請求できます。
告訴・告発をした罪が、刑法193〜196条(公務員の職権濫用など)などの付審判の対象ですか。
はい処分通知を受けた日から7日以内に、不起訴にした検察官へ請求書を出す必要があります(刑訴法262条2項)。検察審査会への申立ても検討の対象になります。
いいえ付審判請求は使えません。検察審査会への申立てを検討します。
あなたは告訴・告発をした人、または犯罪の被害者(亡くなった場合はその配偶者・直系の親族・兄弟姉妹)ですか。
はい検察審査会に申し立てられる立場です(検審法2条2項)。
いいえ条文上、申立てができる人に当たりません。
同じ事件で、すでに検察審査会の議決が出ていますか。
はい議決のあった処分について再度の申立てはできません(検審法32条。不起訴不当のあと同じ理由で再び不起訴のときは41条の8)。
いいえ管轄の検察審査会に、理由を明示した書面で申し立てます(検審法30条・31条)。
条文の要件を順に確かめるためのもので、議決や起訴の見通しを示すものではありません。
告訴状の作成について行政書士に頼めることと頼めないことは、行政書士に頼めること・頼めないこと・費用のページで整理しています。
まとめ
- 不起訴の処分は、告訴人・告発人などに検察官から通知されます(刑訴法260条)。被害届だけの被害者は、この条の通知の対象ではなく、被害者等通知制度という別の仕組みがあります。
- 不起訴の理由は、請求したときに告げられます(刑訴法261条)。審査会の申立書に書く「不当とする理由」を考えるためにも、まず理由を求めることが出発点です。
- 検察審査会には、告訴・告発をした人のほか、告訴をしていない被害者も申し立てられます。申立ては書面で理由を明示し、費用はかかりません。法令上の申立期間の規定は見当たりませんが、公訴時効は進みます。
- 議決は起訴相当(8人以上)・不起訴不当・不起訴相当の三種類です。起訴相当のあとも不起訴なら第二段階の審査に進み、起訴議決があれば指定弁護士が起訴します。
- 付審判請求は公務員の職権濫用などに限られ、処分通知から7日以内に不起訴にした検察官へ請求書を出します。2024年(令和6年)は新規受理430人、付審判決定1名でした。
このページの出典
- 法令刑事訴訟法 第53条・第260条・第261条・第262条・第263条・第264条・第266条・第267条・第268条・第269条(e-Gov法令検索)確認日 2026-10-24
- 法令刑事訴訟法(令和7年法律第39号による改正後・未施行版)第262条確認日 2026-10-24
- 法令検察審査会法 第1条〜第4条・第14条・第26条・第27条・第30条〜第32条・第35条・第37条・第39条の2・第39条の5・第40条〜第41条の10(e-Gov法令検索)確認日 2026-10-24
- 法令検察審査会法(令和7年法律第39号による改正後・未施行版)第31条確認日 2026-10-24
- 法令検察審査会法施行令 第18条(e-Gov法令検索)確認日 2026-10-24
- 法令裁判所法 第16条(e-Gov法令検索)確認日 2026-10-24
- 官公庁裁判所「検察審査会での審査の流れ」審査申立てについて・議決確認日 2026-10-24
- 統計最高裁判所 検察審査会統計(R7kenshintoukei.xlsx)検察審査会の受理件数,議決件数等(令和3年〜令和7年)シート1確認日 2026-10-24
- 統計令和7年版犯罪白書 6-2-1-1表 検察審査会の事件の受理・処理人員の推移確認日 2026-10-24
- 官公庁令和7年版犯罪白書 第6編第2章第1節3 不起訴処分に対する不服申立制度(検察審査会・付審判)確認日 2026-10-24
- 官公庁法務省(検察庁)「犯罪被害者の方々へ」2 検察庁における被害者支援のための一般的制度(3 被害者等通知制度)確認日 2026-10-24
- 官公庁法務省(検察庁)「犯罪被害者の方々へ」4 捜査段階での被害者支援(3 事件の処分・4 不起訴記録の閲覧)確認日 2026-10-24
よくあるご質問
検察庁から「不起訴」とだけ書かれた通知が来ました。理由は教えてもらえないのですか。
告訴人・告発人であれば、検察官に請求すると理由が告げられます。刑訴法260条の通知は処分をした旨を知らせるもので、理由の告知は同法261条により「請求があるとき」に行うと定められています。告訴をしていない被害者は、検察庁の被害者等通知制度による通知を希望できるとされています(法務省「犯罪被害者の方々へ」の被害者等通知制度の説明)。
被害届だけを出した場合も、検察審査会に申立てできますか。
犯罪の被害者本人であれば、告訴をしていなくても申し立てられます。検審法2条2項は、告訴・告発をした人と並んで「犯罪により害を被つた者」(死亡した場合は配偶者・直系の親族・兄弟姉妹)を申立てができる人に挙げています。これに対し、付審判請求は告訴・告発をした人に限られます(刑訴法262条1項)。
検察審査会への申立てに、期限はありますか。
検察審査会法と同法施行令の条文を確認した範囲では、申立ての期限を定める規定は見当たりませんでした。実務上の運用は確認できていません。ただし公訴時効は不起訴のあとも進むため、罪名ごとの年数は「公訴時効の早見表」のページで確かめてください。
検察審査会が「不起訴不当」と議決すれば、起訴されるのですか。
起訴が決まるわけではありません。検審法41条2項は、検察官が議決を参考にして不起訴処分の当否を検討し、起訴するか不起訴にするかを決めると定めています。不起訴不当のあとに検察官が再び不起訴にしても、第二段階の審査には進みません(同法41条の2)。指定弁護士による起訴につながるのは、第二段階の審査での起訴議決(8人以上)だけです(同法41条の6・41条の10)。
詐欺で告訴して不起訴になりました。付審判請求はできますか。
詐欺は付審判請求の対象ではないため、できません。刑訴法262条1項が対象とするのは、刑法193条から196条(公務員職権濫用など)、破壊活動防止法45条、無差別大量殺人行為を行った団体の規制に関する法律42条・43条の罪に限られます。詐欺の不起訴に不服があるときは、検察審査会への申立て(検審法30条)が条文上の手段になります。
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本ページは一般的な情報提供です。告訴・告発が受理されるか、どの罪が成立するか、起訴されるかは、事実関係と証拠をもとに警察・検察が判断することで、このページの説明で結論が決まるものではありません。条文は e-Gov法令検索(法令API)で2026年10月24日時点のものを、統計は政府統計の総合窓口(e-Stat)ほか各府省の公表資料を確認しています。参考: e-Gov法令検索 / e-Stat / 警察庁 / 検察庁 / 裁判所 / 法務省