このページの要点
- 脅迫・強要・恐喝・ストーカー行為はどれも親告罪ではなく(親族間の恐喝の一部を除く)、6か月の告訴期間はありません。公訴時効は脅迫・強要・ストーカー行為罪が3年、恐喝が7年です。
- 脅迫は害を加えると告げること、強要はそれで義務のないことをさせること、恐喝は財物や利益を出させることが中心で、法定刑も大きく違います。
- 取立てでも手段が社会通念上許される程度を超えれば全額について恐喝罪とした最高裁判決があります。警告・禁止命令等は告訴とは別の行政上の手続です。
- 告訴をすると、警察から検察官への書類の送付(刑訴法242条)と告訴人への処分の通知(260条)が条文で決まっています。緊急時は110番、相談は#9110です。
結論:脅迫・恐喝・ストーカー行為は告訴がなくても起訴できる罪ですが、告訴には固有の意味があります
結論
- 脅迫罪(刑法222条)・強要罪(223条)・恐喝罪(249条)とストーカー行為罪(ストーカー行為等の規制等に関する法律(以下「ストーカー規制法」)18条)は、いずれも親告罪(告訴がなければ検察官が起訴できない罪)ではありません。6か月の告訴期間の制限もありません(親族間の恐喝の一部を除きます。後述)。
- 三つの刑法犯は、害を加えると告げるだけか(脅迫)、それで義務のないことをさせたか(強要)、財物や利益を出させたか(恐喝)で分かれます。法定刑はそれぞれ違い、公訴時効は恐喝罪だけが長くなっています。
- ストーカー行為には、警察の警告(4条)と公安委員会の禁止命令等(5条)という行政上の措置があり、刑事の告訴とは別の手続です。条文上、警告や禁止命令等を経てからでなければ告訴できないという定めはありません。
- 非親告罪でも、告訴をすれば警察から検察官への書類の送付(刑事訴訟法242条)や、告訴人への処分の通知(260条)が条文で決まっています。これは条文からの整理で、公的機関が非親告罪の告訴の意味を説明した文書は、調べた範囲では見当たりませんでした。
告訴とは、犯罪の被害を受けた人などが、警察(司法警察員)や検察官に犯罪の事実を申し出て、犯人の処罰を求める意思を示すことです。刑事訴訟法(以下「刑訴法」)230条は「犯罪により害を被つた者は、告訴をすることができる。」と定めています。この意思を書面にしたものが告訴状で、告訴をする人を告訴人、処罰を求められる相手を被告訴人(捜査の段階では被疑者)と呼びます。
このページは、脅しの言葉、金銭の要求、つきまといや連続した連絡を受けている人が、告訴を考えるときに確かめたい点を、安全の確保、罪名ごとの要件、ストーカー規制法の手続、告訴する意味、記録の残し方の順に整理します。
まず安全の確保:警察の相談窓口と専門の窓口
告訴状を準備するには時間がかかります。その間も相手からの連絡や接近が続いているときは、書類より先に、警察などの窓口へ相談することが手続の上でも出発点になります。ストーカー規制法の警告(警察本部長等が行う)や禁止命令等(都道府県公安委員会が行う)は、被害を受けている人の申出によっても始まる仕組みです(4条1項・5条1項)。
警察庁は、緊急の事件・事故は110番、緊急でない相談は警察相談専用電話の#9110と案内しています。警察庁の広報資料によると、令和7年中に全国の警察で取り扱った相談の件数は276万8,438件でした(警察庁「令和7年における相談取扱状況について」)。この数字は相談の件数で、告訴の受理件数ではありません。
公式の一覧に載っている窓口(確認日 2026-10-24)
番号と受付時間は、警察庁「令和7年版犯罪被害者白書」資料9の相談先一覧(令和7年4月現在)などの公式ページによります。受付時間は地域や窓口で変わることがあるため、利用する前に下の出典のページで確かめてください。
- 110番:緊急の事件・事故(警察庁「ご意見、各種相談・情報提供等」ページの案内)。
- 警察相談専用電話 #9110:緊急でない警察への相談。相談先一覧では受付を平日8:30〜17:15(各都道府県警察で異なる)とし、土日・祝日と時間外は、24時間受付の一部の県警を除き、当直または音声案内による対応とされています。最寄りの警察署でも相談を受け付けています。
- DV相談ナビ #8008:配偶者などからの暴力の相談。最寄りの配偶者暴力相談支援センターにつながる番号で、受付時間は各センターによります。電話・チャットで相談できる「DV相談プラス」の番号は、相談先一覧に掲載されています。
- 性犯罪被害相談電話 #8103(都道府県警察。相談先一覧では24時間と記載)と、性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センター #8891:性犯罪の被害は、このサイトでは告訴状の作成の対象とせず、これらの専門窓口の案内にとどめます。
- 法テラス 犯罪被害者支援ダイヤル:刑事手続の流れや支援制度、相談窓口の案内。受付は平日9:00〜21:00、土曜9:00〜17:00(日曜祝日・年末年始休業)と法テラスのページに記載されています。番号は法テラスのページと相談先一覧で確認できます。
配偶者からの暴力については、裁判所が被害者の申立てによって出す保護命令(配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律(以下「DV防止法」)10条)という、告訴とは別の制度があります。保護命令に違反した者は2年以下の拘禁刑または200万円以下の罰金です(DV防止法29条)。DVの手続はこのページでは詳しく扱わず、上の窓口の案内にとどめます。
脅迫・強要・恐喝の違い:何を告げ、何をさせたか
三つの罪は、どれも「害を加える旨を告知」する脅しを手段にしますが、脅した結果として何が起きたかで分かれます。脅迫罪は、生命・身体・自由・名誉・財産のどれかに害を加えると告げて人を脅迫した時点で成り立ちうる罪で、相手に何かをさせたことは要件ではありません。本人だけでなく、親族に害を加えると告げた場合も同じです(222条2項)。
強要罪は、脅迫または暴行によって、人に義務のないことを行わせ、または権利の行使を妨害した場合の罪です。脅迫罪の要素に、相手に何かを「させた」、または権利の行使を「やめさせた」という部分が加わります。強要は未遂も罰せられます(223条3項)。
恐喝罪は、人を恐喝して財物を交付させた場合(249条1項)と、同じ方法で財産上不法の利益を得た場合(同条2項)の罪で、お金や物、支払の免除などの財産が動く点が特徴です。法定刑は10年以下の拘禁刑で、罰金刑はありません。脅迫罪と比べて法定刑が重く、公訴時効(犯罪が終わってから一定の期間が過ぎると起訴できなくなる制度)も7年と長くなります。
生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者は、二年以下の拘禁刑又は三十万円以下の罰金に処する。
2 親族の生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者も、前項と同様とする。
要旨本人や親族の命・体・自由・名誉・財産に害を加えると告げて脅すと、脅迫罪になります。条文に「公然と」の要件はないため、1対1の電話やメッセージでも対象になりえます。
人を恐喝して財物を交付させた者は、十年以下の拘禁刑に処する。
2 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。
要旨脅してお金や物を渡させると恐喝罪です。物ではなく、支払を免れるなどの財産上の利益を得た場合も同じ扱いです。
脅迫罪・強要罪・恐喝罪の比較(条文から)
| 項目 | 脅迫罪 | 強要罪 | 恐喝罪 |
|---|---|---|---|
| 条文 | 刑法222条 | 刑法223条 | 刑法249条 |
| 手段 | 害を加える旨の告知 | 害を加える旨の告知による脅迫、または暴行 | 恐喝 |
| 結果として必要なこと | 条文上は不要 | 義務のないことを行わせた、または権利の行使を妨害した | 財物を交付させた、または財産上不法の利益を得た |
| 法定刑 | 2年以下の拘禁刑又は30万円以下の罰金 | 3年以下の拘禁刑 | 10年以下の拘禁刑 |
| 未遂 | 規定なし | 罰する(223条3項) | 罰する(250条) |
| 親告罪か | 親告罪ではない | 親告罪ではない | 親告罪ではない(親族間は251条で244条を準用) |
| 公訴時効 | 3年(刑訴法250条2項6号) | 3年(刑訴法250条2項6号) | 7年(刑訴法250条2項4号) |
公訴時効の年数は、法定刑の長期を刑訴法250条2項に当てはめたものです(このサイトの罪名別一覧と同じ)。
恐喝罪は、配偶者・直系血族・同居の親族の間では刑が免除され、それ以外の親族との間では告訴がなければ起訴できません(刑法251条による244条の準用)。親族間の特例と親告罪の一覧は告訴期間6か月と親告罪の一覧のページで、罪名ごとの時効の数え方は公訴時効の早見表のページで説明しています。
権利の行使との線引き:「貸した金を返せと言っただけ」は通るか
お金の貸し借りや取引の代金をめぐるトラブルでは、請求する側が「自分の権利を言っただけだ」と主張することがあります。たしかに、支払を求めること自体は権利の行使です。問題は、その求め方が脅しの域に入ったときに、恐喝罪が成り立つかどうかです。
この点について最高裁は、債権の取立てであっても、手段が権利行使の方法として社会通念上許される程度を超えた恐喝の手段であれば、債権の額にかかわらず、受け取った金銭の全額について恐喝罪が成立すると判断しています。「本当に貸していたのだから、その分は罪にならない」という理屈は、この判断の下では通りません。
最高裁第二小法廷 昭和30年10月14日判決
昭和27年(あ)第6596号・刑集9巻11号2173頁裁判所サイトの判示事項・裁判要旨で確認
- 事案
- 債権の取立てのために、相手を脅す手段を使って金銭を受け取った事案です。
- 判断の要点
- 取立ての手段が、権利行使の方法として社会通念上一般に許される程度を逸脱した恐喝の手段であれば、債権額のいかんにかかわらず、その手段で受け取った金銭の全額について恐喝罪が成立するとしました。
確認した場所:裁判所 裁判例検索
この判例から言えるのは、「権利があるかどうか」と「手段が許される程度か」は別々に見られる、ということです。告訴状に書くときも、相手の債権が本当にあったかどうかより、どんな言葉・態度で、どの程度しつこく求められたかという手段の側を具体的に書くことが、この線引きに沿った書き方になります。
どこからが「許される程度を逸脱」なのかは、上の判決も一律の基準を示しておらず、個別の事情によって判断されるもので、このページで基準を示すことはできません。
確認できていないこと
正当な権利の行使(訴訟の予告、契約に基づく請求など)を告げることが脅迫罪・強要罪に当たるかを直接判断した判例は、調べた範囲では確認できていません。このページでは、恐喝罪についての上の最高裁判決の範囲で説明しています。
SNS・動画での脅しと、ほかの罪名との重なり
脅迫罪の条文には、名誉毀損罪のような「公然と」という要件がありません。そのため、ダイレクトメッセージやショートメール、電話のように相手と1対1で届く手段でも、害を加える旨の告知があれば脅迫罪の検討対象になります。逆に、不特定の人が見られる場所に書かれたときは、脅迫と名誉毀損の両方の面から考えることになります。
SNSや動画で攻撃的な発言を繰り返した事案で、東京高裁は脅迫罪の成立を認めた原判決を維持しています。原判決は、発言が名誉だけでなく身体や自由への害も感じさせる内容であったことから、「害悪の告知は名誉に対するものだけで、正当業務行為として違法性が阻却される」という被告人側の主張は前提を欠くとし、東京高裁もこの判断を是認しています。
東京高裁 令和4年10月24日判決
令和4年(う)第276号判決PDFの第1・第2と第3の1(脅迫罪について)で確認。第3の2以降は未読
- 事案
- 被告人が、党を脱退した相手にショートメールで「徹底的にYouTubeで叩き続ける」と送り、動画でも相手の人生を潰しに行くと述べるなどして、本人と親族の身体・自由・名誉に危害を加える旨を告げた事案です(不正競争防止法違反・威力業務妨害もあわせて起訴)。
- 判断の要点
- 攻撃的な表現が怒気をはらんだ口調で執拗に繰り返され、本人と父母の身体・自由・名誉が害される恐怖を十分感じさせる内容だとして脅迫を認めた原判決の判断を是認して、控訴を棄却しました。害悪の対象が名誉に限られないことから、正当業務行為の主張は前提を欠き、行為の態様からも正当業務行為に当たらないとされています。
確認した場所:裁判所 裁判例検索
嫌がらせが長く続くと、一つの罪名に収まらないことがあります。福岡地裁平成13年12月19日判決(平成13年(わ)第184号)は、玄関の鍵穴への接着剤の注入や車のタイヤのパンク(住居侵入・器物損壊)、被害者をおとしめる紙片の撒布(名誉毀損)、会社への繰り返しの電話(偽計業務妨害)、「殺してやる」などの文言のメールの送信(脅迫)をまとめて審理し、懲役2年(判決当時の刑名)としています。
このように、同じ相手からの行為でも、罪名によって親告罪かどうかと告訴期間が変わります。名誉毀損と侮辱は親告罪で、犯人を知った日から6か月の告訴期間があります。書き込みの内容が人の評価を下げるものなら名誉毀損・侮辱罪で告訴するにはのページを、相手が誰か分からない書き込みならネット中傷:発信者情報の開示と告訴の順序のページをあわせて確認してください。
ストーカー規制法:「つきまとい等」と「ストーカー行為」
ストーカー規制法は、まず「つきまとい等」を定義し、それを同じ相手に繰り返すことを「ストーカー行為」として処罰します。つきまとい等に当たるのは、特定の人への恋愛感情その他の好意の感情、またはそれが満たされなかったことへの怨恨の感情を充足する目的で、本人や配偶者、直系・同居の親族、社会生活で密接な関係のある人に対して、次の行為をすることです(2条1項)。
- 1号:つきまとい、待ち伏せ、進路に立ちふさがる、住居・勤務先・学校などの付近での見張り、押し掛け、うろつき
- 2号:行動を監視していると思わせる事項を告げる、または知りうる状態に置く
- 3号:面会・交際その他の義務のないことを要求する
- 4号:著しく粗野または乱暴な言動
- 5号:無言電話、拒まれたのに連続して電話・文書・ファクシミリ・電子メールの送信等をする(SNSのメッセージやコメントの機能を使う行為も「電子メールの送信等」に含まれます。2条2項)
- 6号:汚物・動物の死体など、著しく不快な物を送付する、または知りうる状態に置く
- 7号:名誉を害する事項を告げる、または知りうる状態に置く
- 8号:性的羞恥心を害する事項を告げる、文書・画像・電磁的記録を送付・送信する、など
このほか、承諾なく位置情報を取得する、所持品に位置情報を記録・送信する装置などを取り付けるといった「位置情報無承諾取得等」も規制の対象です(2条3項)。
注意したいのは、目的の要件です。条文は恋愛感情などの好意の感情や、それが満たされなかった怨恨を充足する目的に限っているため、職場や近隣、取引上のトラブルが動機のつきまといは、ストーカー規制法の対象に当たらない可能性があります。その場合でも、行為の内容によって脅迫罪・強要罪や業務妨害罪などの刑法の罪名を検討する余地は残ります。
4 この法律において「ストーカー行為」とは、同一の者に対し、つきまとい等(第一項第一号から第四号まで及び第五号(電子メールの送信等に係る部分に限る。)に掲げる行為については、身体の安全、住居等の平穏若しくは名誉が害され、又は行動の自由が著しく害される不安を覚えさせるような方法により行われる場合に限る。)又は位置情報無承諾取得等を反復してすることをいう。
要旨同じ相手に、つきまとい等または位置情報の無断取得等を繰り返すと「ストーカー行為」になります。1〜4号と、5号のうち電子メール等の送信の部分は、身の安全や住居の平穏、名誉が害される、または行動の自由が著しく害されるという不安を覚えさせる方法で行われたときに限られます。
警告・禁止命令等と告訴の関係
ストーカー規制法には、処罰とは別に、行為をやめさせるための行政上の措置が二つあります。一つは警察本部長等(警視総監・道府県警察本部長・警察署長)による警告(4条)、もう一つは都道府県公安委員会による禁止命令等(5条)です。どちらも、つきまとい等をして不安を覚えさせることを禁じた3条への違反があり、さらに繰り返すおそれがあると認められるときに、被害を受けている人の申出により、または職権で行われます。
警告をしたときは、警察本部長等はその内容と日時を被害者に通知します(4条3項)。申出をしたのに警告をしなかったときは、その旨と理由を書面で申出人に通知しなければなりません(4条4項)。禁止命令等も、申出を受けて命令をしなかったときは、理由を書面で通知する定めがあります(5条7項)。禁止命令等は原則として聴聞を経て出されますが、緊急の必要があるときは聴聞を行わずに出すことができ、その場合は、命令をした日から15日以内に意見の聴取を行わなければなりません(5条2項・3項)。効力は1年で、必要があれば1年ずつ延長できます(5条8項・9項)。
条文を読んだ限り、禁止命令等の前に警告を経なければならないという規定はなく、告訴の前に警告や禁止命令等を経なければならないという規定もありません。警告・禁止命令等は行政上の措置、告訴は刑事手続で、根拠も申し出る先も違います。
ストーカー被害で使える手続の流れ(条文から)
警察署・#9110への相談
被害の状況を伝え、どの手続を使うかを確かめる出発点です。
警察庁の案内
警告の申出(警察本部長等)
繰り返すおそれがあると認められれば警告が出されます。しなかったときは理由を書面で通知されます。
ストーカー規制法4条1項・3項・4項
禁止命令等の申出(公安委員会)
反復の禁止などを命じる処分です。緊急時は聴聞なしで出すことができ、効力は1年です。
同法5条1項・3項・8項
告訴(警察・検察官)
ストーカー行為罪(18条)や禁止命令等違反(19条・20条)、脅迫罪などについて、処罰を求める意思を書面または口頭で示します。
刑訴法241条1項
検察官への送付と処分の通知
告訴を受けた司法警察員は書類と証拠物を検察官に送付し、検察官は起訴・不起訴の処分を告訴人に通知します。
刑訴法242条・260条
警告・禁止命令等と告訴は、どちらか一方を先に使わなければならない関係にはありません(条文に前後の定めがないことからの整理)。
ストーカー行為罪の罰則と警察の対応の件数
ストーカー行為をした者は、一年以下の拘禁刑又は百万円以下の罰金に処する。
要旨ストーカー行為そのものが処罰の対象です。警告や禁止命令等を受けていたかどうかは、この罪の要件ではありません。
禁止命令等に違反してストーカー行為をした場合は、2年以下の拘禁刑または200万円以下の罰金と、より重く罰せられます(19条)。ストーカー行為に当たらない禁止命令等違反も、6月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金です(20条)。公訴時効は、18条・19条・20条のいずれも3年です(刑訴法250条2項6号)。
現行のストーカー規制法の条文には「告訴」の語がなく、告訴を起訴の条件とする規定はありません。つまり、ストーカー行為罪は非親告罪で、6か月の告訴期間の制限もかかりません。告訴がなくても捜査・起訴はできますが、処罰を求める意思を示す手段として告訴をすることはできます。名誉毀損・侮辱・器物損壊が親告罪であることとの違いは、告訴期間6か月と親告罪の一覧のページの一覧で確認できます。
統計ストーカー事案への警察の対応(令和7年)
| 区分 | 件数 | 前年との比較 |
|---|---|---|
| ストーカー事案の相談等件数 | 22,881件 | +3,314件(+16.9%) |
| 警告 | 1,577件 | — |
| 禁止命令等 | 3,037件 | — |
| ストーカー規制法違反の検挙 | 1,546件 | — |
| うちストーカー行為罪 | 1,302件 | — |
| 関連する刑法犯・他の特別法犯の検挙 | 2,171件 | — |
出典:警察庁「令和7年におけるストーカー事案、配偶者からの暴力事案等、児童虐待事案等への対応状況について」第1(ストーカー事案)
相談等件数には、ストーカー規制法その他の刑罰法令に当たらないものも含まれます。告訴の件数ではありません。数値と項目名は、PDF(令和8年3月19日)の本文と表で確認しました(確認日2026-10-24)。行政措置と検挙の件数は、令和6年から計上の方法が変更されたとPDFの注に記載があります。
検察の側から見ると、検察統計(e-Stat)表8では、2025年に検察で処理が済んだストーカー規制法違反の被疑者は1,925人で、起訴683人、不起訴693人でした。起訴÷(起訴+不起訴)で計算した起訴率は49.6%です(683÷1,376)。これは告訴を端緒とする事件に限らない数字です。
秋田地裁 令和7年10月23日判決
令和7年(わ)第51号判決PDFの主文・罪となるべき事実・量刑の事情で確認
- 事案
- 恋愛感情等を充足する目的で、拒まれたのに連続して11回電子メールを送って面会・交際など義務のないことを求め、さらに令和6年6月4日から9月16日までの間に9回、被害者の居住先などに押し掛け、見張り、うろつくなどしたストーカー行為と、公衆電話から虚偽の火災を119番通報して消防職員合計43名を出動させた偽計業務妨害の事案です。
- 判断の要点
- ストーカー行為と偽計業務妨害を認め、懲役2年(判決当時の刑名)、3年間の執行猶予としました。量刑の事情として、被害者に賠償金を支払う合意が成立したことが挙げられています。
確認した場所:裁判所 裁判例検索
非親告罪でも告訴する意味:条文から整理できること
脅迫・強要・恐喝・ストーカー行為は、告訴がなくても検察官が起訴できます。それでも告訴をする意味は、条文上、少なくとも三つの点に表れています。
一つ目は、処罰を求める意思が正式な形で示されることです。被害届は被害の事実を申告するものですが、告訴は犯人の処罰を求める意思表示を含みます。二つ目は、警察から検察官への送付です。刑訴法242条は、司法警察員が告訴を受けたときは、速やかに関係する書類と証拠物を検察官に送付しなければならないと定めています。被害届から始まる事件は捜査を経てから送致されるのに対し、告訴の事件はこの条文による送付になるという違いがあります。
三つ目は、告訴人への通知です。検察官は、告訴のあった事件について起訴・不起訴の処分をしたときは、速やかに告訴人に通知しなければなりません(刑訴法260条)。不起訴の場合は、告訴人が請求すれば理由も告げられます(261条)。被害届だけを出した人には、この条文による通知を求める立場はありません。
検察官は、告訴、告発又は請求のあつた事件について、公訴を提起し、又はこれを提起しない処分をしたときは、速やかにその旨を告訴人、告発人又は請求人に通知しなければならない。公訴を取り消し、又は事件を他の検察庁の検察官に送致したときも、同様である。
要旨告訴をした人には、検察官が起訴したか、しなかったかが速やかに知らされます。
こうした違いは、事件がその後どう進むかを告訴人が知り、不起訴に不服があるときに次の手続を選ぶ前提になります。受理された後の送付・捜査・処分の流れは受理後の流れと取下げ・示談・虚偽告訴の注意のページで、不起訴になった後の検察審査会などは不起訴になったら:検察審査会と付審判のページで説明しています。
なお、脅迫罪の事件全体の中で告訴から始まるものの割合は小さく、検察統計(e-Stat)表37で計算すると、2025年に処理が済んだ脅迫(強要を含む)の被疑者のうち、警察経由と検察官への告訴を合わせた割合は6.2%でした((司法警察員に告訴+検察官に告訴)÷既済総数)。警察庁の統計では、令和7年の脅迫の認知件数5,170件に対し検挙件数4,219件で、検挙率は81.6%です(4,219÷5,170。検挙件数には前年以前に認知した事件の検挙が含まれうる数字です)。表37の割合からは、処理が済んだ脅迫の事件の大部分が、告訴以外の端緒から始まっていることが分かります。
確認できていないこと
非親告罪について告訴をすることの意味を正面から説明した警察庁・法務省などの公的な説明文書は、調べた範囲では見当たりませんでした。この章の内容は、刑訴法230条・242条・260条・261条の条文から整理したものです。
記録の残し方:罪名の要件に沿って残す
告訴状では、どの罪名の、どの要件に当たる事実があったのかを具体的に示すことになります。そのため、記録も「何をされたか」を罪名の要件に結びつけて残しておくと、後で告訴事実を組み立てやすくなります。警察への相談の際にも、日付順に並んだ記録があれば状況を説明しやすくなります。
ストーカー行為は「反復」が要件なので、一つひとつの行為の日時・場所・内容が分かる一覧が特に意味を持ちます。5号の連続した電話や送信は「拒まれたにもかかわらず」が条文の言葉なので、相手に断った事実やその日時も記録の対象です。
罪名ごとに記録しておく事項(条文の要件から)
| 罪名 | 条文の要件 | 記録しておく事項の例 |
|---|---|---|
| 脅迫(刑法222条) | 生命・身体・自由・名誉・財産(本人または親族)に害を加える旨の告知 | 言われた言葉や送られた文面そのもの、日時、手段(電話・メッセージ・対面)、送信元の表示 |
| 強要(刑法223条) | 脅迫・暴行によって義務のないことを行わせた、または権利の行使を妨げた | 求められた内容、実際にさせられたこと・やめさせられたこと、その前後のやりとり |
| 恐喝(刑法249条) | 恐喝によって財物を交付させた、または財産上不法の利益を得た | 渡した金額・物・日時・方法(振込の記録など)と、その前の脅しの内容 |
| ストーカー行為(ストーカー規制法18条) | 好意・怨恨の感情を充足する目的、同じ相手への反復、各号の行為、不安を覚えさせる方法 | 行為ごとの日時・場所・内容の一覧、断った事実、相手との関係の経緯、警告・禁止命令等の有無と日付 |
表は条文の要件から記録の対象を整理したもので、これだけで罪が成立するかどうかを判断するものではありません。
証拠の番号の付け方や証拠目録、提出先の決め方は証拠の整理と提出先・郵送・オンライン提出のページで、ネット上の書き込みを日時・URLつきで保存する方法はネット中傷:発信者情報の開示と告訴の順序のページで扱っています。告訴状そのものの構成と、告訴事実の書き方は告訴状の書き方と相手不明の場合の告訴のページを参照してください。
まとめ
- 脅迫・強要・恐喝・ストーカー行為はいずれも非親告罪で、6か月の告訴期間はありません(親族間の恐喝の一部を除く)。公訴時効は脅迫・強要・ストーカー行為罪が3年、恐喝が7年です。
- 連絡や接近が続いているときは、書類より先に警察の窓口への相談を。緊急の事件・事故は110番、緊急でない相談は#9110と警察庁が案内しています。
- 債権の取立てでも、手段が社会通念上許される程度を超えれば、受け取った全額について恐喝罪が成立するとした最高裁判決があります。
- ストーカー規制法の警告・禁止命令等は行政上の措置で、告訴とは別の手続です。条文上、どちらかを先に使う必要はありません。
- 告訴をすると、警察から検察官への送付(刑訴法242条)と、告訴人への処分の通知(260条)が条文で決まっています。
このページの出典
- 法令刑法 第222条・第223条・第232条・第244条・第249条・第251条(e-Gov法令検索)確認日 2026-10-24
- 法令ストーカー行為等の規制等に関する法律 第1条〜第5条・第18条〜第20条(e-Gov法令検索)確認日 2026-10-24
- 法令刑事訴訟法 第230条・第235条・第241条・第242条・第250条・第260条・第261条(e-Gov法令検索)確認日 2026-10-24
- 法令配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律 第10条・第29条(e-Gov法令検索)確認日 2026-10-24
- 判例最高裁第二小法廷 昭和30年10月14日判決(昭和27年(あ)第6596号)判示事項・裁判要旨確認日 2026-10-24
- 判例東京高裁 令和4年10月24日判決(令和4年(う)第276号)詳細ページ・判決文確認日 2026-10-24
- 判例福岡地裁 平成13年12月19日判決(平成13年(わ)第184号)詳細ページ・判決文確認日 2026-10-24
- 判例秋田地裁 令和7年10月23日判決(令和7年(わ)第51号)詳細ページ・判決文確認日 2026-10-24
- 統計警察庁「令和7年におけるストーカー事案、配偶者からの暴力事案等、児童虐待事案等への対応状況について」第1確認日 2026-10-24
- 統計e-Stat 検察統計調査 年次 表8 罪名別 被疑事件の既済及び未済の人員(2025年)ストーカー規制法・脅迫確認日 2026-10-24
- 統計e-Stat 検察統計調査 年次 表37 罪名別 既済となった被疑事件の捜査の端緒別人員(2025年)脅迫確認日 2026-10-24
- 統計警察庁「令和7年の刑法犯に関する統計資料」(認知件数・検挙件数)確認日 2026-10-24
- 官公庁警察庁 令和7年版犯罪被害者白書 資料9「政府・地方公共団体が関与する犯罪被害者等に関する相談先一覧」(令和7年4月現在)確認日 2026-10-24
- 官公庁警察庁「ご意見、各種相談・情報提供等」確認日 2026-10-24
- 官公庁警察庁 広報資料「令和7年における相談取扱状況について」(令和8年3月12日)1頁確認日 2026-10-24
- 官公庁法テラス「犯罪被害者の方へ」(犯罪被害者支援ダイヤル)確認日 2026-10-24
よくあるご質問
脅迫されてから時間がたっていますが、告訴の期限はありますか。
脅迫罪には、犯人を知った日から6か月という告訴期間の制限はありません。この期間を定める刑訴法235条は親告罪についての規定で、脅迫罪は親告罪ではないためです。ただし公訴時効があり、脅迫罪は3年(刑訴法250条2項6号)、恐喝罪は7年(同項4号)です。時効の起算や停止は「公訴時効の早見表」のページで説明しています。
ストーカー行為罪は、被害者が告訴しないと処罰されないのですか。
いいえ。現行のストーカー規制法の条文には「告訴」の語がなく、告訴を起訴の条件とする規定がないため、ストーカー行為罪(18条)は非親告罪です。告訴がなくても捜査・起訴はできますが、処罰を求める意思を示すために告訴をすることはできます。
警察に警告を申し出ましたが、警告は出されませんでした。理由は教えてもらえますか。
教えてもらえます。ストーカー規制法4条4項は、申出を受けた警察本部長等が警告をしなかったときは、その旨と理由を申出人に書面で通知しなければならないと定めています。公安委員会の禁止命令等についても、命令をしなかったときは理由を書面で通知する定めがあります(5条7項)。警告がなかったことは、告訴ができなくなる理由にはなりません。
相手は「貸した金を返せと言っただけ」と言っています。恐喝にはならないのですか。
債権があることだけでは、恐喝罪が成り立たなくなるわけではありません。最高裁昭和30年10月14日判決(刑集9巻11号2173頁)は、取立ての手段が社会通念上許される程度を超えた恐喝の手段であれば、債権額にかかわらず受け取った全額について恐喝罪が成立するとしています。どの程度で超えるかの一律の基準は示されておらず、個別の事情によって判断されます。
配偶者からの暴力や脅しも、このページの手続で告訴できますか。
配偶者からの暴力や脅しでも、脅迫罪などに当たれば告訴はできますが、DV防止法には裁判所の保護命令(10条)という別の制度があり、違反は2年以下の拘禁刑または200万円以下の罰金です(29条)。相談先として、DV相談ナビ#8008は最寄りの配偶者暴力相談支援センターにつながります(警察庁の相談先一覧、確認日2026-10-24)。
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本ページは一般的な情報提供です。告訴・告発が受理されるか、どの罪が成立するか、起訴されるかは、事実関係と証拠をもとに警察・検察が判断することで、このページの説明で結論が決まるものではありません。条文は e-Gov法令検索(法令API)で2026年10月24日時点のものを、統計は政府統計の総合窓口(e-Stat)ほか各府省の公表資料を確認しています。参考: e-Gov法令検索 / e-Stat / 警察庁 / 検察庁 / 裁判所 / 法務省