このページの要点
- 告訴の受付は、法令(犯罪捜査規範63条〜69条)、警察庁の通達、都府県警察の例規の3層で決まり、判断の目安や不受理のときの説明は例規の層で県ごとに定められています。
- 令和6年3月26日の警察庁通達は、本部と警察署に告訴・告発センターを置き、本部の事件主管課が署の対応を初期から把握・指導する体制を求めています。
- 受理判断の目安は、岐阜・富山が相談日から3か月以内、千葉が原則3月以内、群馬が内部の具申で概ね1箇月以内で、警視庁と京都府の本文には定めが見当たりません。
- 全国の通達で「3か月」とあるのは知能犯罪に限った令和6年1月5日の別通達の努力目標です。自分の県の定めは、版の日付とともに県警の公表ページで確かめます。
結論:受付の細かな決まりは都府県警察ごとの例規にあり、期限・説明・預かりの定め方は県で違います
結論
- 告訴の受理義務そのものは全国共通の犯罪捜査規範63条にあり、警察庁の令和6年3月26日の通達(警察庁丙刑企発第39号ほか)が全国の警察に受付の体制づくりを求めています。そのうえで、判断までの目安や不受理のときの説明の仕方は、各都府県警察の要綱・要領・例規通達が決めています。
- 本文を読めた警視庁と5府県(京都・岐阜・富山・群馬・千葉)の例規を並べると、受理判断の目安は「1箇月以内に内部で具申」(群馬・平成12年)から「最初の相談日から3か月以内」(岐阜・富山・平成25年)まで幅があり、警視庁と京都府の本文には期限の定めが見当たりません。
- 「3か月以内に受理判断」を全国の警察庁通達として書けるのは、知能犯罪の告訴・告発に限った令和6年1月5日付けの別通達(警察庁丁捜二発第2号)にある努力目標だけです。
- 公開されている例規には古い版もあります。自分の県の定めは、県警サイトの訓令・通達の公表ページで探し、見つからなければ情報公開の手続で確かめることになります。
このページでいう告訴は、被害者などが犯罪の事実を警察や検察官に申告し、犯人を処罰してほしいという意思を表すことを指します。告訴をする人を告訴人といい、警察のうち告訴を受け付ける権限を持つ警察官を司法警察員と呼びます。警察が告訴として正式に受け付けることが受理、受け付けないことが不受理です。
同じ告訴状を持って行っても、どの都府県警察に出すかで、判断までの目安や、断られたときの説明の決まりが違うことがあります。このページでは、警察庁の通達と各県の例規がどうつながっているかを確かめたうえで、本文を読めた都府県の定めを表にして比べます。県ごとの違いを知っておくと、窓口で「いつごろ判断が出るのか」「預けた書類はどういう扱いか」を尋ねるときの手がかりになります。
受理されない場面そのものの整理や、窓口で言われる言葉の読み方は告訴状が受理されない理由と対処で扱っています。このページは県ごとの比較に絞ります。
法令・警察庁の通達・県警の例規という3つの層
告訴の受付を決めている文書は、3つの層に分けて考えると整理しやすくなります。いちばん上が法令で、刑事訴訟法(以下「刑訴法」)241条が告訴は書面か口頭で検察官または司法警察員にすると定め、国家公安委員会規則である犯罪捜査規範63条が、司法警察員に受理の義務を課しています。63条は「この節に定めるところにより」受理すると書き、受理後の調書・補充・移送などの手続を続く条文に置いています。
次の層が警察庁の通達です。警察庁から各都道府県警察の長にあてて、法令の運用の仕方や体制づくりを指示する文書で、告訴については令和6年3月26日の通達が現在の基本になっています。この通達の第1が受理前に確かめる要件と迅速な判断を求めていることは、告訴状が受理されない理由と対処で説明しています。通達の欄外には、有効期間を令和11年3月31日までとする記載があり、通達は期間を区切って出し直されるものだと分かります。
いちばん下の層が、各都府県警察が自分の組織あてに出す例規です。名称は県によってまちまちで、「要綱」「要領」「例規通達」「運用要領」「通達」などが使われています。期限の目安、不受理のときの説明、相談票への記録、郵送された告訴状の扱いといった細かな手順は、この層で定められています。
告訴の受付を決めている文書の層
| 層 | 文書の例 | 定めている内容 | このページでの扱い |
|---|---|---|---|
| 法令 | 刑訴法241条・242条、犯罪捜査規範63条〜69条 | 告訴の方式、受理の義務、受理後の送付・移送 | 全国共通。条文はe-Govで確認 |
| 警察庁の通達 | 令和6年3月26日 警察庁丙刑企発第39号ほか/令和6年1月5日 警察庁丁捜二発第2号(知能犯罪) | 受理前の要件確認、告訴・告発センターの設置、知能犯罪の判断の目安 | 全国の警察への指示。日数は知能犯罪の通達だけにある |
| 都府県警察の例規 | 警視庁の通達、京都府警察の例規、岐阜・富山・群馬・千葉の要綱・要領など | 判断の目安、不受理の説明・記録、預かり、郵送、管轄外の扱い | 本文を読めた都府県だけを比較 |
当事務所が、法令・通達・例規の本文から作成した整理表です。
例規の中には、罪名を限らない一般の定めと、知能犯罪に限った定めの2つの系統が見られます。沖縄県警察が平成14年7月24日に制定した要領(沖例規捜一4ほか)の公表された概要は、それまで知能犯罪以外の告訴の取扱いには具体的な要領がなかったことを背景に、あらゆる事件の告訴を対象にしたと説明しています。一方、埼玉県警察には平成18年の「知能犯に関する告訴・告発事件取扱要領」(捜二第894号)があることが、平成21年7月7日の被害相談取扱要領(捜二第1406号)の引用から分かり、鹿児島県警察は令和6年6月7日に知能犯罪についての通達(鹿捜二第54号ほか)を出しています。どちらの系統の定めが自分の件に当たるかで、読むべき例規が変わります。
告訴・告発センターの仕組み:本部と警察署の二段構え
令和6年3月26日の通達は第2で、警視庁・道府県警察本部と各警察署の両方に、告訴の相談と申出に一括して対応する専門の窓口として「告訴・告発センター」を置くよう求めています。窓口には対応責任者と対応担当者を指定し、責任者は本部では警視、警察署では警視または警部、担当者は本部では警部、警察署では警部または警部補とされています。第3では、本部の事件主管課がセンターと連携し、警察署での対応を初期の段階から把握・管理して、受理するかどうかの判断と、その後の捜査について指導する役割を負わせています。
告訴・告発センターでの受付の流れ(令和6年3月26日の通達第2・第3から)
警察署の告訴・告発センター
告訴の相談・申出を一括して受け、内容を聴き取る。受理・不受理の判断と、どの部署が担当するかの決定を迅速に行う
通達第2の1
本部の事件主管課
センターと連携し、警察署の対応を初期段階から把握・管理する
通達第3
受理・不受理の判断と捜査
本部の指導を受けながら、受理・不受理を判断し、受理した事件の捜査を進める
通達第1・第3
通達の文言から当事務所が流れとして整理したものです。窓口の名称や担当部署の置き方は都府県ごとに違います。
令和6年の通達が出る前から、センターの定めを置いていた県があります。群馬県警察の「告訴・告発センター設置要綱」(平成25年3月12日 群本例規第7号、平成25年4月1日実施、平成26年3月改正)は、警察本部に本部センター、警察署に署センターを置き、本部センターは刑事部刑事企画課長を、署センターは警察署長をセンター長とし、署センターの対応責任者を刑事生活安全官または刑事課長としています。本部センターは本部と警察署に申出のあった相談や告訴・告発の受理・処理の状況を管理し、その対応責任者が未処理の事件を解消するための一般的な指示や指導を行います。
秋田県警察は、案内文書で、平成25年4月1日から警察本部と各警察署に告訴・告発センターを置いたとし、別の案内文書では設置先を警察本部の刑事企画課と各警察署の刑事課としています(どちらの文書にも発行日の記載はありません)。富山県警察の要綱(平成25年5月1日施行)は本部と警察署に「告訴センター」を置き、他の都道府県警察から移送されてきた事件はすべて本部の告訴センターが受理するとしています。千葉県警察の運用要領(平成27年1月15日 例規(刑)第1号)も、本部の各部と警察署の告訴・告発センターでの対応の仕方を定めたものです。
センターは警察内部の受付と管理の体制で、不受理の結論に対して告訴人が不服を申し立てる仕組みではありません。名称も県によって「告訴・告発センター」「告訴センター」と異なります。
県警比較表:受理判断の目安・不受理のときの説明・預かり
次の表は、本文を読めた警視庁と5府県の例規について、受理の判断の目安、不受理のときの説明や記録、告訴状や資料の預かりの扱いを並べたものです。読めた版の内容で、現在もその版のまま使われているかは確認できていません(京都府は令和6年3月8日の最終改正が表示された版です)。
都府県警察の告訴の取扱い例規の比較(本文を読めたもの)
| 都府県(確認した版) | 文書の名称 | 受理判断の目安 | 不受理のときの説明・記録 | 預かり・写しの扱い |
|---|---|---|---|---|
| 警視庁(平成15年4月1日) | 通達「告訴及び告発の取扱いについて」(通達甲(副監.刑.2.資)第15号) | 本文に期限の定めは見当たらない | 犯罪が成立しないことが明らかになった場合でも、必要に応じて生活安全相談の窓口を教示して引き継ぐ | 相談で資料を預かるときは受理ではないと説明して了解を得る。告訴状の原本は預からない |
| 京都府(最終改正令和6年3月8日) | 例規「告訴、告発事件の取扱要領について」(例規務第3号) | 本文に期限の定めは見当たらない | 成立しない理由と法的根拠を納得のいくよう説明する。紛議が予想されれば受理して書類を送付することも考慮。措置簿に受理しなかった理由と教示した内容を記録 | 仮受理・預り保管はしない |
| 岐阜県(平成25年3月19日。附則は平成29年7月12日の改正まで) | 通達「告訴・告発事件取扱要領の制定について」(刑総第151号ほか) | 特段の事情がない限り、最初の相談日から3か月以内に受理の可否を決定 | 受理の可否を判断したときは、適宜関係者に捜査状況を通知するなど配意する。不受理の告知の書式は見当たらない | 定めは見当たらない |
| 富山県(平成25年5月) | 例規通達「告訴・告発取扱要綱の制定について」 | 原則として、最初の相談日から3か月以内に受理の可否を判断 | 理由を含めて丁寧に説明し、他の法的救済方法を教示するなど、問題解決に努める | 受理の判断のために捜査が要るときは、所定の写し提出書(様式第7号)で告訴状の写しを受け取り、正式な受理ではないと十分に説明する |
| 群馬県(平成12年7月3日) | 例規通達「告訴及び告発取扱要綱の制定について」(群本例規第19号) | 受理の可否を判断し、概ね1箇月以内に事件主管課長または署長に具申(内部の手続) | 不受理の理由を告訴・告発相談受理票に記載する。申出者への告知方法の定めは見当たらない | 定めは見当たらない |
| 千葉県(平成27年1月15日) | 運用要領「告訴・告発事件取扱規程の運用について」(例規(刑)第1号) | 原則として、申出等を行った日から3月以内に受理または不受理を判断 | 警察相談票等で記録化し、理由等を丁寧に説明し、関係機関を紹介する | 直ちに判断できないときは警察相談として受け付け、継続的に連絡を取り合って資料の提出を求める |
当事務所が各例規の本文(画像のPDFを機械で読み取ったもの)から作成した比較表です。「見当たらない」は、読めた本文の範囲で該当する定めを見つけられなかったという意味で、別の通達に定めがある可能性は残ります。富山県は公表された本文が第5まで(以下省略の表示)です。
表の「確認した版」は、ここで読んだ文書の日付です。警視庁の通達は平成15年の版が警視庁サイトに全文で掲載されていますが、後に出された内部の通達があるかは分かりません。群馬県の要綱は平成12年の制定で、平成14年と平成17年の改正の沿革が書かれているものの、現在も効力があるかは確認できていません。
千葉県の運用要領は、その第1で、告訴・告発事件取扱規程(平成27年本部訓令第1号)11条の規定による運用要領だとしており、規程の本体は読めていません。比較表は、各県の例規の全体ではなく、読めた範囲を並べたものとして見てください。
期限の目安を読むときの注意:「3か月」は誰の・何の期限か
「告訴は3か月以内に受理の判断がされる」という説明を見かけたら、どの文書の、何についての期限かを確かめる必要があります。全国の警察にあてた警察庁の通達で日数が書かれているのは、調べた範囲では、令和6年1月5日の「知能犯罪に関する告訴・告発の適正かつ合理的な取扱いの推進について」(警察庁丁捜二発第2号)だけで、公表されているのは概要の1頁です。概要には、特別な事情がある場合を除き、最初の相談日から3か月以内に受理または不受理を判断するよう努めること、とあります。
この通達は対象が知能犯罪に限られ、しかも「努めること」という努力目標です。3か月を過ぎたら違法になるという定めではなく、知能犯罪以外の告訴にも同じ日数が当てはまるとは書かれていません。概要からは、知能犯罪にどの罪名が含まれるのかも特定できません。詐欺や横領の告訴を考えている場合も、それがこの通達の対象かどうかは概要だけでは判断できず、罪名ごとの論点は詐欺・金銭トラブルの告訴と民事不介入と横領・背任の告訴:会社・親族・共有財産で扱っています。
文書ごとの期限の目安(何の期限か・いつから数えるか)
| 文書(版) | 何の期限か | 起算点 | 書きぶり |
|---|---|---|---|
| 警察庁 令和6年1月5日(知能犯罪) | 受理または不受理の判断 | 最初の相談日 | 特別な事情がある場合を除き、3か月以内の判断に努める |
| 岐阜県(平成25年) | 告訴・告発事件として受理することの可否の決定 | 最初の相談日 | 特段の事情がない限り3か月以内 |
| 富山県(平成25年) | 受理の可否の判断 | 最初の相談日 | 原則として3か月以内 |
| 千葉県(平成27年) | 受理または不受理の判断 | 告訴・告発の申出等を行った日 | 原則として3月以内 |
| 群馬県(平成12年) | 受理の可否についての内部の具申 | 明記なし(受理した相談を検討したうえで) | 概ね1箇月以内 |
| 富山県(平成25年) | 受理後の捜査を遂げて検察官に送付・送致 | 受理 | おおむね3か月を目途(複雑な場合等を除く) |
| 千葉県(平成27年) | 受理後の捜査の終結と送致(付) | 事件受理日 | 原則として6月以内。受理後2年を経過した事件などは千葉地方検察庁と処理方法を協議 |
当事務所が各文書の本文・概要から作成した表です。警視庁・京都府の例規の本文には期限の定めが見当たりませんでした。鹿児島県の知能犯罪の通達(令和6年6月7日)は概要のみの公表で、期限の数字は書かれていません。
表を見ると、同じ「3か月」でも、判断までの期限なのか受理後の捜査の目安なのか、数え始めが最初の相談日なのか申出の日なのかが文書ごとに違います。群馬県の「概ね1箇月」は、担当者が上司に受理の可否を具申する内部の期限で、告訴人に結論を伝える期限として書かれたものではありません。どの数字も「原則」「特段の事情がない限り」「努める」といった幅のある書き方です。
愛知県警察の令和7年の要綱(原文は要再確認)
資料集の元になった調査記録によれば、愛知県警察の「告訴・告発取扱要綱の制定について」(令和7年3月19日 刑総発甲第32号、令和7年4月1日実施)は、受理または不受理を速やかに告知すること、初回の対応から2か月を経過しても判断されていないものを総括責任者に報告することなどを定めているとされます。ただし、今回は県の例規集の本文に到達できず、原文を確認できていないため、比較表には入れていません。
読めた例規に共通していること
県ごとの違いが目立つ一方で、本文を読めた例規には共通する点もあります。1つ目は、管轄にかかわらず受け付けることです。警視庁の通達は告訴人・被告訴人の居住地や犯行地などを問わず受理するとし、京都府の例規は犯罪地や当事者の住所などが管轄区域内かどうかを問わず受理する、岐阜県の要領も住居・営業所・犯罪発生地などが管轄区域内か否かにかかわらず受理するとしています。これは犯罪捜査規範63条の「管轄区域内の事件であるかどうかを問わず」と同じ方向で、ほかの警察が扱うほうがよい事件は、受理した後に移送する仕組みが規範に置かれています。
警察本部長または警察署長は、告訴または告発のあつた事件が、管轄区域外の犯罪であるため当該警察においてこれを処理することができないとき、またはこれを処理することが適当でないと認められるときは、関係警察に対してすみやかに移送の手続をとらなければならない。
2 前項の規定による移送をしたときは、すみやかに、告訴人または告発人にその移送先を通知しなければならない。
要旨管轄区域の外で起きた事件などで、受け付けた警察が処理できない、または処理が適当でないときは、関係する警察に移送し、移送先を告訴人に知らせます。管轄外であることは、受け付けない理由ではなく、受け付けた後の移送の理由として扱われています。
警視庁の通達は、別の所属が扱うことに合理的な理由がある事件は、所属間で調整したうえで引き継ぎ、どこへ引き継いだかを告訴人に示すと定めています。富山県の要綱が他の府県警察からの移送事件を本部の告訴センターで受理するとしているのも、移送を前提にした定めです。
2つ目は、受理の前に確かめる要件の項目です。警視庁は処罰意思・犯罪事実の特定・告訴権者・公訴時効・親告罪の告訴期間を、京都府は告訴権・法定の期間・同じ事実の再告訴でないか(親告罪の取消しの有無、他の警察や検察庁への告訴の有無)・犯罪事実・処罰意思を、群馬県は告訴権・犯罪構成要件・処罰意思その他の法令に定める要件を挙げています。親告罪は告訴がなければ起訴できない罪、告訴期間は親告罪の告訴ができる期間(犯人を知った日から6か月)、公訴時効は一定の期間が過ぎると起訴できなくなる制度です。並べ方や言葉は違っても、警察庁の通達が挙げる項目とおおむね重なります。
3つ目は、代理人が出すときの書面です。京都府と岐阜県は、被害者の代理人なら委任状、被害者以外の告訴権者なら戸籍謄本などの告訴権を証する書面を確かめると定め、警視庁も代理人の委任状と告訴権者の身分を示す資料を求めています。告訴状に添える書面の考え方は告訴状の書き方と相手不明の場合の告訴で扱っています。
県によって違うこと:説明・記録・提出のしかた
違いが大きいのは、判断の目安のほかに、不受理のときの説明、相談段階の記録、持参・郵送・電話の扱いです。説明の定め方を比べると、富山県は理由を含めて丁寧に説明し他の法的救済方法を教えるとし、千葉県は理由等を丁寧に説明して関係機関を紹介するとしています。京都府は成立しない理由と法的根拠を納得のいくよう説明するとしたうえで、納得が得られず紛議が予想されるときは受理して書類を送付することも考えるとしており、警視庁は相談の窓口を教えて引き継ぐことを定めています。
記録の残し方も違います。群馬県は不受理の理由を告訴・告発相談受理票に書き、京都府は措置簿に受理しなかった理由と教示した内容を記録し(保存期間5年)、千葉県は不受理と判断したものを警察相談票などで確実に記録化するとしています。窓口で断られたときに、いつ、どの部署の誰が、どんな理由を述べたかを自分の側でも書き留めておくと、後で警察に問い合わせたり不受理のあと使える手段の使い分けで挙げた手段を考えたりするときに役立ちます。
提出のしかたと相談段階の扱いの違い(本文を読めたもの)
| 都府県(確認した版) | 郵送・電話 | 相談段階・その他の定め |
|---|---|---|
| 警視庁(平成15年) | 郵送で届いた告訴状だけでは告訴権や犯罪事実、処罰を求める意思が確かめにくい場合、すぐに来署してもらうなどして資料や説明を求める | 公訴時効が切迫した告訴では、被害のときに告訴しなかった理由の説明を求め、時効まで間がないことを説明する。事件の成否や管轄についての不用意な言動を慎む |
| 群馬県(平成12年) | 郵送された告訴状は、告訴人等の出頭を求め、必要事項を聴取した後に受理する | 告訴人に、告訴取下げの要請と誤解されるような言動を厳に慎む |
| 秋田県(案内文書。発行日の記載なし) | 電話・メール等での告訴・告発はできない。匿名での告訴・告発もできない | 来庁して手続をし、望ましい形は「告訴状」と題する書面と関係書類の持参。電話では問合せと来庁日程の調整を受け付ける |
| 岐阜県(平成25年) | 定めは見当たらない | 司法巡査に告訴があったときは、受理の権限がないことを理由に拒まず、直ちに司法警察員に報告する |
| 京都府(令和6年最終改正) | 定めは見当たらない | 処罰を求める意思がはっきりしないときは確かめて明確にする |
当事務所が各例規・案内文書の本文から作成した表です。秋田県の案内は、文書中に発行日がなく、現在の運用かどうかを確認できていません。
刑訴法241条は告訴の方式を「書面又は口頭」と定めていますが、電話による告訴の可否に触れた全国共通の公式の基準は、調べた範囲では確認できませんでした。秋田県の「電話では受理できません」は、ファイル名に「H25」とある同県の案内文書の記載で、その県の扱いを示す一例です。郵送や電磁的な方法による提出の全体像は証拠の整理と提出先・郵送・オンライン提出で扱っています。
自分の県の定めを確かめる方法
自分が告訴状を出す都道府県警察の定めを知りたいときは、まず県警のサイトの情報公開のページを探します。警視庁は情報公開のページに「訓令・通達(刑事部)」の一覧を置き、その中に「告訴及び告発の取扱いについて」の全文を掲載しています。鹿児島県や沖縄県のように、通達の概要だけを公表している県もあり、群馬県や岐阜県の例規は県のサイトに添付ファイルとして載っていました。
公表されている文書が見つからないときは、県の情報公開の制度で開示を請求する方法があります。福岡県では、警察本部に告訴・告発の受理(不受理)に関する通達や内部規則の開示を求めた件で、県の情報公開審査会が答申を出しています。県警は本部の通達(「告訴・告発の受理体制及び指導・管理の強化について(通達)」平成29年12月4日 福警刑総第1253号ほか)を開示し、警察署については、通達に基づいて県下統一の運用をしているため署が別の内部規則を作ることはないと説明しました。審査会は、署についての説明には特段不合理な点はないとする一方、本部の文書については請求の範囲を狭く解しているとして、受理・不受理に関する事項が書かれた通達や規則などを追加して特定し、改めて開示の決定をすべきだとしています。山口県では、県警察本部長が「知能犯罪に関する告訴・告発の適正な受理及び処理について(通達)」(令和3年4月2日付け山口刑捜二第71号)を特定して部分開示し、山口県情報公開・個人情報保護審査会の答申(情報公開答申第122号)はこの決定を妥当としました。答申は、検察官と司法警察員には法により原則として受理の義務があると解され、例外的に受理しない場合の要件も判例などで確立していることから、県警が受理義務の判断基準を独自に定めているとは想定しにくい、と述べています。
自分の県の告訴の取扱い例規を確かめる順序
県警のサイトに、訓令・通達や例規の公表ページがありますか。
はい一覧の中から「告訴」「告発」を題名に含む文書を探します。知能犯罪に限った通達が別にないかも見ます。
いいえ県の例規集や、県のサイトの情報公開のページを探します。
見つかった文書に、制定日・最終改正日・附則の日付は書かれていますか。
はいその日付を控え、後の改正や廃止がないかを同じ一覧で確かめます。
いいえ版が分からないまま内容に頼らず、窓口で現在の取扱いを尋ねます。
公表されている文書が見つかりませんか。
はい情報公開の制度で開示請求をする方法があります(福岡県・山口県の答申の例)。
いいえ見つかった文書の、判断の目安・不受理のときの説明・預かりの定めを読みます。
当事務所が、県警サイトの公表の例と情報公開審査会の答申から整理した順序です。開示の範囲や手数は各県の制度によります。
例規を読んでも、それは警察内部の取扱いの定めです。今回読んだ例規の範囲では、告訴人が例規違反を理由に受理を求めて申し立てる手続は定められていません。例規は、窓口で「この県ではどういう定めになっているか」を尋ねるときの手がかりになります。断られた後に使える手段は不受理のあと使える手段の使い分けでまとめています。
確認できていないこと
北海道・大阪府・神奈川県など、ここに挙げていない道府県の告訴の取扱い例規は、今回の調査では本文を確認できなかったため比較の対象にしていません。愛知県(令和7年)は原文の再確認が必要で、山口県の通達(令和3年)は本文を取得できていません。
まとめ
- 告訴の受付は、法令(刑訴法241条・犯罪捜査規範63条〜69条)、警察庁の通達、都府県警察の例規の3つの層で決まっています。細かな手順は例規の層にあります。
- 令和6年3月26日の通達は、本部と警察署に告訴・告発センターを置き、本部の事件主管課が署の対応を初期段階から把握・指導する体制を求めています。群馬・秋田・富山・千葉には、令和6年の通達より前からセンターの定めや案内がありました。
- 受理判断の目安は、岐阜・富山(平成25年)が最初の相談日から3か月以内、千葉(平成27年)が申出の日から原則3月以内、群馬(平成12年)が内部の具申で概ね1箇月以内で、警視庁と京都府の本文には定めが見当たりません。
- 調べた範囲で警察庁の通達に「3か月」が書かれているのは、知能犯罪に限った令和6年1月5日の別通達の努力目標だけで、告訴一般の期限ではありません。
- 自分の県の定めは、県警サイトの公表ページで版の日付とともに確かめ、見つからなければ情報公開の手続を使います。
このページの出典
- 法令刑事訴訟法 第241条(e-Gov法令検索)確認日 2026-10-24
- 法令犯罪捜査規範 第63条・第69条(e-Gov法令検索)確認日 2026-10-24
- 官公庁警察庁通達「告訴・告発への適切な対応及び指導・管理の徹底について」(令和6年3月26日 警察庁丙刑企発第39号ほか)第1〜第3確認日 2026-10-24
- 官公庁警察庁 刑事局通達一覧(令和6年3月26日の行)確認日 2026-10-24
- 官公庁警察庁通達「知能犯罪に関する告訴・告発の適正かつ合理的な取扱いの推進について」(令和6年1月5日 警察庁丁捜二発第2号)概要確認日 2026-10-24
- 官公庁警視庁 通達甲(副監.刑.2.資)第15号「告訴及び告発の取扱いについて」(平成15年4月1日)第3確認日 2026-10-24
- 官公庁警視庁 訓令・通達(刑事部)一覧ページ(「告訴及び告発の取扱いについて」)確認日 2026-10-24
- 官公庁京都府警察「告訴、告発事件の取扱要領について(例規)」(最終改正令和6年3月8日 例規務第3号)第4・第7確認日 2026-10-24
- 官公庁岐阜県警察「告訴・告発事件取扱要領の制定について(通達)」(平成25年3月19日 刑総第151号ほか)第5の4・第6の2・第13の2・附則確認日 2026-10-24
- 官公庁富山県警察「告訴・告発取扱要綱の制定について(例規通達)」(平成25年5月1日施行)第3・第4確認日 2026-10-24
- 官公庁群馬県警察「告訴及び告発取扱要綱の制定について(例規通達)」(平成12年7月3日 群本例規第19号)第6の3・第7・第8・第9確認日 2026-10-24
- 官公庁群馬県警察「告訴・告発センター設置要綱の制定について(例規通達)」(平成25年3月12日 群本例規第7号)第1〜第5確認日 2026-10-24
- 官公庁千葉県警察「告訴・告発事件取扱規程の運用について」運用要領(平成27年1月15日 例規(刑)第1号)第1・第7確認日 2026-10-24
- 官公庁秋田県警察「『告訴・告発センター』を設置しました」(案内文書)確認日 2026-10-24
- 官公庁秋田県警察「『告訴・告発センター』を設置しました」(案内文書。ファイル名にh27)確認日 2026-10-24
- 官公庁愛知県警察「告訴・告発取扱要綱の制定について」(令和7年3月19日 刑総発甲第32号)※原文は再確認できず確認日 2026-10-24
- 官公庁沖縄県警察「告訴等の受理及び処理要領の制定について(通達)」(平成14年7月24日 沖例規捜一4ほか)概要確認日 2026-10-24
- 官公庁鹿児島県警察「知能犯罪に関する告訴・告発の適正かつ合理的な取扱いの推進について」(令和6年6月7日 鹿捜二第54号ほか)概要確認日 2026-10-24
- 官公庁埼玉県警察「知能犯に関する被害相談取扱要領」(平成21年7月7日 捜二第1406号)第4の3(2)イ確認日 2026-10-24
- 官公庁山口県情報公開・個人情報保護審査会 情報公開答申第122号 第5の1・別表2確認日 2026-10-24
- 官公庁福岡県情報公開審査会 答申(告訴・告発の受理(不受理)に関する通達等の開示請求)1・2・6確認日 2026-10-24
よくあるご質問
告訴・告発センターは、どこにあって何をする窓口ですか。
警察本部と各警察署に置かれた、告訴の相談と申出をまとめて受ける専門の窓口です。令和6年3月26日の警察庁通達(警察庁丙刑企発第39号ほか)第2が設置を求め、本部の事件主管課が署の対応を初期段階から把握・指導するとしています。担当部署は県によって違い、群馬県の要綱は本部センターの長を刑事部刑事企画課長とし、秋田県の案内文書は本部の刑事企画課と各警察署の刑事課を設置先としています。
隣の県の要綱に「3か月以内に判断」とあれば、自分の県でも同じですか。
同じとは限りません。岐阜・富山(平成25年)は最初の相談日から3か月以内、千葉(平成27年)は申出の日から原則3月以内としていますが、警視庁と京都府の例規の本文には期限の定めが見当たりませんでした。調べた範囲で、全国の通達で日数があるのは知能犯罪に限った令和6年1月5日の通達(警察庁丁捜二発第2号)の努力目標だけです。
県警の要綱どおりに扱われていないと感じたら、要綱を根拠に受理を求める手続はありますか。
今回読んだ例規の範囲では、告訴人が例規違反を理由に申し立てる手続は定められていません。例規は警察内部の取扱いの定めで、令和6年3月26日の通達も不受理への不服申立ての仕組みではありません。窓口で定めの内容を尋ねる手がかりとしては使えます。検察官への告訴や公安委員会への苦情申出は「不受理のあと使える手段の使い分け」のページで比べています。
自分の県の告訴の取扱い例規は、どうやって探せばよいですか。
県警サイトの情報公開のページにある訓令・通達の一覧を見ます。警視庁は「訓令・通達(刑事部)」に平成15年の通達の全文を載せ、鹿児島県や沖縄県は概要を公表しています。見つからないときは県の情報公開制度で開示を請求する方法があり、福岡県では受理(不受理)に関する通達の開示請求について情報公開審査会の答申が出ています。版の日付も一緒に控えてください。
郵送や電話で告訴したいのですが、県によって扱いは違いますか。
違いがあります。警視庁の通達(平成15年)は、郵送された告訴状で要件の確認が難しいときは来署を求めるとし、群馬県の要綱(平成12年)は出頭を求めて聴取した後に受理するとしています。秋田県警察の案内文書は電話・メールでの告訴はできないとしています。刑事訴訟法241条の方式は書面か口頭で、電話の可否を定めた全国共通の公式の基準は確認できていません。
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本ページは一般的な情報提供です。告訴・告発が受理されるか、どの罪が成立するか、起訴されるかは、事実関係と証拠をもとに警察・検察が判断することで、このページの説明で結論が決まるものではありません。条文は e-Gov法令検索(法令API)で2026年10月24日時点のものを、統計は政府統計の総合窓口(e-Stat)ほか各府省の公表資料を確認しています。参考: e-Gov法令検索 / e-Stat / 警察庁 / 検察庁 / 裁判所 / 法務省