このページの要点
- 公訴時効の年数は、法定刑のうち重い刑の長期を刑訴法250条2項に当てはめて決まります。長期ちょうど10年の罪は7年、長期ちょうど5年の罪は5年です。
- 傷害は10年、詐欺・窃盗・業務上横領は7年、横領は5年、名誉毀損・侮辱・脅迫・暴行・器物損壊は3年です。人を死亡させた罪と性犯罪等には特例があります。
- 時効は犯罪行為が終わった時から進み、犯人が分からない間も進みます。犯人を知った日から6か月の告訴期間とは、数え始めも長さも違う別の期限です。
- 刑訴法上、時効を止めるのは起訴と、犯人の国外滞在・逃げ隠れです(刑訴法254条・255条)。告訴状や被害届を出しても時効は止まりません。
結論:公訴時効の年数は法定刑で決まり、犯罪行為が終わった時から進みます
結論
- 公訴時効の年数は、その罪の法定刑のうち最も重い刑の長期を、刑事訴訟法(以下「刑訴法」)250条2項の各号に当てはめて決まります。傷害は10年、詐欺・窃盗・業務上横領は7年、横領は5年、名誉毀損・侮辱・脅迫・暴行・業務妨害・器物損壊は3年です。
- 時効は「犯罪行為が終わった時」から進みます(刑訴法253条1項)。被害に気づいた日や犯人が分かった日から数えるのではありません。
- 刑訴法が定める時効の停止の事由は、公訴の提起(起訴)と、犯人が国外にいる場合・逃げ隠れていて起訴状の謄本の送達などができなかった場合です(刑訴法254条・255条)。告訴状や被害届を出しただけでは止まりません。
- 親告罪では、告訴期間(犯人を知った日から6か月)と公訴時効の両方を満たす必要があります。二つは数え始めも長さも違う別々の期限です。
公訴時効とは、犯罪行為が終わってから法律の定める期間が過ぎると、検察官がその事件を起訴(公訴の提起)できなくなる制度です。告訴とは、犯罪の被害を受けた人などが、警察(司法警察員)や検察官に犯罪の事実を申し出て、犯人の処罰を求める意思を示すことで、告訴をする人を告訴人、処罰を求められる相手を被告訴人(捜査の段階では被疑者)と呼びます。
「何年も前の被害だが、まだ告訴できるか」を考えるときは、①被害がどの罪に当たりうるか、②その罪の時効は何年か、③いつから数えるか、④途中で止まる事情があるか、の順に確かめます。このページでは、刑訴法250条〜255条の原文に沿ってこの順に整理し、罪名別の年数を一覧表にまとめます。
告訴期間(6か月)と公訴時効の違い
「告訴の期限」と呼ばれるものには、性質の違う二つがあります。一つは告訴期間で、親告罪(告訴がなければ検察官が起訴できない罪)について、犯人を知った日から6か月を過ぎると告訴ができなくなる制限です(刑訴法235条)。もう一つが公訴時効で、罪の種類を問わず、期間が過ぎると検察官が起訴できなくなります。
二つの違いがはっきり出るのは、犯人が分からない間の扱いです。告訴期間は「犯人を知つた日」から数えるので、犯人を知るまでは始まりません。これに対し公訴時効は犯罪行為が終わった時から進み、刑訴法が定める停止の事由(254条・255条)に、犯人が分からないことは含まれていません。犯人が分からないままでも、時効の期間は進んでいきます。
告訴期間と公訴時効の比較(条文から)
| 項目 | 告訴期間 | 公訴時効 |
|---|---|---|
| 何の期限か | 告訴ができる期間 | 検察官が起訴できる期間 |
| 対象になる罪 | 親告罪だけ(刑訴法235条) | 罪の種類を問わない(刑訴法250条) |
| 数え始め | 犯人を知った日 | 犯罪行為が終わった時(刑訴法253条1項) |
| 長さ | 6か月 | 法定刑などに応じて1年〜30年(刑訴法250条1項〜3項。4項の加算あり) |
| 犯人が分からない間 | 始まらない | 進む |
| 止まる場合 | — | 公訴の提起、犯人の国外滞在・逃げ隠れ(刑訴法254条・255条) |
| 期間の末日が休日のとき | 刑訴法55条3項本文の扱い(数え方は告訴期間のページ) | 休日でも延びない(刑訴法55条3項ただし書) |
| 過ぎたとき | その告訴権者は告訴できない | 起訴できない(検察統計では不起訴の「時効完成」) |
親告罪の場合は両方の期限がかかります。たとえば名誉毀損罪では、犯人を知った日から6か月以内に告訴し、かつ犯罪行為が終わった時から3年以内に起訴されることが必要です。
告訴期間内に告訴しても、公訴時効は止まりません(刑訴法254条)。時効が3年の名誉毀損罪で、行為から時間がたって犯人を知り6か月以内に告訴しても、起訴までに3年が過ぎれば起訴はできなくなります。
告訴期間の数え方、「犯人を知った日」の意味をめぐる判例、親告罪の一覧は告訴期間6か月と親告罪の一覧のページで扱っています。
年数の決め方:法定刑の長期を刑訴法250条2項に当てはめる
2 時効は、人を死亡させた罪であつて拘禁刑以上の刑に当たるもの以外の罪については、次に掲げる期間を経過することによつて完成する。
一 死刑に当たる罪については二十五年
二 無期拘禁刑に当たる罪については十五年
三 長期十五年以上の拘禁刑に当たる罪については十年
四 長期十五年未満の拘禁刑に当たる罪については七年
五 長期十年未満の拘禁刑に当たる罪については五年
六 長期五年未満の拘禁刑又は罰金に当たる罪については三年
七 拘留又は科料に当たる罪については一年
要旨2項が適用される罪(人を死亡させた罪で拘禁刑以上の刑に当たるもの以外の罪。3項の罪を除く)の時効は、法定刑に応じて25年・15年・10年・7年・5年・3年・1年のいずれかです。拘禁刑の罪は、その上限(長期)が何年かで号が決まります。
手順は、①法定刑を確かめる、②刑が複数並んでいれば重いほうを選ぶ(刑訴法251条)、③その刑の長期を2項の号に当てはめる、の三段階です。
境目になるのは、長期がちょうど10年、ちょうど5年の罪です。4号は「長期十五年未満」、5号は「長期十年未満」、6号は「長期五年未満」と書かれているので、長期10年の罪は5号に入らず4号の7年、長期5年の罪は6号に入らず5号の5年になります。詐欺・窃盗・恐喝・業務上横領(長期10年)が7年、横領・背任(長期5年)が5年になるのはこのためです。
「5年以上の有期拘禁刑」のように下限だけが書かれた罪は、有期拘禁刑の上限で考えます。刑法12条1項は「有期拘禁刑は、一月以上二十年以下とする」と定めているため、強盗(刑法236条1項)の長期は20年で、2項3号により時効は10年です。罰金だけの罪は6号の3年、拘留・科料だけの罪は7号の1年です。
二以上の主刑を併科し、又は二以上の主刑中その一を科すべき罪については、その重い刑に従つて、前条の規定を適用する。
要旨拘禁刑と罰金が選べる罪や併科できる罪は、重い刑(拘禁刑)で時効を決めます。
刑法により刑を加重し、又は減軽すべき場合には、加重し、又は減軽しない刑に従つて、第二百五十条の規定を適用する。
要旨刑法の規定で刑が重くなったり軽くなったりする場合も、元の法定刑で時効を決めます。
時効の年数を出す手順(刑訴法250条〜252条)
人を死亡させた罪で、拘禁刑に当たるものですか(傷害致死、業務上過失致死など)
はい250条1項で決まります(30年・20年・10年)。下の「人を死亡させた罪」の章へ。
いいえ次の問いへ進みます。
不同意わいせつ・不同意性交等など、250条3項に挙げられた罪ですか
はい3項の特例(20年・15年・12年)によります。被害者が18歳未満なら4項の加算があります。
いいえ次の問いへ進みます。
法定刑に拘禁刑がありますか(拘禁刑と罰金が選べる罪を含みます)
はい無期拘禁刑なら2項2号の15年、有期なら長期を2項3号〜5号(10年・7年・5年)と6号(5年未満は3年)に当てはめます(251条)。
いいえ罰金があれば6号の3年、拘留・科料だけなら7号の1年です。
条文の順序を示したものです。罪数(一つの罪か複数の罪か)や共犯関係など、個々の事件でどの罪として扱われるかは捜査機関が判断します。
罪名別の公訴時効一覧表
次の表は、主な罪の現行条文の法定刑(拘禁刑表記)と、それを刑訴法250条に当てはめた時効の年数です。「親告罪か」の欄は、条文に告訴を要件とする規定があるかを示します。
刑法の主な罪の公訴時効(法定刑の長期を刑訴法250条2項に当てはめた結果)
| 罪名(条) | 法定刑 | 親告罪か | 公訴時効 |
|---|---|---|---|
| 名誉毀損(刑法230条1項) | 3年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金 | 親告罪(刑法232条1項) | 3年(6号) |
| 侮辱(刑法231条) | 1年以下の拘禁刑若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料 | 親告罪(刑法232条1項) | 3年(6号) |
| 信用毀損・偽計業務妨害(刑法233条) | 3年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金 | × | 3年(6号) |
| 威力業務妨害(刑法234条) | 233条の例による | × | 3年(6号) |
| 脅迫(刑法222条) | 2年以下の拘禁刑又は30万円以下の罰金 | × | 3年(6号) |
| 強要(刑法223条1項) | 3年以下の拘禁刑 | × | 3年(6号) |
| 暴行(刑法208条) | 2年以下の拘禁刑若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料 | × | 3年(6号) |
| 傷害(刑法204条) | 15年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金 | × | 10年(3号) |
| 過失傷害(刑法209条1項) | 30万円以下の罰金又は科料 | 親告罪(刑法209条2項) | 3年(6号) |
| 住居侵入・不退去(刑法130条) | 3年以下の拘禁刑又は10万円以下の罰金 | × | 3年(6号) |
| 窃盗(刑法235条) | 10年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金 | ×(親族間は刑法244条) | 7年(4号) |
| 強盗(刑法236条1項) | 5年以上の有期拘禁刑 | × | 10年(3号) |
| 詐欺(刑法246条1項) | 10年以下の拘禁刑 | ×(親族間は刑法251条で244条を準用) | 7年(4号) |
| 電子計算機使用詐欺(刑法246条の2) | 10年以下の拘禁刑 | ×(同上) | 7年(4号) |
| 恐喝(刑法249条1項) | 10年以下の拘禁刑 | ×(同上) | 7年(4号) |
| 背任(刑法247条) | 5年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金 | ×(同上) | 5年(5号) |
| 横領(刑法252条1項) | 5年以下の拘禁刑 | ×(親族間は刑法255条で244条を準用) | 5年(5号) |
| 業務上横領(刑法253条) | 10年以下の拘禁刑 | ×(同上) | 7年(4号) |
| 遺失物等横領(刑法254条) | 1年以下の拘禁刑又は10万円以下の罰金若しくは科料 | ×(同上) | 3年(6号) |
| 私文書偽造等(刑法159条1項) | 3月以上5年以下の拘禁刑 | × | 5年(5号) |
| 建造物等損壊(刑法260条前段) | 5年以下の拘禁刑 | × | 5年(5号) |
| 器物損壊等(刑法261条) | 3年以下の拘禁刑又は30万円以下の罰金若しくは科料 | 親告罪(刑法264条) | 3年(6号) |
号は刑訴法250条2項の号です。「×」はその罪の条文に告訴を要件とする規定がないこと(非親告罪)を指します。親族の間の窃盗・詐欺・横領などは刑法244条の特例で刑の免除または親告罪になる場合があります。罪数・共犯・刑の加重減軽・改正前の行為など個別の事情は表の対象外です。
同じ「けがをさせられた」被害でも、暴行(刑法208条)は3年、傷害(刑法204条)は10年と大きく違います。けがの有無や程度によって、どの罪として扱われるかが変わりうるためです。物を壊された被害でも、器物損壊(刑法261条)は3年で親告罪、建造物等損壊(刑法260条)は5年で親告罪ではありません。
それぞれの罪の要件や告訴状に書く要素は、罪名別のページで扱っています。名誉毀損・侮辱は名誉毀損・侮辱罪で告訴するには、詐欺は詐欺・金銭トラブルの告訴と民事不介入、横領・背任は横領・背任の告訴:会社・親族・共有財産、傷害・暴行・器物損壊・窃盗は傷害・器物損壊・窃盗の告訴、脅迫・強要は脅迫・恐喝・ストーカーの告訴のページです。
刑法以外の法律の主な罪の公訴時効
| 罪名(条) | 法定刑 | 親告罪か | 公訴時効 |
|---|---|---|---|
| ストーカー行為(ストーカー規制法18条) | 1年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金 | × | 3年(6号) |
| 私事性的画像記録の提供(私事性的画像記録被害防止法3条1項) | 3年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金 | 親告罪(同条4項) | 3年(6号) |
| 不正アクセス行為(不正アクセス禁止法11条) | 3年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金 | × | 3年(6号) |
| 賃金不払い等の違反(労働基準法120条1号) | 30万円以下の罰金 | × | 3年(6号) |
| 著作権等の侵害(著作権法119条1項) | 10年以下の拘禁刑若しくは1000万円以下の罰金(併科あり) | 親告罪(同法123条1項。一部は同条2項で告訴不要) | 7年(4号) |
| 軽犯罪法違反(軽犯罪法1条) | 拘留又は科料 | × | 1年(7号) |
ストーカー規制法はストーカー行為等の規制等に関する法律の略称です。拘禁刑と罰金を併せて科せる罪も、重い刑(拘禁刑)の長期で年数が決まります(刑訴法251条)。
人を死亡させた罪(250条1項)と性犯罪等の特例(3項・4項)
時効は、人を死亡させた罪であつて拘禁刑に当たるものについては、次に掲げる期間を経過することによつて完成する。
一 無期拘禁刑に当たる罪については三十年
二 長期二十年の拘禁刑に当たる罪については二十年
三 前二号に掲げる罪以外の罪については十年
要旨人を死亡させた罪で拘禁刑に当たるものは、2項より長い30年・20年・10年です。
被害者が亡くなった場合は、2項ではなく1項で年数が決まります。傷害致死(刑法205条)は「三年以上の有期拘禁刑」で長期が20年なので1項2号の20年、業務上過失致死・重過失致死(刑法211条)は長期5年の拘禁刑に当たるので1項3号の10年です。これに対し過失致死(刑法210条)の法定刑は50万円以下の罰金だけで「拘禁刑に当たるもの」ではないため、1項ではなく2項6号の3年になります。
同じ刑法211条の罪でも、被害者がけがにとどまった業務上過失致傷・重過失致傷は2項5号の5年です。結果が死亡か負傷かで、適用される項が変わります。
確認できていないこと
死刑に当たる罪(殺人など)の時効の扱いは、現行の250条1項・2項の文言だけからは説明を確定できず、官公庁の解説で裏づけを確認できていないため、このページでは扱っていません。
3 前項の規定にかかわらず、次の各号に掲げる罪についての時効は、当該各号に定める期間を経過することによつて完成する。(略)
4 前二項の規定にかかわらず、前項各号に掲げる罪について、その被害者が犯罪行為が終わつた時に十八歳未満である場合における時効は、当該各号に定める期間に当該犯罪行為が終わつた時から当該被害者が十八歳に達する日までの期間に相当する期間を加算した期間を経過することによつて完成する。
要旨前半が3項の柱書き(各号は略)、後半が4項です。3項は、不同意性交等(刑法177条)などを15年、不同意わいせつ(刑法176条)などを12年、刑法181条の罪(人を負傷させたときに限る)などを20年とします。被害者が犯罪行為の終了時に18歳未満なら、18歳に達する日までの期間が加算されます(4項)。
3項・4項は令和5年法律第66号(刑法及び刑事訴訟法の一部を改正する法律)の第2条による改正で設けられ、同法の附則1条1号により公布の日である2023年6月23日に施行されました(不同意わいせつ・不同意性交等の罪を定める刑法の改正は2023年7月13日施行)。同法の附則5条は、第2条の施行の際すでに時効が完成している罪には3項・4項を適用せず、未完成の罪には適用すると定めています。性犯罪の被害は専門の相談窓口の領域で、このサイトでは告訴状の作成の対象として扱っていません。
いつから数えるか:犯罪行為が終わった時(253条)と共犯
時効は、犯罪行為が終つた時から進行する。
2 共犯の場合には、最終の行為が終つた時から、すべての共犯に対して時効の期間を起算する。
要旨時効は犯罪行為が終わった時から進みます。共犯がいるときは、最後の行為が終わった時から全員について一緒に数えます。
条文が基準にしているのは「犯罪行為が終つた時」です。被害に気づいた日、被害届を出した日、犯人が誰か分かった日は基準になりません。たとえば預けたお金を使い込まれたことに数年後に気づいた場合、時効は気づいた日からではなく、使い込みの行為が終わった時から進んでいます。
共犯の場合は、行為の時期が人によって違っても、最後の行為が終わった時から全員について一緒に数えます(2項)。
日数の数え方は刑訴法55条によります。同条1項ただし書は「時効期間の初日は、時間を論じないで一日としてこれを計算する」と定めており、行為が終わった日は時刻にかかわらず1日目として数えます。また、期間の末日が休日のときに算入しない扱い(3項本文)は、3項ただし書により時効期間には適用されません。告訴期間の数え方との違いは告訴期間6か月と親告罪の一覧のページで説明しています。
確認できていないこと
ネット上の書き込みが削除されずに残っている場合や、監禁のように状態が続く犯罪、繰り返し行われた行為をまとめて一つの罪と評価する場合に、公訴時効がいつから進むかを判断した判例は、調べた範囲では原文で確認できていません。告訴期間について掲載の継続を考慮した高裁判決はありますが、それを公訴時効の起算点に当てはめた資料は確認できていません。
時効が止まる場合:公訴の提起(254条)と犯人の国外滞在・逃げ隠れ(255条)
時効は、当該事件についてした公訴の提起によつてその進行を停止し、管轄違又は公訴棄却の裁判が確定した時からその進行を始める。
2 共犯の一人に対してした公訴の提起による時効の停止は、他の共犯に対してその効力を有する。この場合において、停止した時効は、当該事件についてした裁判が確定した時からその進行を始める。
要旨起訴されると時効は止まります。管轄違いや公訴棄却の裁判が確定すると、そこから再び進みます。共犯の一人が起訴されると、ほかの共犯の時効も止まります。
犯人が国外にいる場合又は犯人が逃げ隠れているため有効に起訴状の謄本の送達若しくは略式命令の告知ができなかつた場合には、時効は、その国外にいる期間又は逃げ隠れている期間その進行を停止する。
2 犯人が国外にいること又は犯人が逃げ隠れているため有効に起訴状の謄本の送達若しくは略式命令の告知ができなかつたことの証明に必要な事項は、裁判所の規則でこれを定める。
要旨犯人が国外にいる期間、または逃げ隠れていて起訴状の謄本の送達や略式命令の告知ができなかった期間は、時効が止まります。その証明に必要な事項は裁判所の規則で定めます。
時効の進み方と止まり方(条文の流れ)
犯罪行為が終わる
この時から時効が進み始めます。共犯は最後の行為が終わった時からです。
刑訴法253条
告訴状・被害届を出す、警察が捜査する
時効は止まりません。受理の判断や捜査に時間がかかっている間も進みます。
刑訴法254条(停止は公訴の提起による)
犯人が国外にいる、または逃げ隠れていて起訴状の謄本の送達などができない
その期間、時効の進行が止まります。
刑訴法255条1項
検察官が起訴する(公訴の提起)
時効の進行が止まります。共犯の一人への起訴は、ほかの共犯にも効力が及びます。
刑訴法254条1項・2項
管轄違い・公訴棄却の裁判が確定する
その時から時効が再び進みます。
刑訴法254条1項
条文の構造を示したものです。個々の事件で停止の事由に当たるかは、捜査機関と裁判所が判断します。
告訴や被害届は捜査の始まりにはなりますが、時効を止める事由ではありません。時効の残りが短い場合は、捜査と起訴の判断にかかる時間も残りの期間に含まれます。
公訴時効がすでに完成していることは、告訴状が受理されない理由として挙げられる要件の一つです。受理の要件と、断られたときに確かめることは告訴状が受理されない理由と対処のページで扱っています。
確認できていないこと
国外にいた期間の長さや目的によって255条の停止が認められるかなど、停止の要件を判断した判例の原文は、調べた範囲では確認できていません。また、e-Gov上、255条は令和7年法律第39号(刑訴法の改正)による改正が及ぶ条に含まれています。改正後の文言と施行日は、このページでは扱っていません。
令和の改正と時効:拘禁刑への一本化と侮辱罪の1年から3年へ
令和4年法律第67号(刑法等の一部を改正する法律)により、懲役・禁錮が拘禁刑に一本化され、2025年6月1日に施行されました。同日、刑訴法250条の文言も「懲役又は禁錮」から「拘禁刑」に改められましたが、2項の期間の区分(25年・15年・10年・7年・5年・3年・1年)と構造は改正の前後で同じで(e-Govの改正前後の条文の比較による)、2項で決まる年数は変わっていません。
一方、法定刑そのものが重くなった罪は、時効の年数も変わりました。侮辱罪(刑法231条)は、同じ令和4年法律第67号により、2022年7月7日から1年以下の拘禁刑(改正当時の条文では懲役・禁錮)と30万円以下の罰金が法定刑に加わりました。改正前の法定刑は拘留・科料だけで2項7号の1年でしたが、改正後は長期1年の拘禁刑に当たるので2項6号の3年です。
侮辱罪の改正の中身(成立する範囲は変わっていないこと、改正後の運用)は名誉毀損・侮辱罪で告訴するにはのページで扱っています。
なお、2026年に成立した令和8年法律第67号(再審に関する刑訴法の改正)について、e-Govの改正前後の条文を比べると、公訴時効の条文(250条〜254条)は変わっていません。
確認できていないこと
2022年7月6日以前の侮辱行為について公訴時効を何年とするか(刑法6条「犯罪後の法律によって刑の変更があったときは、その軽いものによる。」との関係)を示した判例・公式の解説は、調べた範囲では確認できていません。拘禁刑への一本化に伴う経過措置が時効に影響するかどうかも確認できていません。
計算の注意:一覧表の年数がそのまま当てはまらない場面
一覧表の年数は、一つの罪について法定刑を当てはめた結果です。次のような事情があると、実際の時効の判断は表と異なりえます。
- どの罪に当たるか:同じ出来事でも、暴行か傷害か、横領か業務上横領か、器物損壊か建造物等損壊かで年数が変わります。罪名は書かれた事実をもとに捜査機関が判断します。
- 行為が複数あるとき:何度も繰り返された被害は、行為ごとに別の罪と扱われるか、まとめて一つの罪と扱われるかで、数え始めが変わりえます(判例は前の章の注記のとおり未確認)。
- 共犯がいるとき:最後の行為が終わった時から全員について数え(253条2項)、一人の起訴はほかの共犯の時効も止めます(254条2項)。
検察統計では、検察で処理が済んだ被疑者の不起訴の理由の一つとして「時効完成」が数えられています。不起訴の理由全体の内訳や起訴率の読み方は検察統計でみる告訴事件の起訴率と期間のページにまとめています。
統計告訴を端緒とする事件で「時効完成」を理由に不起訴となった人員(2016〜2025年)
| 年 | 警察経由の告訴(司法警察員に告訴) | 検察官に告訴 |
|---|---|---|
| 2016年 | 39 | 292 |
| 2017年 | 21 | 531 |
| 2018年 | 13 | 26 |
| 2019年 | 22 | 332 |
| 2020年 | 25 | 77 |
| 2021年 | 19 | 13 |
| 2022年 | 14 | 21 |
| 2023年 | 22 | 14 |
| 2024年 | 5 | 25 |
| 2025年 | 36 | 10 |
出典:検察統計調査(e-Stat)年次 表38「既済事由別 既済となった被疑事件の捜査の端緒別人員」の総数行、「司法警察員に告訴」「検察官に告訴」列の「時効完成」、2016〜2025年(2025年の表)
警察経由の告訴の10年間の合計は216人で、同じ期間の警察経由の告訴の不起訴の合計36,250人の約0.6%です(216÷36,250)。人員は検察で処理が済んだ被疑者の数で、告訴状の数ではありません。告訴の時点ですでに時効が完成していたのか、捜査の間に完成したのかは表からは区別できません。検察官に告訴した事件の年ごとの増減の理由も、表からは分かりません。
まとめ
- 公訴時効の年数は、法定刑のうち重い刑の長期を刑訴法250条2項に当てはめて決まります。長期ちょうど10年の罪は7年、長期ちょうど5年の罪は5年です。
- 主な罪の時効は、傷害10年、強盗10年、詐欺・窃盗・恐喝・業務上横領7年、横領・背任5年、名誉毀損・侮辱・脅迫・暴行・業務妨害・器物損壊3年です。人を死亡させた罪は1項(傷害致死20年、業務上過失致死10年)、性犯罪等は3項・4項の特例によります。
- 時効は犯罪行為が終わった時から進み、犯人が分からない間も進みます。共犯は最後の行為が終わった時から全員について数えます(253条)。
- 刑訴法が定める時効の停止の事由は、公訴の提起と、犯人の国外滞在・逃げ隠れです(254条・255条)。告訴状や被害届を出しても止まりません。
- 拘禁刑への一本化で2項の年数は変わっていません。侮辱罪は2022年7月7日から3年になりましたが、改正前の行為の扱いは確認できていません。
このページの出典
- 法令刑事訴訟法 第55条・第235条・第250条〜第255条、附則(令和5年法律第66号)第1条・第5条(e-Gov法令検索)確認日 2026-10-24
- 法令刑事訴訟法の改正履歴 令和5年法律第66号・令和8年法律第67号ほか(e-Gov)確認日 2026-10-24
- 法令刑法 第6条・第12条・第16条・第17条・第204条〜第211条・第222条・第223条・第230条〜第264条ほか(e-Gov法令検索)確認日 2026-10-24
- 法令刑法の改正履歴 令和4年法律第67号(2022年7月7日・2025年6月1日施行分)(e-Gov)確認日 2026-10-24
- 法令ストーカー行為等の規制等に関する法律 第18条(e-Gov法令検索)確認日 2026-10-24
- 法令私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律 第3条(e-Gov法令検索)確認日 2026-10-24
- 法令不正アクセス行為の禁止等に関する法律 第11条(e-Gov法令検索)確認日 2026-10-24
- 法令労働基準法 第120条(e-Gov法令検索)確認日 2026-10-24
- 法令著作権法 第119条・第123条(e-Gov法令検索)確認日 2026-10-24
- 法令軽犯罪法 第1条(e-Gov法令検索)確認日 2026-10-24
- 統計検察統計調査(e-Stat)年次 表38 既済事由別 既済となった被疑事件の捜査の端緒別人員(2016〜2025年)確認日 2026-10-24
よくあるご質問
警察に告訴状を出せば、公訴時効は止まりますか。
止まりません。刑訴法254条1項が時効を止める事由としているのは「公訴の提起」(検察官の起訴)で、告訴の受理や捜査の開始は含まれていません。ほかに止まるのは、犯人が国外にいる場合と、逃げ隠れていて起訴状の謄本の送達などができなかった場合です(刑訴法255条)。
8年前に殴られてけがをしました。今から告訴しても間に合いますか。
傷害罪として扱われるなら、公訴時効は10年です。刑法204条の法定刑の長期が15年で、刑訴法250条2項3号に当たるためです。ただし、けががなかった・軽かったとして暴行罪(時効3年)と扱われると結論が変わり、どの罪に当たるかは捜査機関が判断します。時効は殴られた行為が終わった時から数えます。要件は「傷害・器物損壊・窃盗の告訴」のページで扱っています。
相手が誰か分からないまま年月がたちました。時効は進んでいるのですか。
進んでいます。刑訴法253条1項は時効の起算を「犯罪行為が終つた時」とし、刑訴法が定める停止の事由(254条・255条)に、犯人が分からないことは含まれていません。犯人を知った日から数えるのは親告罪の告訴期間(刑訴法235条)で、公訴時効とは別の期限です。
犯人が海外に住んでいる場合、時効はどうなりますか。
刑訴法255条1項は、犯人が国外にいる場合、その国外にいる期間は時効の進行が停止すると定めています。どのような滞在が停止に当たるかを判断した判例の原文は、調べた範囲では確認できていません。
懲役が拘禁刑に変わったことで、時効の年数は変わりましたか。
刑訴法250条2項の期間の区分は、拘禁刑への一本化(2025年6月1日施行)の前後で同じです。年数が変わったのは、法定刑が重くなった侮辱罪のような場合で、侮辱罪は2022年7月7日から1年が3年になりました。それより前の侮辱行為の扱いは、判例・公式の解説で確認できていません。
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本ページは一般的な情報提供です。告訴・告発が受理されるか、どの罪が成立するか、起訴されるかは、事実関係と証拠をもとに警察・検察が判断することで、このページの説明で結論が決まるものではありません。条文は e-Gov法令検索(法令API)で2026年10月24日時点のものを、統計は政府統計の総合窓口(e-Stat)ほか各府省の公表資料を確認しています。参考: e-Gov法令検索 / e-Stat / 警察庁 / 検察庁 / 裁判所 / 法務省