告訴状が受理されない理由と対処

警察が告訴状を受け取らない、預かりにする、といった場面で、何が理由になっているのかを、受理義務の条文・警察庁の通達・都府県警察の例規・国会答弁・裁判例から整理し、書き直すときに見直す点をまとめます。

トップページ › 告訴状が受理されない理由と対処

このページの要点

  • 告訴の受理義務は犯罪捜査規範63条にあります(61条は被害届)。政府は答弁書で、告訴の要件を満たさないものでない限り受理すべきと認識していると答えています。
  • 警察庁の令和6年3月26日の通達は、告訴権・告訴期間・犯罪構成要件・処罰意思等を確かめ、要件の整った告訴は速やかに受理するよう求めています。日数の期限はありません。
  • 「預かり」「相談扱い」は受理ではありません。京都府警察の例規は仮受理・預り保管をしないと定め、警視庁の通達は資料を預かるなら受理でないと説明するよう定めています。
  • 断られたら、どの要件が理由かを確かめます。事実の特定や処罰意思は書き直しで補えますが、告訴期間の経過や公訴時効の完成は補えず、別の手段を考えることになります。

結論:警察には受理の義務があり、受理しなくてよいとされるのは要件を欠くときです

結論

  • 告訴を受けた司法警察員(警察)には、犯罪捜査規範63条で受理の義務があります。政府も答弁書で、告訴状は「告訴の要件を満たさないものでない限り」受理すべきものと認識していると述べています。
  • 政府や警察庁の説明では、受理しなくてよいのは、告訴権・告訴期間・犯罪の成否・処罰意思などの要件を欠くときです。警察庁の令和6年3月26日の通達は、これらを確かめたうえで、要件の整った告訴は速やかに受理するよう求めています。
  • 「預かり」「相談扱い」は受理ではありません。京都府警察の例規は仮受理や告訴状の預り保管をしないと定め、警視庁の通達は資料を預かるときは受理ではないと説明するよう定めています。
  • 断られたら、まず「どの要件が理由か」を確かめ、補える要件なら告訴状のその部分を見直します。不受理そのものを行政訴訟で取り消してもらう道は、さいたま地裁の判決(第一審)で認められませんでした。

告訴とは、犯罪の被害を受けた人などが、警察や検察官に犯罪の事実を申し出て、犯人の処罰を求める意思を示すことです。その意思を書面にしたものが告訴状で、告訴をする人を告訴人、処罰を求められる相手を被告訴人(捜査の段階では被疑者)と呼びます。警察が告訴として正式に受け付けることを受理、受け付けないことを不受理といいます。

警察の窓口で「受け取れない」「預かっておきます」と言われると、何が足りないのか、どう返せばよいのかが分からなくなります。このページでは、受理の義務を定めた条文、警察庁の通達、都府県警察の例規、国会での答弁、裁判例を順に見ながら、受理されない場面の整理と、出し直すときに見直す点をまとめます。

どの言葉が使われたかよりも、警察がどの要件を問題にしているかを特定することが、次の一手を決める出発点になります。

警察には告訴を受理する義務がある:犯罪捜査規範63条

告訴の方式は、刑事訴訟法(以下「刑訴法」)241条が定めています。告訴は書面でも口頭でもよく、提出先は検察官または司法警察員です。司法警察員は、捜査について一定の権限を持つ警察官のことで、このページでは単に「警察」と呼ぶこともあります。口頭で告訴を受けたときは、受けた側が調書(告訴調書)を作らなければなりません。

刑事訴訟法 第二百四十一条

告訴又は告発は、書面又は口頭で検察官又は司法警察員にこれをしなければならない。

2 検察官又は司法警察員は、口頭による告訴又は告発を受けたときは調書を作らなければならない。

要旨告訴は書面(告訴状)でも口頭でもでき、出す先は検察官か司法警察員です。口頭のときは受けた側が調書を作ります。書面の書式を定めた規定はこの条文にはありません。

受け付ける側の義務を定めているのが、国家公安委員会規則である犯罪捜査規範の63条です。司法警察員は、告訴・告発・自首をする者があったときは、管轄区域内の事件かどうかを問わず、受理しなければなりません。司法警察員でない警察官(司法巡査)が告訴を受けたときは、直ちに司法警察員に移すことになっています。

犯罪捜査規範 第六十三条(告訴、告発および自首の受理)

司法警察員たる警察官は、告訴、告発または自首をする者があつたときは、管轄区域内の事件であるかどうかを問わず、この節に定めるところにより、これを受理しなければならない。

2 司法巡査たる警察官は、告訴、告発または自首をする者があつたときは、直ちに、これを司法警察員たる警察官に移さなければならない。

要旨告訴を受けた司法警察員は、事件がその警察署の管轄かどうかにかかわらず受理しなければなりません。受けたのが司法巡査なら、すぐに司法警察員に引き継ぎます。

間違えやすいのが条番号です。同じ規範の61条は「犯罪による被害の届出」、つまり被害届の受理を定めた条文で、告訴の受理義務は63条にあります。被害届は被害にあった事実を警察に知らせるもの、告訴はそれに加えて犯人の処罰を求める意思を示すもの、という違いがあり、効果の違いは告訴・告発・被害届の違いと告訴できる人のページで扱っています。

政府の説明も同じ方向です。令和2年2月14日の答弁書(内閣参質201第28号)は、63条1項を引いたうえで、告訴状は告訴の要件を満たさないものでない限り受理すべきものと認識している、と答えました。昭和62年3月31日の答弁書(内閣衆質108第21号)も、要件を満たさない告訴状には補正や再検討を求めることはあるが、適式な告訴・告発状を受理しないことはないと承知している、としています。

受理しないことが許されるのは要件を欠くときに限られる、というのが政府の説明の骨組みです。ただし63条は警察の内部の行為の基準を定めた規則で、受理されなかったときの不服申立ての手続までは定めていません。

警察庁の通達が求めていること:令和6年3月26日 警察庁丙刑企発第39号ほか

現在の受付の基本になっているのが、警察庁の通達「告訴・告発への適切な対応及び指導・管理の徹底について」(令和6年3月26日 警察庁丙刑企発第39号ほか)です。刑事局長・生活安全局長など5人の局長から各都道府県警察の長にあてたもので、それまでの平成31年3月27日の通達(警察庁丙刑企発第41号ほか)などを廃止して出されました。

通達の第1は、告訴等があったら直ちに内容を聴き取り、告訴権の有無、告訴期間、犯罪構成要件の充足の有無、処罰意思等の要件を確認したうえで、できる限り迅速に受理・不受理を判断し、要件の整っている告訴は速やかに受理するよう求めています。受理したら速やかに捜査を行うよう努めることも書かれています。要件の列挙は「等」で結ばれており、この4つに限るとは書かれていません。

第2は、警視庁・道府県警察本部と警察署に「告訴・告発センター」という専門の窓口を置き、相談・申出の聴取、受理・不受理の判断、担当所属の決定を迅速・的確に行う体制を作ることです。第3では、本部の事件主管課が警察署の対応を初期段階から把握し、受理・不受理の判断や捜査を指導するとしています。

令和6年3月26日の通達に書かれていること・書かれていないこと

項目通達の内容読むときの注意
受理前に確かめる要件告訴権の有無、告訴期間、犯罪構成要件の充足の有無、処罰意思等「等」とあり、列挙はこれに限られない
判断の速さ可能な限り迅速に受理・不受理を判断する日数の期限は書かれていない
受理の原則要件の整っている告訴等は速やかに受理する要件を満たすかの判断は警察が行う
窓口本部と警察署に告訴・告発センターを置き、責任者・担当者を指定する名称や形は都道府県ごとに違う
不受理の伝え方・預かり定めなし県ごとの例規に定めがある場合がある

出典:警察庁通達(令和6年3月26日 警察庁丙刑企発第39号ほか)全2頁。通達の画像PDFを機械で読み取った資料による。

令和7年5月20日の参議院内閣委員会でも、警察庁生活安全局長が通達と同じ趣旨を述べ、告訴は必ずしも書面の提出を求めるものではなく、口頭でも要件を判断したうえで受理することとされている、と答弁しています。

なお、「最初の相談日から3か月以内に受理・不受理を判断するよう努める」という目安は、この通達ではなく、令和6年1月5日の別の通達(警察庁丁捜二発第2号)に書かれたもので、対象は知能犯罪に関する告訴・告発に限られ、公表されているのは概要だけです。告訴一般の期限ではありません。鹿児島県警察もこれを受けた通達(令和6年6月7日 鹿捜二第54号ほか)の概要を公表していますが、概要に期限の数字は書かれていません。県ごとの要綱の違いは県警ごとの告訴取扱要綱のちがいで整理しています。

警察庁がこうした通達を重ねてきた経緯も、公式の資料で確かめられます。廃止された平成31年の通達の前文は、疎明資料が十分にそろっていない、他の警察署が主となって捜査したほうが効率的、といった理由で受理を保留したり、他の所属を紹介して受理を拒んだりする例があるなどの苦情が依然として寄せられている、と記していました。さらに、平成12年4月14日付けの警察庁刑事局長の通達「告訴・告発の受理・処理の適正化と体制強化について」があったことが、長野県情報公開審査会の答申で確認できます(この通達の本文は確認できていません)。

それでも受理されない場面:要件が欠けている・はっきりしない

政府の説明に沿えば、受理されない理由になるのは、通達が挙げる要件のどこかを欠くとき、または確認できないときです。どの要件が問題になったかで、見直す場所も、見直しで解決できるかどうかも変わります。ここで使う用語を先に確かめておきます。親告罪は、告訴がなければ検察官が起訴できない罪です。告訴期間は、親告罪について告訴ができる期間で、刑訴法235条により犯人を知った日から6か月です。公訴時効は、罪ごとに決まった期間が過ぎると起訴できなくなる制度です。

受理されない場面を要件ごとに整理すると

要件受理されない場面の例条文・資料
告訴権告訴状を出した人が、被害者本人でも法定代理人などの告訴権者でもない。代理人なのに委任状がない刑訴法230条・231条、犯罪捜査規範66条
告訴期間親告罪で、犯人を知った日から6か月を過ぎている刑訴法235条
公訴時効その罪の公訴時効がすでに完成している刑訴法250条。さいたま地裁平成23年5月18日判決の事案
犯罪の成否書かれた事実が、どの罪にも当たらないことが明らか通達第1、平成28年の法務省刑事局長答弁(検察の話)
処罰意思犯人の処罰を求めるのか、相談や被害の申告にとどめたいのかがはっきりしない通達第1、京都府警察の例規第4の8
犯罪事実の特定いつ、どこで、誰が、何をしたのかが特定されていない昭和62年の答弁書、警視庁通達第3の2(2)イ
取消し後の再告訴一度取り消した告訴を、同じ人がもう一度出している刑訴法237条2項

告訴期間の数え方は告訴期間6か月と親告罪の一覧、罪名ごとの時効の年数は公訴時効の早見表で扱っています。

どこからが「明らかに要件を欠く」なのかを考える手がかりが、平成28年10月25日の参議院法務委員会での法務省刑事局長の答弁です。内容自体から何ら犯罪を構成しないことが明白な場合、公訴時効の完成が明白な場合、趣旨が全く不明で補正が困難な場合などを例に挙げ、明らかに要件を欠くときは適法な告訴とは言えず、受理しないことも許されると述べました。ただし、これは検察官が告訴を受け付ける場面についての答弁で、警察の取扱いを直接述べたものではありません。

挙げられた例は、いずれも「明白」「全く不明」といった、要件を欠くことがはっきりしている場合です。警視庁の通達(平成15年4月1日 通達甲(副監.刑.2.資)第15号)も、犯罪が成立しないことが明らかな告訴や犯罪事実を示さない告訴は無効であるとして、犯罪事実が特定されているかを確かめるよう定めています。

表の要件には、告訴状の書き方や添える書面で補えるもの(事実の特定、処罰意思の表示、告訴権を示す書面)と、書き方では補えないもの(告訴期間の経過、公訴時効の完成、再告訴の禁止)があります。断られた理由がどちらに当たるかが、書き直すか別の手段を考えるかの分かれ目です。

「預かり」「相談扱い」は受理ではない

告訴状を窓口に置いてきたことと、告訴が受理されたことは同じではありません。受理されると、刑訴法242条により、司法警察員は速やかに関係する書類と証拠物を検察官に送付しなければならなくなります。「預かり」「相談扱い」は、告訴状や資料を手元に置いて検討している状態や、相談として記録している状態を指して窓口で使われる言葉で、このページで引いた刑訴法241条・242条や犯罪捜査規範63条〜67条の条文には、こうした段階は出てきません。

刑事訴訟法 第二百四十二条

司法警察員は、告訴又は告発を受けたときは、速やかにこれに関する書類及び証拠物を検察官に送付しなければならない。

要旨告訴を受けた警察は、捜査の結果を待たずに、速やかに関係書類と証拠物を検察官に送る義務を負います。受理された後の流れはこの義務から始まります。

都府県警察の例規には、この点をはっきり書いたものがあります。京都府警察の「告訴、告発事件の取扱要領について(例規)」(最終改正令和6年3月8日 例規務第3号)は、受理・不受理の手続を明確にし、仮受理や告訴状の預り保管などは行わないと定めています。警視庁の平成15年の通達は、相談の際に資料を預かるときは、後の誤解や紛議を防ぐため受理ではないことを明確に説明して了解を得ること、告訴状の原本は預からないことを定めています。

富山県警察の要綱(平成25年5月)は、受理の判断に捜査が必要なときは「告訴・告発状写し提出書」で告訴状の写しを受け取り、その際は正式な受理ではないことを十分に説明する、としています。相談の段階でも記録は残ります。埼玉県警察の「知能犯に関する被害相談取扱要領」(平成21年7月7日 捜二第1406号)は、知能犯関係の告訴・告発の相談を受けたときは、所定の相談受理報告書で刑事部長まで報告すると定めています。

ここに挙げたのは本文を読めた例規の、確認した版の内容で、他の道府県も同じとは言えません。各県の扱いの比較は県警ごとの告訴取扱要綱のちがいにまとめています。少なくとも、「預かります」と言われたときは、それが受理なのか、受理でないなら何のために預かり、いつごろ判断する見込みなのかを、その場で確かめておくことが大切です。

窓口で言われる言葉と、確かめたいこと

一般の人が質問を投稿するQ&Aサイトに寄せられた質問の言い回しを要約した二次的な資料(弁護士ドットコムの質問42件を読んで型を整理したもの)によると、「民事ですね」「期間が過ぎている」「預かります」「事件性がない」と言われた、という形の質問が挙がっているとされています。言葉だけでは、警察がどの要件を問題にしているのかは分かりません。

次の表は、それぞれの言葉の背景として考えられる要件と、確かめたい点を、通達・例規から整理したものです。「考えられる背景」は可能性を並べたもので、担当者の意図を言い当てるものではありません。

窓口の言葉ごとの、考えられる背景と確かめたい点

言われた言葉考えられる背景(可能性)確かめたい点と根拠
「民事の問題です」書かれた事実が契約違反や貸し借りにとどまり、犯罪構成要件に当たらないと見ているどの罪のどの要件に当たらないのか。警視庁通達は要件の整った告訴を民事絡みを理由に受理回避しないと定める
「期間が過ぎている」「時効です」親告罪の告訴期間か、公訴時効のどちらかどちらの期限か、何罪で数えたか、起算日をいつとしたか。警視庁通達は適用する罪名で時効期間が異なることに注意するよう定める
「預かります」「検討します」受理の前の検討、または相談としての扱い受理なのかどうか、判断の見込み。京都府警察は預り保管をしない、警視庁は原本を預からないと定める
「事件性がない」犯罪事実が特定されていない、または犯罪の成立が明らかでないと見ているどの事実が足りないのか。書面の趣旨が不明なときは補充の書面を出す仕組みがある(犯罪捜査規範65条)
「証拠が足りない」受理の判断のために資料を求めている何の資料か。通達の要件の列挙に証拠の量は挙がっていない。警視庁通達は罪を犯したことを証明する資料等の提出を求めるとする
「よその署へ」他の警察署が捜査したほうがよいとの判断犯罪捜査規範63条は管轄区域内の事件かどうかを問わず受理すると定める。京都府警察・警視庁の例規も管轄を問わず受理するとする(警視庁は、他の所属で扱うのが妥当な合理的理由があるときは調整して引き継ぎ、引継先を示すとする)

表の言葉は、二次的な要約資料(確度B)に挙がった型を元にしています。根拠の欄は通達・例規の本文で確認できた範囲です。

「民事」という言葉の背景には、警察法2条があります。同条2項は、警察の活動は責務の範囲に厳格に限られ、個人の権利・自由への干渉にわたるなど権限を濫用してはならないと定めています。ただ、条文に「民事不介入」という語はなく、同じ出来事が詐欺などの罪に当たるなら捜査の対象になる、というのが条文の趣旨からの読みです。

例規にもこの点の定めがあります。京都府警察の例規は、犯罪が成立しない理由を説明する場面で、民事問題として簡単に片付けている、または責任を回避しているような印象を与えないよう注意するとしています。岐阜県警察の要領(平成25年版)は、事実は特定されているが民事・刑事の別がはっきりしない場合、疎明資料の提出と告訴状の修正を求め、刑事事件だと明らかになった段階で受理するのを原則とし、それでも明らかにならないときは受理して以後の捜査で明らかにする、と定めています。詐欺と金銭トラブルの線引きは詐欺・金銭トラブルの告訴と民事不介入で扱っています。

不受理と言われたら確かめること:理由と「どの要件か」

不受理を伝える方法や理由の示し方は、令和6年3月26日の通達には定められていません。一方で、例規で説明の仕方を定めている県があります。京都府警察の例規は、犯罪が成立しないことが明白な場合には、成立しない理由や法的根拠などを納得のいくように説明するとし、納得が得られず紛議が予想される場合などは、受理したうえで書類を送付して処理を明確にすることも考慮する、としています。

富山県警察の要綱(平成25年5月)は、受理できないときは理由を含めて丁寧に説明して理解を求め、他の法的救済方法を教示するなど、できる限り相談者の問題解決に努めるとしています。検察官が受け付ける場面については、平成28年の法務省刑事局長答弁が、形式的な不備には補正や再検討を求め、どの部分が不備かは必要に応じて説明していると述べています。

確認できていないこと

不受理を告げる方法・理由の示し方・判断までの期限を、全国共通で定めた法令や公開の通達は、調べた範囲では確認できませんでした。県ごとの例規にある定めは、その県の確認した版の内容です。

窓口で受理されなかったときの確かめ方

  1. 「受理しない」という結論なのか、検討中・預かりなのかは、はっきりしていますか。

    はい次の問いへ進みます。

    いいえ受理なのかどうか、受理でないなら判断の見込みを尋ねます(京都府警察・警視庁の例規の定めを参照)。

  2. 理由として、どの要件(告訴権・告訴期間・公訴時効・犯罪の成否・処罰意思・事実の特定)が挙げられましたか。

    はいその要件が、告訴状の書き方や添える書面で補えるものかを見ます。

    いいえどの要件かを尋ね、日時・対応した部署・言われた内容を書き留めておきます。

  3. 挙げられた要件は、書き方で補えるもの(事実の特定・処罰意思・告訴権を示す書面)ですか。

    はい次の章の点を見直して出し直します。

    いいえ告訴期間の経過や公訴時効の完成が理由なら、不受理のあと使える手段の使い分けで他の手段を確かめます。

このフローは、通達・例規・答弁から当事務所が整理した確かめの順序で、受理の結果を左右するものではありません。

では、不受理そのものを裁判で争えるのか。この点を正面から扱った公開の裁判例として、次の判決があります。

さいたま地方裁判所 平成23年5月18日判決

平成23年(行ウ)第8号裁判所サイトの詳細ページと判決PDF(画像の機械読取)で確認。第一審判決で、控訴の有無は未確認

事案
成年後見人が、被後見人を被害者とする準詐欺罪の告訴状を警察署に持参したところ、公訴時効の経過を理由に受理されなかったため、その「不受理処分」の取消しを求めて行政訴訟を起こした事案です。
判断の要点
告訴による捜査や訴追は公益のために行われるもので、告訴人が受ける利益は事実上の利益にすぎないとして、告訴状を受理しない行為は取消訴訟の対象となる行政処分に当たらないと判断し、訴えを却下しました。時効を理由とする不受理が正しかったかどうかには踏み込んでいません。

確認した場所:裁判所 裁判例検索

この判決は、不受理を行政訴訟で取り消してもらう道を、少なくともこの事案では認めませんでした。不受理の当否を後から争う手段が限られる以上、窓口の段階で理由を確かめ、補える点を補うことが、被害者の側でまず取り組めることになります。

受理・不受理の件数:国会答弁の読み違いに注意

警察が受理した告訴の件数は、令和期には定期的な公表が見当たりません(調べた範囲は、警察庁の令和7年の刑法犯に関する統計資料の表の一覧など)。そのため、不受理が何件あるか、どの程度の割合で受理されているか、といった数字は、調べた範囲の公式の資料からは示せません。統計の扱い方と検察統計の読み方は検察統計でみる告訴事件の起訴率と期間で説明しています。

国会では受理・不受理の件数をめぐる答弁が何度かありますが、話の対象を取り違えやすいので整理しておきます。

受理・不受理の件数をめぐる国会答弁(対象を取り違えないために)

日付・委員会答弁した人何についての話かこの答弁から言えないこと
平成28年10月25日 参議院法務委員会法務省刑事局長検察当局が最終的に受理しないこととした件数は把握していない。要件を欠くとして受理しない場合に、申立てで受理を義務付ける制度はない警察の告訴の不受理についての話ではない
平成29年4月6日 参議院法務委員会警察庁長官官房審議官(政府参考人)各都道府県警察の知能犯捜査部門が受理した告訴・告発の件数(平成24〜28年)警察全体の受理件数ではない。令和期の数字は含まれない
令和元年11月25日 参議院行政監視委員会警察庁長官官房審議官(政府参考人)被害申告があったもののうち不受理となった件数は、警察では把握していない告訴の不受理件数に限った話ではない(被害申告=被害届の話)

出典:国会会議録検索システム(各会議録の発言本文)。答弁は発言時点の政府の説明で、法令そのものではありません。

統計知能犯捜査部門が受理した告訴・告発の件数(警察庁の国会答弁)

年受理件数
2012年(平成24年)1,958件
2013年(平成25年)2,002件
2014年(平成26年)1,838件
2015年(平成27年)1,809件
2016年(平成28年)1,926件

出典:国会会議録 第193回国会 参議院法務委員会第4号(平成29年4月6日)発言6

各都道府県警察の知能犯捜査部門が受理した分だけの件数で、警察全体の告訴の受理件数ではありません。検察統計の「人員」とは対象も単位も違うため、比べることはできません。答弁は「おおむね横ばい」と説明しています。

書き直して出し直すときに見直す点

断られた理由が書き方で補える要件にあるなら、書き直して出し直すことが考えられます。昭和62年の答弁書も平成28年の法務省刑事局長答弁も、要件を満たさない告訴状には補正や再検討を求めることがあると述べています。書面で出した告訴についても、補う仕組みが規範に置かれています。

犯罪捜査規範 第六十五条(書面による告訴および告発)

書面による告訴または告発を受けた場合においても、その趣旨が不明であるときまたは本人の意思に適合しないと認められるときは、本人から補充の書面を差し出させ、またはその供述を求めて参考人供述調書(補充調書)を作成しなければならない。

要旨告訴状の趣旨が分からないときや、本人の意思と合っていないと見られるときは、警察は本人に補充の書面を出してもらうか、話を聴いて補充の調書を作ります。書面で出せば終わり、ではありません。

書き直すときは、窓口で挙げられた要件に対応する部分を中心に、次の点を見直します。

  • 処罰意思:被告訴人の処罰を求めることを、はっきり書いているか。「事情を知ってほしい」「相談したい」だけで終わっていないか。
  • 犯罪事実の特定:いつ、どこで、誰が、どのような行為をし、どんな被害が生じたのかを、順を追ってたどれるか。罪名だけが書かれ、それに当たる事実が書かれていない状態になっていないか。
  • 告訴権:告訴人が被害者本人か。代理人や被害者以外の告訴権者が出すなら、委任状や資格を証する書面(犯罪捜査規範66条)をそろえているか。
  • 期限:親告罪なら犯人を知った日と6か月の関係を、それ以外なら罪名ごとの公訴時効を確かめたか。
  • 誇張がないか:事実を実際より強く書いていないか(次の67条)。
犯罪捜査規範 第六十七条(告訴事件および告発事件の捜査)

告訴または告発があつた事件については、特にすみやかに捜査を行うように努めるとともに、次に掲げる事項に注意しなければならない。

(1) ぶ告、中傷を目的とする虚偽または著しい誇張によるものでないかどうか。

(2) 当該事件の犯罪事実以外の犯罪がないかどうか。

要旨警察は告訴事件を特に速やかに捜査するよう努め、その際、人を陥れたり中傷したりする目的の嘘や大きな誇張でないか、ほかの犯罪がないかに注意します。書き直しで事実を強めて書き足すことは、この確認の対象になります。

書面を出し直すほかに、窓口で口頭により告訴する方法もあります。刑訴法241条2項と犯罪捜査規範64条により、口頭の告訴を受けた警察は告訴調書を作ります。告訴状の構成や事実の書き方、告訴調書との違いは告訴状の書き方と相手不明の場合の告訴で、証拠の整理や提出先・郵送の扱いは証拠の整理と提出先・郵送・オンライン提出で説明しています。

受理されなかったあとの手段(概要)

書き直しても受理されない場合や、書き方では補えない理由で断られた場合の手段として、提出先を検察官にすること(刑訴法241条は検察官も提出先に挙げています)、都道府県公安委員会に警察職員の職務執行について文書で苦情を申し出ること(警察法79条)があります。ただし、平成28年の法務省刑事局長答弁は、検察当局が受理しない場合に受理を義務付ける制度はないとしており、苦情の申出も、条文に定められているのは公安委員会が苦情を誠実に処理して結果を文書で通知する仕組みで、受理を命じる定めはありません。国家賠償については、最高裁第三小法廷平成2年2月20日判決(平成1年(オ)第825号)が、被害者や告訴人は捜査の不適正や不起訴処分の違法を理由に国家賠償を請求できないとしています。それぞれの手段の比較と選び方は不受理のあと使える手段の使い分けで扱っています。

まとめ

  • 告訴の受理義務は犯罪捜査規範63条にあります(61条は被害届)。政府は、告訴の要件を満たさないものでない限り受理すべきと答弁しています。
  • 警察庁の令和6年3月26日の通達は、告訴権・告訴期間・犯罪構成要件・処罰意思等を確かめ、要件の整った告訴は速やかに受理するよう求めています。「3か月」の目安は知能犯罪についての別通達です。
  • 「預かり」「相談扱い」は受理ではありません。京都府警察は仮受理・預り保管をしない、警視庁は原本を預からないと定めるなど、扱いは県ごとに違います。
  • 断られたら、どの要件が理由かを確かめます。事実の特定・処罰意思・告訴権の書面は書き直しで補えますが、期間の経過や時効の完成は補えません。
  • 不受理を行政訴訟で取り消す道は、さいたま地裁の判決(第一審)で認められませんでした。国会答弁の件数は、検察・知能犯捜査部門・被害届と対象が違うので取り違えないようにします。

このページの出典

  1. 法令刑事訴訟法 第230条・第231条・第235条・第237条・第241条・第242条・第250条(e-Gov法令検索)確認日 2026-10-24
  2. 法令犯罪捜査規範 第61条・第63条・第64条・第65条・第66条・第67条(e-Gov法令検索)確認日 2026-10-24
  3. 法令警察法 第2条・第79条(e-Gov法令検索)確認日 2026-10-24
  4. 官公庁警察庁通達「告訴・告発への適切な対応及び指導・管理の徹底について」(令和6年3月26日 警察庁丙刑企発第39号ほか)第1〜第3確認日 2026-10-24
  5. 官公庁警察庁通達「知能犯罪に関する告訴・告発の適正かつ合理的な取扱いの推進について」(令和6年1月5日 警察庁丁捜二発第2号)概要確認日 2026-10-24
  6. 官公庁警察庁通達「告訴・告発の受理体制及び指導・管理の強化について」(平成31年3月27日 警察庁丙刑企発第41号ほか)前文確認日 2026-10-24
  7. 官公庁長野県情報公開審査会 答申(審査案件第31号)第2の2(平成12年4月14日付け警察庁刑事局長通達の記載)確認日 2026-10-24
  8. 官公庁内閣参質201第28号 答弁書(令和2年2月14日)一及び二について確認日 2026-10-24
  9. 官公庁内閣衆質108第21号 答弁書(昭和62年3月31日)三・五について確認日 2026-10-24
  10. 官公庁国会会議録 第192回国会 参議院法務委員会第3号(平成28年10月25日)発言154〜164確認日 2026-10-24
  11. 官公庁国会会議録 第193回国会 参議院法務委員会第4号(平成29年4月6日)発言6確認日 2026-10-24
  12. 官公庁国会会議録 第200回国会 参議院行政監視委員会第1号(令和元年11月25日)発言86確認日 2026-10-24
  13. 官公庁国会会議録 第217回国会 参議院内閣委員会第15号(令和7年5月20日)発言54確認日 2026-10-24
  14. 官公庁警視庁 通達甲(副監.刑.2.資)第15号「告訴及び告発の取扱いについて」(平成15年4月1日)第3の1・2・4確認日 2026-10-24
  15. 官公庁京都府警察「告訴、告発事件の取扱要領について(例規)」(最終改正令和6年3月8日 例規務第3号)第4の2・3・4・8・9・10確認日 2026-10-24
  16. 官公庁岐阜県警察「告訴・告発事件取扱要領の制定について(通達)」(平成25年3月19日 刑総第151号ほか)第6の2確認日 2026-10-24
  17. 官公庁富山県警察「告訴・告発取扱要綱の制定について(例規通達)」(平成25年5月)第4の4確認日 2026-10-24
  18. 官公庁埼玉県警察「知能犯に関する被害相談取扱要領」(平成21年7月7日 捜二第1406号)第4の1(2)イ確認日 2026-10-24
  19. 官公庁鹿児島県警察「知能犯罪に関する告訴・告発の適正かつ合理的な取扱いの推進について」(令和6年6月7日 鹿捜二第54号ほか)概要確認日 2026-10-24
  20. 官公庁警察庁 平成26年版犯罪被害者白書 第1部 第5節(都道府県警察に対する被害・告訴の届出)確認日 2026-10-24
  21. 判例さいたま地裁 平成23年5月18日判決(平成23年(行ウ)第8号 告訴状不受理処分取消請求事件)確認日 2026-10-24
  22. 判例最高裁第三小法廷 平成2年2月20日判決(平成1年(オ)第825号)判示事項・裁判要旨確認日 2026-10-24
  23. その他弁護士ドットコム みんなの法律相談(検索一覧。質問の言い回しの型の整理に使用)確認日 2026-10-24

よくあるご質問

告訴状を郵送したら「署に来てほしい」と言われました。不受理ということですか。

来署を求められたことは、それだけで不受理の結論を意味するものではありません。警視庁の通達(平成15年4月1日)は、郵送された告訴状で告訴権・犯罪事実・処罰意思などの確認が難しいときは、速やかに来署を求めるなどして資料の提出や説明を求めると定めています。郵送の扱いは県によって違い、「証拠の整理と提出先・郵送・オンライン提出」のページで扱っています。

「告訴ではなく被害届にしませんか」と言われました。どちらでも同じですか。

同じではありません。被害届の受理は犯罪捜査規範61条、告訴の受理は63条と別の条文で、告訴は犯人の処罰を求める意思表示を含みます。親告罪では告訴がなければ検察官は起訴できません(刑事訴訟法235条の告訴期間にも注意)。処罰を求める意思があるなら、その意思を伝えたうえで判断します。違いの詳細は「告訴・告発・被害届の違いと告訴できる人」のページにあります。

事件が起きた場所や自宅の管轄ではない警察署に出してもよいですか。

出すこと自体はできます。犯罪捜査規範63条1項は、管轄区域内の事件かどうかを問わず受理しなければならないと定め、京都府警察(最終改正令和6年3月8日)や警視庁(平成15年)の例規も管轄を問わず受け付けるとしています(警視庁の通達は、他の所属で扱うのが妥当な合理的理由があるときは調整して引き継ぎ、引継先を示すとしています)。ただ、警察庁の平成26年版犯罪被害者白書は、被害に遭った場所を管轄する警察署に届け出ると事後の手続が円滑に進むと説明しています。

受理するかどうかの判断は、どのくらいで出ますか。

告訴一般について判断までの期限を定めた法令や全国共通の公開通達は、調べた範囲では確認できていません。警察庁の令和6年3月26日の通達は「可能な限り迅速に」とするだけで、日数は書かれていません。「最初の相談日から3か月以内」は、知能犯罪の告訴・告発についての令和6年1月5日の別通達の努力目標です。県ごとの定めは「県警ごとの告訴取扱要綱のちがい」のページで比べています。

不受理にされたことを、裁判で争うことはできますか。

不受理の取消しを求める行政訴訟は、さいたま地裁平成23年5月18日判決(平成23年(行ウ)第8号)で、告訴状を受理しない行為は行政処分に当たらないとして却下されています。国家賠償についても、最高裁平成2年2月20日判決が、捜査の不適正や不起訴処分の違法を理由とする請求はできないとしています。検察官への告訴や公安委員会への苦情申出との比較は「不受理のあと使える手段の使い分け」のページで扱っています。

あわせて読みたいページ

本ページは一般的な情報提供です。告訴・告発が受理されるか、どの罪が成立するか、起訴されるかは、事実関係と証拠をもとに警察・検察が判断することで、このページの説明で結論が決まるものではありません。条文は e-Gov法令検索(法令API)で2026年10月24日時点のものを、統計は政府統計の総合窓口(e-Stat)ほか各府省の公表資料を確認しています。参考: e-Gov法令検索 / e-Stat / 警察庁 / 検察庁 / 裁判所 / 法務省

ご依頼の前に:対応の内容

告訴状・告発状の作成料金は 1通30,000円(税込)です。サービスの内容を見る

詳しい内容を見る

告訴状・告発状の作成のご相談は、公式LINEで受け付けています。

公式LINEで無料相談する
アトラス行政書士法人 公式LINEの友だち追加QRコード
  1. 公式LINEを友だち追加
  2. 「告訴状・告発状のサイトを見た」とメッセージを送信
  3. ご相談内容を確認し、LINEでご返信します(24時間・土日祝対応)

相談無料です。料金が発生するのは、お申込みいただいた書類の作成と、お手元の書類の修正・加筆だけです。

LINEで友だち追加して無料相談する

ご依頼・納品の流れを見る