告訴期間6か月と親告罪の一覧

告訴(被害者などが警察・検察官に犯罪を申告して処罰を求めること)に6か月の期限があるのは親告罪(告訴がなければ起訴できない罪)だけです。どの罪が親告罪か、6か月をいつからどう数えるかを、条文と判例の原文から整理します。

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このページの要点

  • 告訴期間(犯人を知った日から6か月)は親告罪だけの制限です(刑訴法235条)。詐欺・傷害・脅迫・窃盗などの非親告罪(告訴がなくても起訴できる罪)は、公訴時効(検察官が起訴できる期間)が完成するまで告訴できます。
  • 刑法の親告罪は名誉毀損・侮辱、器物損壊等、過失傷害、信書開封・秘密漏示、未成年者略取・誘拐などです。建造物等損壊やストーカー行為罪は親告罪ではありません。
  • 「犯人を知った」は犯人を特定し得る程度の認識とする最高裁決定と、犯罪の継続中は起算しないとする高裁判決があります。起算点は事案ごとで、判例で扱いが分かれます。
  • 親族間の窃盗・詐欺・横領などは、配偶者・直系血族・同居の親族なら刑の免除、それ以外の親族なら親告罪です。親告罪の告訴の効力は共犯者全員に及びます。

結論:6か月の期限があるのは親告罪だけで、数え始めは「犯人を知った日」です

結論

  • 告訴期間(犯人を知った日から6か月)の制限を受けるのは親告罪だけです(刑訴法235条)。詐欺・傷害・脅迫・窃盗などの非親告罪には告訴期間がなく、公訴時効が完成するまで告訴できます。
  • 刑法の親告罪は、名誉毀損・侮辱、器物損壊・私用文書等毀棄・信書隠匿、過失傷害、信書開封・秘密漏示、未成年者略取・誘拐です。建造物等損壊やストーカー行為罪は親告罪ではありません。
  • 「犯人を知った」とは、少なくとも犯人が誰かを特定し得る程度に認識することとする最高裁の決定があります。犯罪が続いている間は起算日にならないとした高裁判決もありますが、起算点は事案ごとの判断で、判例でも扱いが分かれる論点です。
  • 窃盗・詐欺・横領などは、配偶者・直系血族・同居の親族の間なら刑が免除され、それ以外の親族の間なら親告罪になります(刑法244条・251条・255条)。

告訴とは、犯罪の被害を受けた人などが、警察(司法警察員)や検察官に犯罪の事実を申し出て、犯人の処罰を求める意思を示すことです。告訴をする人を告訴人、処罰を求められる相手を被告訴人(捜査の段階では被疑者)と呼びます。

告訴の期限は、被害がどの罪に当たりうるか、その罪が親告罪か、親告罪なら「いつ犯人を知ったか」の順に確かめます。このページでは、その順に条文と判例の原文に沿って説明します。

誰が告訴できるか(被害者本人・法定代理人・遺族など)の詳しい説明は、告訴・告発・被害届の違いと告訴できる人のページで扱っています。

親告罪とは:告訴がなければ起訴できない罪

親告罪とは、法律に「告訴がなければ公訴を提起することができない」と定められた罪のことです。公訴の提起とは、検察官が裁判所に起訴することをいいます。親告罪では、被害者などの告訴がない限り、検察官は起訴できません。これに対し、そのような定めがない罪を非親告罪と呼びます。非親告罪は告訴がなくても起訴できますが、告訴をすることは可能です。

親告罪かどうかは罪の名前や重さで決まるのではなく、それぞれの罪の条文(またはその罪を含む章の罪をまとめて定めた条文)に告訴を要件とする規定があるかどうかで決まります。たとえば刑法232条1項は、名誉に対する罪の章について「この章の罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。」と定めています。

そして、親告罪の告訴にだけ期間の制限を置いているのが、刑事訴訟法(以下「刑訴法」)235条です。

刑事訴訟法 第二百三十五条

親告罪の告訴は、犯人を知つた日から六箇月を経過したときは、これをすることができない。ただし、刑法第二百三十二条第二項の規定により外国の代表者が行う告訴及び日本国に派遣された外国の使節に対する同法第二百三十条又は第二百三十一条の罪につきその使節が行う告訴については、この限りでない。

要旨親告罪の告訴は、犯人を知った日から6か月を過ぎるとできなくなります。ただし書は、外国の君主・大統領が被害者の場合にその国の代表者が行う告訴などの例外で、通常の被害者には関係しません。条文が対象を「親告罪の告訴」に限っているため、非親告罪の告訴にはこの期間の制限がありません。

警察が告訴を受けるときの扱いについて、警察庁の通達(令和6年3月26日 警察庁丙刑企発第39号ほか)は、告訴の内容を聴き取り、告訴権の有無、告訴期間、犯罪構成要件の充足の有無、処罰意思などの要件を確認したうえで受理・不受理を判断するよう求めています。

親告罪の一覧表:刑法の罪と、似ているが親告罪ではない罪

刑法で告訴を要件とする規定は、135条(秘密を侵す罪の章)、209条2項(過失傷害)、229条(未成年者略取・誘拐など)、232条1項(名誉に対する罪の章)、244条2項(親族間の窃盗など)、264条(器物損壊など)です。下の表は、各罪の条文をもとに、親告罪と、被害の場面が近いのに親告罪ではない罪を並べたものです。

刑法の主な罪:親告罪か、告訴期間6か月の制限があるか

罪名条親告罪か(根拠)告訴期間6か月
名誉毀損刑法230条1項親告罪(刑法232条1項)あり
侮辱刑法231条親告罪(刑法232条1項)あり
器物損壊等刑法261条親告罪(刑法264条)あり
私用文書等毀棄刑法259条親告罪(刑法264条)あり
信書隠匿刑法263条親告罪(刑法264条)あり
過失傷害刑法209条1項親告罪(刑法209条2項)あり
信書開封・秘密漏示刑法133条・134条親告罪(刑法135条)あり
未成年者略取・誘拐刑法224条親告罪(刑法229条)あり
建造物等損壊刑法260条前段非親告罪(264条の対象外)なし(公訴時効まで)
過失致死/業務上過失致死傷・重過失致死傷刑法210条/211条非親告罪なし
傷害/暴行刑法204条/208条非親告罪なし
脅迫/強要刑法222条/223条1項非親告罪なし
信用毀損・偽計業務妨害/威力業務妨害刑法233条/234条非親告罪なし
窃盗/詐欺/恐喝/横領・業務上横領/背任刑法235条/246条1項/249条1項/252条1項・253条/247条非親告罪(親族間は刑法244条・251条・255条の特例)なし(親族間の特例で親告罪になる場合はあり)
強盗刑法236条1項非親告罪(244条の特例なし)なし
不同意わいせつ/不同意性交等刑法176条/177条非親告罪なし
ストーカー行為ストーカー規制法18条非親告罪(条文に告訴の定めなし)なし

各罪の条文(e-Gov)と、刑法135条・209条2項・229条・232条・244条・264条の原文による。「非親告罪」は、その罪の条文に告訴を要件とする規定がないことを指します。罪数・共犯・改正前の行為など個別の事情は表の対象外です。

同じ「物を壊された」被害でも、器物損壊(刑法261条)は親告罪、建造物等損壊(260条)は親告罪ではありません。過失によるけがも、過失傷害(209条)は親告罪ですが、過失致死(210条)や業務上・重大な過失による致死傷(211条)は親告罪ではありません。

刑法 第二百六十四条(親告罪)

第二百五十九条、第二百六十一条及び前条の罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。

要旨私用文書等毀棄(259条)、器物損壊等(261条)、信書隠匿(263条)が親告罪です。建造物等損壊(260条)はこの条に挙げられていません。

性犯罪については、強姦罪などの告訴要件を廃止した刑法改正(平成29年法律第72号)が2017年7月13日に施行され、現行の不同意わいせつ(176条)・不同意性交等(177条)にも告訴を要件とする規定はありません。そのため、これらの罪に告訴期間はありません。性犯罪の被害は専門の相談窓口の領域で、このサイトでは告訴状の作成の対象として扱っていません。

ストーカー行為罪(ストーカー行為等の規制等に関する法律(以下「ストーカー規制法」)18条)も、現行の条文に告訴の定めがなく、親告罪ではありません。脅迫やストーカーの被害で告訴する意味は、脅迫・恐喝・ストーカーの告訴のページで説明しています。名誉毀損・侮辱の要件は名誉毀損・侮辱罪で告訴するには、器物損壊の要件は傷害・器物損壊・窃盗の告訴のページで扱っています。

刑法以外の法律の親告罪:著作権は親告罪、商標・特許の侵害は親告罪ではない

刑法以外の法律にも親告罪があります。被害者が事業者や創作者である場面で問題になりやすいのは、知的財産の侵害です。ただ、法律ごとに扱いが違い、同じ「権利侵害」でも親告罪かどうかが分かれます。

著作権法は、著作権等の侵害(119条1項〜3項)などを親告罪としています(123条1項)。ただし、対価を得る目的などで有償の著作物を原作のまま複製して譲渡したり公衆送信したりする一定の侵害は、権利者の利益が不当に害される場合に限り、告訴がなくても起訴できるとされています(同条2項)。一方、商標権・特許権・意匠権の侵害罪そのものは親告罪ではなく、親告罪とされているのは裁判手続で出される秘密保持命令に違反する罪だけです。

刑法以外の主な罪:親告罪か

罪名条親告罪か(根拠)
著作権・出版権・著作隣接権の侵害著作権法119条1項親告罪(著作権法123条1項)。一定の悪質な海賊版の頒布等は告訴不要(同条2項)
著作者人格権の侵害など著作権法119条2項親告罪(著作権法123条1項)
商標権・専用使用権の侵害商標法78条非親告罪(秘密保持命令違反の罪だけが親告罪)
特許権・専用実施権の侵害特許法196条非親告罪(秘密保持命令違反の200条の3だけが親告罪)
意匠権・専用実施権の侵害意匠法69条非親告罪(秘密保持命令違反の73条の2だけが親告罪)
営業秘密の不正取得・使用・開示等不正競争防止法21条1項・2項非親告罪(秘密保持命令違反(21条3項6号)だけが親告罪(同条7項))
私事性的画像記録の提供私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律3条1項親告罪(同条4項)
不正アクセス行為不正アクセス行為の禁止等に関する法律11条非親告罪

各法の罰則の条文(e-Gov)と、著作権法123条・特許法200条の3・意匠法73条の2などの原文による。各法の親告罪の範囲は項・号ごとに決まっているため、実際の事案では該当する条文を個別に確かめる必要があります。

確認できていないこと

このページの親告罪の範囲は、法令の本文にある「告訴がなければ公訴を提起することができない」という文言で調べたものです。別の言い回しの規定や、罰則を置いた条例に親告罪があるかどうかは、調べた範囲では確認できていません。

6か月はいつから数えるか:「犯人を知った日」の意味(最高裁の決定)

刑訴法235条は、6か月の起算点を「犯人を知つた日」としています。被害に遭った日でも、警察に相談した日でもありません。この「犯人を知った」の意味について、最高裁は次のように判断しています。

最高裁第三小法廷 昭和39年11月10日決定

昭和37年(あ)第1976号・刑集18巻9号547頁裁判所サイトの判示事項・裁判要旨で確認(決定理由の全文は未確認)

事案
告訴期間の起算点となる「犯人を知つた」(当時の刑訴法235条1項)とは何を知ることを指すかが問題になった事件です。
判断の要点
「犯人を知った」とは犯人が誰であるかを知ることで、告訴をする人が犯人の住所や氏名などの詳しい情報まで知っている必要はないものの、少なくとも犯人が誰であるかを特定し得る程度に認識していることが必要だとしました。

確認した場所:裁判所 裁判例検索

この決定からは、氏名や住所が分からなくても犯人を特定し得る程度に分かっていれば「犯人を知った」に当たりうること、逆にその程度の認識がなければまだ「犯人を知った」とはいえないことが読み取れます。

ただし、どの時点で「特定し得る程度に認識した」と評価されるかは事案ごとの事実関係によります。匿名の投稿者について、どの段階で犯人を知ったことになるか(発信者情報の開示で氏名が分かった日か等)は、この決定から直接の答えは出ません。起算点の捉え方は判例で扱いが分かれる論点です。

相手の名前が分からないまま告訴するときの告訴状の書き方は、告訴状の書き方と相手不明の場合の告訴のページで扱っています。

確認できていないこと

犯人の同一性を認識した日と犯罪事実を知った日の関係、継続犯や包括一罪(繰り返しの行為をまとめて一つの罪とするもの)の起算点などについて、判例として確認できたのは上の決定(裁判要旨)と、次の章で紹介する高裁判決までです。それ以外の判例は調べた範囲では原文を確認できていないため、このページでは取り上げていません。

期間の数え方(刑訴法55条)と、告訴できる人が複数いる場合(刑訴法236条)

6か月の具体的な数え方は、刑訴法55条が定めています。日・月・年で数える期間は初日を数えず(1項)、月と年は暦に従って数えます(2項)。期間の末日が土曜日・日曜日・祝日・年末年始などに当たるときは、その日を期間に数えません(3項本文)。ただし、3項のただし書は「時効期間」を例外にしています。

刑事訴訟法 第五十五条

期間の計算については、時で計算するものは、即時からこれを起算し、日、月又は年で計算するものは、初日を算入しない。但し、時効期間の初日は、時間を論じないで一日としてこれを計算する。

2 月及び年は、暦に従つてこれを計算する。

3 期間の末日が日曜日、土曜日、国民の祝日に関する法律(昭和二十三年法律第百七十八号)に規定する休日、一月二日、一月三日又は十二月二十九日から十二月三十一日までの日に当たるときは、これを期間に算入しない。ただし、時効期間については、この限りでない。

要旨告訴期間は月で数える期間なので、犯人を知った日(初日)は数えず、暦の月で6か月を数えます。末日が休日に当たるときに期間に算入しないという3項の扱いは、公訴時効などの時効期間には適用されません。

告訴期間は「時効期間」ではないため、条文の文言からは、末日が休日に当たれば3項本文によってその日は期間に算入されないと読めます。しかし、この点を判断した判例は調べた範囲では確認できていません。また、6か月目のどの日が最終日になるかを日付まで特定する計算方法は解釈に委ねられている部分があり、このページでは具体的な日付の例を示していません。期限の近い親告罪では、最終日の数え方に頼らず、余裕をもって告訴することが現実的です。

刑事訴訟法 第二百三十六条

告訴をすることができる者が数人ある場合には、一人の期間の徒過は、他の者に対しその効力を及ぼさない。

要旨告訴できる人が複数いるとき、そのうちの一人について6か月が過ぎても、ほかの人の告訴には影響しません。期間は告訴できる人ごとに数えることになります。

告訴できる人が複数になる典型は、被害者本人とその法定代理人です。刑訴法231条1項は「被害者の法定代理人は、独立して告訴をすることができる。」と定めており、未成年の被害者の親権者などがこれに当たります。また、被害者が亡くなったときは、配偶者・直系の親族・兄弟姉妹が告訴できます(同条2項。被害者の明示した意思に反することはできません)。

236条により、被害者本人の6か月が過ぎていても、法定代理人の期間が残っていれば、法定代理人は告訴できることになります。

ネット上の書き込みが残っている場合:犯罪が終わるまで6か月は進まないとした判決

インターネット上の名誉毀損では、書き込みが削除されずに残り続けることがあります。その間に犯人が分かった場合、告訴期間はいつから進むのかが争われたのが、次の高裁判決です。

大阪高裁 平成16年4月22日判決

平成15年(う)第1995号 名誉毀損被告事件裁判所サイトの裁判要旨と判決文PDFで確認(PDFは画像をOCRで読み取ったもの)

事案
2001年7月5日に名誉を傷つける記事がネット上で閲覧できる状態にされ、被害者は同年10月頃に犯人を知っていたのに、告訴は6か月を過ぎた2003年4月22日だったとして、弁護人が告訴は不適法だと主張しました。
判断の要点
名誉毀損罪は記事を閲覧できる状態にした時点で成立するものの、記事が削除されずに閲覧できるままであれば犯罪は終わっていないとし、犯罪が続いている間に犯人を知っても、その日は告訴期間の起算日にならないとしました。本件では、被告人が警察に書き込みを消したいと申し入れ、警察が管理者に削除を依頼した時点で犯罪が終わったと評価し、そこから6か月以内の告訴なので適法としました。

確認した場所:裁判所 裁判例検索

この判決の考え方では、「犯人を知った日」は犯罪が終わった後に犯人を知った日を指し、犯罪の継続中に犯人を知っても期間は進みません。書き込みが残っているネット上の名誉毀損では、犯人を知った時期だけでなく、犯罪がいつ終わったかも起算点に関わることになります。

ただし、この判決は「書き込みが残っている限り、いつまでも告訴できる」とまでは言っていません。犯罪の終わりは事案ごとに認定され、高裁の一つの判決なので、ほかの投稿の形態や長期間残っている場合にどこまで当てはまるかは分かりません。

犯人の特定(発信者情報の開示)と告訴の順序はネット中傷:発信者情報の開示と告訴の順序のページで扱っています。

自分の被害に6か月の期限があるかを確かめる順番

  1. 被害に当たりうる罪は、親告罪の一覧(刑法135条・209条2項・229条・232条・264条や、著作権法123条など)に入っていますか。

    はい告訴期間の制限があります。次の問いへ進みます。

    いいえ親族間の特例に当たらない限り、告訴期間の制限はなく、公訴時効が完成するまで告訴できます(4の問いへ)。

  2. 犯人が誰かを、少なくとも特定し得る程度に分かっていますか。

    はいその頃が「犯人を知った日」に当たりうる時期です(最高裁昭和39年11月10日決定)。次の問いへ進みます。

    いいえ決定の基準からは、まだ「犯人を知った」とはいえない可能性があります。ただし評価は事案ごとで、判例で扱いが分かれる論点です。

  3. 書き込みが残っているなど、犯罪がまだ続いていますか。

    はい犯罪の継続中に犯人を知っても起算日にならないとした高裁判決があります(大阪高裁平成16年4月22日判決)。終わりの時点の認定は事案ごとです。

    いいえ犯人を知った日の翌日から暦で6か月を数えます(刑訴法55条・235条)。余裕をもって告訴します。

  4. 窃盗・詐欺・横領などで、相手が親族ですか。

    はい配偶者・直系血族・同居の親族なら刑の免除、それ以外の親族なら親告罪として6か月の期限があります(刑法244条・251条・255条)。

    いいえ非親告罪として、公訴時効までが告訴できる期間です。

判定の枠組みを示したもので、個別の事案の結論を示すものではありません。

6か月を過ぎたら:非親告罪は公訴時効まで、親告罪は告訴できなくなる

非親告罪には告訴期間がないため、6か月を過ぎても告訴はできます。告訴ができなくなるのは、検察官が起訴できる期間である公訴時効が完成したときです。公訴時効の年数は罪ごとに違い、たとえば詐欺は7年、傷害は10年です。罪名別の年数と、告訴期間と公訴時効の違いの比較は、公訴時効の早見表のページでまとめています。

一方、親告罪で6か月が過ぎると、刑訴法235条により告訴はできなくなり、告訴がない以上、検察官は起訴できません。ただし、告訴できる人が複数いれば、ほかの人の期間は別に数えます(236条)。また、書き込みが残っているなど犯罪が続いている場合は、前の章の高裁判決のように、まだ期間が進んでいないと評価される余地があります。

なお、損害賠償の請求は民事の制度で、期限も別です。民法724条は、損害と加害者を知った時から3年、不法行為の時から20年で請求権が時効によって消滅すると定めています(人の生命・身体を害する場合の3年は5年。724条の2)。

統計警察経由の告訴で「親告罪の告訴・告発・請求の欠如・無効・取消し」を理由に不起訴となった人員

年司法警察員に告訴(総数)うち不起訴うち親告罪の告訴の欠如・無効・取消し総数に占める割合不起訴に占める割合
2016年5,5003,4455119.3%14.8%
2017年5,0873,3543797.5%11.3%
2018年4,6113,1962435.3%7.6%
2019年4,3382,9202305.3%7.9%
2020年4,6603,1692755.9%8.7%
2021年5,3973,8082504.6%6.6%
2022年5,2773,8442394.5%6.2%
2023年5,1783,5712394.6%6.7%
2024年5,8574,0492434.1%6.0%
2025年6,8914,8942814.1%5.7%

出典:検察統計調査(e-Stat)年次 表38「既済事由別 既済となった被疑事件の捜査の端緒別人員」(自動車による過失致死傷等及び道路交通法等違反被疑事件を除く)、端緒「司法警察員に告訴」・総数、2016〜2025年(2025年の表)

割合は当事務所の計算で、「総数に占める割合」=欠如・無効・取消しの人員÷総数、「不起訴に占める割合」=同人員÷不起訴の人員(例:2025年 281÷6,891=4.1%、281÷4,894=5.7%)。人員は検察で処理が済んだ被疑者の数で、警察が受理した件数ではありません。この区分は告訴期間を過ぎた場合のほか、告訴がない場合や告訴の取消し、告発・請求の欠如などをまとめたもので、期間を過ぎたことだけによる人数は表からは分かりません。罪名別の内訳もこの列にはありません。

相対的親告罪:親族の間の窃盗・詐欺・横領など(刑法244条)

窃盗・詐欺・横領などは、本来は親告罪ではありません。しかし、犯人と被害者が親族の関係にあるときは、刑法244条の特例によって扱いが変わります。このように、特定の関係があるときだけ親告罪になるものを相対的親告罪と呼びます。

刑法 第二百四十四条(親族間の犯罪に関する特例)

配偶者、直系血族又は同居の親族との間で第二百三十五条の罪、第二百三十五条の二の罪又はこれらの罪の未遂罪を犯した者は、その刑を免除する。

2 前項に規定する親族以外の親族との間で犯した同項に規定する罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。

3 前二項の規定は、親族でない共犯については、適用しない。

要旨配偶者・直系血族・同居の親族の間の窃盗・不動産侵奪は刑が免除されます。それ以外の親族の間なら親告罪となり、告訴が必要です。親族でない共犯にはこの特例は適用されません。

  • 対象の罪:244条自体が定めるのは窃盗(235条)・不動産侵奪(235条の2)とその未遂罪です。詐欺・恐喝・背任などは刑法251条が、横領・業務上横領・遺失物等横領は刑法255条が、244条を準用しています。強盗(236条)には特例がありません。
  • 配偶者・直系血族(親・子・祖父母・孫など)・同居の親族が相手のとき:刑が免除されます(1項)。
  • それ以外の親族(民法725条の6親等内の血族・配偶者・3親等内の姻族のうち、1項に当たらない人。たとえば別居している兄弟姉妹)が相手のとき:親告罪になり、告訴が必要で、犯人を知った日から6か月の告訴期間があります(2項、刑訴法235条)。
  • 親族でない共犯者:特例は適用されません(3項)。親族と親族以外の人が一緒に行った場合、親族でない人は通常どおり扱われます。

最高裁第二小法廷 平成6年7月19日決定

平成6年(あ)第234号 窃盗・刑集48巻5号190頁裁判所サイトの判示事項・裁判要旨で確認

事案
窃盗犯人が、物の所有者ではない人(物を手元で管理していた人)から物を盗んだ場合に、親族間の特例(刑法244条1項)が適用されるかが問題になった事件です。
判断の要点
244条1項が適用されるには、犯人と物を管理していた人との間だけでなく、犯人と物の所有者との間にも、同項の親族関係があることが必要だとしました。

確認した場所:裁判所 裁判例検索

親族が相手だからといって告訴できないわけではありません。条文上は、刑が免除されるのは配偶者・直系血族・同居の親族の間に限られ、それ以外の親族の間では告訴があれば起訴できる、という仕組みです。親族の範囲や同居の有無で扱いが変わるため、まず相手との関係を条文に当てはめて確かめることが出発点になります。

会社のお金や親族の財産の横領で特例がどう準用されるかは横領・背任の告訴:会社・親族・共有財産、窃盗の場面は傷害・器物損壊・窃盗の告訴のページで扱っています。

告訴の効力が及ぶ範囲:共犯への不可分(刑訴法238条)と取消し

親告罪で犯人が複数いる場合、告訴人が「この人だけ処罰してほしい」と選ぶことはできるのでしょうか。刑訴法238条は、この点を次のように定めています。

刑事訴訟法 第二百三十八条(第1項)

親告罪について共犯の一人又は数人に対してした告訴又はその取消は、他の共犯に対しても、その効力を生ずる。

要旨親告罪では、共犯者の一人に対して告訴すれば、その効力はほかの共犯者にも及びます。告訴を取り消したときも同じで、取消しの効力はほかの共犯者にも及びます。

このため親告罪では、共犯者の一部だけを処罰の対象にする告訴はできず、一人について告訴を取り消せば、ほかの共犯者にも取消しの効果が生じます。

告訴の効力の範囲については、共有物に関する判断もあります。最高裁第二小法廷昭和35年12月22日決定(昭和32年(あ)第2717号、刑集14巻14号2204頁)は、共有物に関する犯罪(事案は横領)で共有者の一人が告訴したときは、その人の持分の多少にかかわらず、被害を受けた共有物全部に関する犯罪の訴追に効力が及ぶとしました(裁判所サイトの裁判要旨で確認)。もっとも、これは共有物の事案についての決定で、ほかの場面にどこまで及ぶかはこの決定からは言えません。

また、告訴は公訴の提起(起訴)があるまで取り消すことができ、取り消した人は同じ事件について再び告訴することができません(刑訴法237条)。親告罪では取消しによって起訴ができなくなるため、取り消すかどうかは慎重な判断が必要です。取消しの方式や示談との関係は、受理後の流れと取下げ・示談・虚偽告訴の注意のページで扱っています。

まとめ

  • 告訴期間(犯人を知った日から6か月)は親告罪だけの制限です(刑訴法235条)。非親告罪は公訴時効が完成するまで告訴できます。
  • 刑法の親告罪は、名誉毀損・侮辱、器物損壊等・私用文書等毀棄・信書隠匿、過失傷害、信書開封・秘密漏示、未成年者略取・誘拐です。建造物等損壊、過失致死、ストーカー行為罪、性犯罪は親告罪ではありません。
  • 「犯人を知った」とは少なくとも犯人を特定し得る程度の認識をいうとする最高裁の決定と、犯罪の継続中は起算日にならないとした高裁判決があります。起算点は事案ごとの判断で、判例で扱いが分かれる論点です。
  • 期間は初日を数えず暦で数えます(刑訴法55条)。告訴できる人が複数いれば、期間は人ごとに数えます(236条)。
  • 親族の間の窃盗・詐欺・横領などは、配偶者・直系血族・同居の親族なら刑の免除、それ以外の親族なら親告罪です。親告罪の告訴・取消しの効力は共犯者全員に及びます(刑訴法238条)。

このページの出典

  1. 法令刑事訴訟法 第55条・第231条・第235条・第236条・第237条・第238条(e-Gov法令検索)確認日 2026-10-24
  2. 法令刑法 第133条〜第135条・第204条〜第211条・第222条〜第224条・第229条〜第236条・第244条・第246条〜第255条・第259条〜第264条・第176条・第177条・第180条(e-Gov法令検索)確認日 2026-10-24
  3. 法令刑法の改正履歴(平成29年法律第72号 2017-07-13施行)(e-Gov law_revisions)確認日 2026-10-24
  4. 法令ストーカー行為等の規制等に関する法律 第18条〜第20条(e-Gov法令検索)確認日 2026-10-24
  5. 法令著作権法 第119条・第123条(e-Gov法令検索)確認日 2026-10-24
  6. 法令商標法 第78条ほか(秘密保持命令違反の罪の規定を含む)(e-Gov法令検索)確認日 2026-10-24
  7. 法令特許法 第196条・第200条の3(e-Gov法令検索)確認日 2026-10-24
  8. 法令意匠法 第69条・第73条の2(e-Gov法令検索)確認日 2026-10-24
  9. 法令不正競争防止法 第21条(e-Gov法令検索)確認日 2026-10-24
  10. 法令私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律 第3条(e-Gov法令検索)確認日 2026-10-24
  11. 法令不正アクセス行為の禁止等に関する法律 第11条(e-Gov法令検索)確認日 2026-10-24
  12. 法令民法 第724条・第724条の2・第725条(e-Gov法令検索)確認日 2026-10-24
  13. 判例最高裁第三小法廷 昭和39年11月10日決定(昭和37年(あ)第1976号、刑集18巻9号547頁)判示事項・裁判要旨確認日 2026-10-24
  14. 判例大阪高裁 平成16年4月22日判決(平成15年(う)第1995号 名誉毀損被告事件)判示事項・裁判要旨確認日 2026-10-24
  15. 判例同判決 判決文PDF 理由 第1確認日 2026-10-24
  16. 判例最高裁第二小法廷 平成6年7月19日決定(平成6年(あ)第234号、刑集48巻5号190頁)判示事項・裁判要旨確認日 2026-10-24
  17. 判例最高裁第二小法廷 昭和35年12月22日決定(昭和32年(あ)第2717号、刑集14巻14号2204頁)判示事項・裁判要旨確認日 2026-10-24
  18. 官公庁警察庁通達「告訴・告発への適切な対応及び指導・管理の徹底について」(令和6年3月26日 警察庁丙刑企発第39号ほか)第1確認日 2026-10-24
  19. 統計検察統計調査(e-Stat)年次 表38 既済事由別 既済となった被疑事件の捜査の端緒別人員(2016〜2025年)確認日 2026-10-24

よくあるご質問

SNSで名誉を傷つける投稿をされました。告訴はいつまでにすればよいですか。

名誉毀損は親告罪(刑法232条1項)なので、犯人を知った日から6か月以内が告訴の期限です(刑訴法235条)。ただし、大阪高裁平成16年4月22日判決は、記事が削除されずに閲覧できる間は犯罪が終わっておらず、その間に犯人を知っても告訴期間の起算日にならないとしています。どの時点が起算点になるかは事案ごとの判断なので、犯人が分かった段階で早めに準備を進めるのが安全です。

6か月の最後の日が日曜日や祝日に当たる場合、翌日でも間に合いますか。

条文の文言からは、間に合うと読めますが、判例で確かめられた扱いではありません。刑訴法55条3項は期間の末日が休日に当たるときはその日を期間に算入しないと定め、例外は「時効期間」だけで、告訴期間は時効期間ではないからです。この点を判断した判例は調べた範囲では確認できていないため、最終日に頼らず余裕をもって告訴することをおすすめします。

詐欺や傷害の被害にも、6か月の告訴期限はありますか。

ありません。刑訴法235条の期間制限は親告罪の告訴だけが対象で、詐欺(刑法246条)や傷害(刑法204条)は親告罪ではないためです。告訴できる期間の限界は公訴時効で、詐欺は7年、傷害は10年です。ただし、詐欺を親族の間で行った場合は刑法251条で244条が準用され、配偶者・直系血族・同居の親族以外の親族(別居の兄弟姉妹など)との間では親告罪になります。

別居している兄に、自宅にあった私の現金を盗まれました。告訴の期限はありますか。

別居している兄弟姉妹は刑法244条1項の「配偶者、直系血族又は同居の親族」に当たらないため、同条2項により窃盗は親告罪になり、犯人を知った日から6か月の告訴期間があります。配偶者・直系血族・同居の親族の間なら、刑が免除される仕組みです(同条1項)。最高裁平成6年7月19日決定は、物の所有者と管理者が違う場合、所有者との間にも親族関係が必要としています。

ストーカー行為や脅迫は親告罪ですか。告訴期間に気をつける必要はありますか。

どちらも親告罪ではないので、6か月の告訴期間はありません。ストーカー規制法18条(ストーカー行為罪)にも刑法222条(脅迫罪)にも告訴を要件とする規定がなく、公訴時効はいずれも3年です(刑訴法250条2項6号)。安全の確保を含めた手続の考え方は、脅迫・恐喝・ストーカーの告訴のページで説明しています。

あわせて読みたいページ

本ページは一般的な情報提供です。告訴・告発が受理されるか、どの罪が成立するか、起訴されるかは、事実関係と証拠をもとに警察・検察が判断することで、このページの説明で結論が決まるものではありません。条文は e-Gov法令検索(法令API)で2026年10月24日時点のものを、統計は政府統計の総合窓口(e-Stat)ほか各府省の公表資料を確認しています。参考: e-Gov法令検索 / e-Stat / 警察庁 / 検察庁 / 裁判所 / 法務省

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